インターネット字書きマンの落書き帳
この人、令和にペルソナの話してる!(主ブラ・BL)
以前、webに乗せてた作品も古い奴は再掲するかそのまま消してしまうか迷いつつ、とりあえずブログに置いておく事にしました。
その結果、令和の今に初代ペルソナの話をブログに置く奴が爆誕しましたが俺が楽しいので気にしないでください。
ペルソナの主人公×ブラウンの話で、付き合ってるけど誰に対しても優しい主人公を前につい嫉妬してしまう上杉くんの話をします……よ!
作中は全部ブラウン視点になってます。キスくらいはします。
この話をupしたのが2012年3月9日になってますが、これはweb用に清書した時で書いたのはもうちょっと前だとは思います。
今回、多少修正はしているから最新の俺が最高の俺だ!
という気持ちで見てください。
その結果、令和の今に初代ペルソナの話をブログに置く奴が爆誕しましたが俺が楽しいので気にしないでください。
ペルソナの主人公×ブラウンの話で、付き合ってるけど誰に対しても優しい主人公を前につい嫉妬してしまう上杉くんの話をします……よ!
作中は全部ブラウン視点になってます。キスくらいはします。
この話をupしたのが2012年3月9日になってますが、これはweb用に清書した時で書いたのはもうちょっと前だとは思います。
今回、多少修正はしているから最新の俺が最高の俺だ!
という気持ちで見てください。
『友達じゃない』
今日は俺と遊ぶ予定だったはずなのに、目の前に座るアイツは熱心に携帯電話を弄っていた。指の動きからメールの返信をしているのだろう。俺には目もくれず携帯電話と向き合う横顔に文句の一つも言ってやりたかったがアイツの真剣な眼差しを見ていると結局何も言えず俺は馴染みのファストフード店でアイツの頼んだポテトを勝手に食べるくらいしか出来ないままでいた。
「送信、これで良し、と」
ようやくメールを出し終わったのだろう。時間とすればたかだか2,3分といった所だが随分と長く感じた。
送信されたメールの向こうにはエリーが居るのだろう。たかが一本のメールだが、アイツからの返信はきっとエリーの綺麗な顔立ちをつぼみが綻んだ花のような笑顔へと変えていくのを俺は知っていた。
エリーはアイツのことを好いているのだから。
いや、アイツの事を好いているのはエリーだけじゃない。
マキだってアイツの事を強く思っているのが俺の目から見てもわかるし、愛や恋とは違うだろうがアヤセやユキノさんアイツの事を特別親しい仲間だと認めていた。
そうだ、アイツは仲間たちから強く信頼されている。
有り体な言い方をするとモテるんだ。
普段は無口だけれども何処か大人びた雰囲気を持つアイツは自分から注目を浴びようと行動する事はないってのに自然と皆の注目を集め、大事な決断や選択を前にした時俺たちはアイツに意見を求める事が多かった。
いや、そうなるのは俺たちだけじゃない。アイツのクラスメイトも何かあるとアイツに相談事を持ち込んでるようだったし時には教師からも声をかけられているようだからその信頼度は同世代の連中からしても頭一つ抜けてると言っていいだろう。
自分から目立とうと道化を演じている俺とはえらい違いだってのは隣にいる俺が一番わかってる。
それにルックスだっていい。
さして気取った所なんてないクセに他校でも美形だという噂が流れているようで、この前俺と歩いていたら見知らぬ女子生徒から手紙なんて貰っていた。
他校の女子生徒から手紙をもらうとか漫画でしか存在してないと思ってたのに目の前にいる奴がそんなにモテるなんて、身近にアイツを見ている身としては中々信じがたいが実際そうだったんだから仕方が無い。
しかもアイツは誰に声をかけられても例外なく優しいんだ。
誰かの誘いにのる時も断る時も真剣に考え言葉を尽くして誠実に接してくれる。そういう性格だからこそ他人が信頼するのだろうが、そのマメさに俺はどうにも苛立ってしまうのだ。
「相変わらず、モテるよなぁオマエは。モテる男は辛いねぇ。ってか」
携帯電話をやっと置いたアイツの指先を眺めながら、俺はわざと大声で言う。
つい嫌味たらしくなるのは募る苛立ちが抑えきれないからだが、こんな事を言われてもアイツが困るだけだろう。あぁ、まったく俺サマらしくもない。上杉秀彦はもっと明るく何でも茶化すように生きているのが似合いだってのに。
だけどアイツだって悪いんだ、今日俺を呼び出したのはアイツだっていうのに会ってすぐに挨拶だってろくにしないまま、メールのやりとりなんて始めるのはあまりにも失礼だろう。文句の一つを言う権利は俺にだってあるはずだ。
『今日はゆっくり、二人で居られるよ。いつものファストフード店で食事をして、それから映画でも見に行こうか。そうじゃなくても上杉が好きなように連れ回してくれて構わないから』
昨日した電話でアイツは甘く囁いた。今日は俺のために時間をとってくれると約束したんだ。
それだっていうのにあいつは俺を放って置いて他の誰かに優しい顔をする。その間視線はずっと携帯電話で俺の方には向いてないのだ。
「まぁね」
イヤミのつもりで言ったのにアイツは特に悪びれた様子もなく穏やかな笑顔を俺に向ける。まるで自分がモテるのは当然といった振る舞いは普通腹が立つのだろうが黙っていても綺麗な瞳が俺の方へと向けられればすぐに言葉は出なかった。
アイツの顔は、やっぱり綺麗だ。
中性的でとりわけ個性的といった要望ではないのだけれどもだからこそどんな表情をしても絵になるし、何よりその瞳でじっと見つめられるとこちらの心全てを見透かされるような気持ちになり自然と見入ってしまう。なんて感じるのは俺がアイツにもう魅了されてるって事なんだろうか。
俺はなんだか気恥ずかしくなり慌てて視線を逸らす。このままアイツを見ていたらいつも見せるお喋りでお調子者の上杉秀彦像が完全に叩き潰されてしまいそうだったからだ。
「いやー、それにしてもオマエって、本当に女の子には優しいよなぁ。このオレ様を一人にしてこれ見よがしにメールとか随分えらくなったもんじゃ無ェの」
内心の動揺を隠すよう努めて明るく振る舞う俺を前にアイツは涼しい顔のままカップに入ったコーラを口にする。
店のなかでも特に奥まった場所にある二人がけの小さなテーブルからフロアを眺めれば同じエルミン学園の生徒が幾人か集まり互いにノートを交換しているのが見えた。そういえばもうすぐテストだったか。
「別に優しくしているつもりなんかないさ。エリーもアヤセもゆきのさんも、マキも、みんな大事な友達だから彼女たちのことを尊重しているだけだよ。ほら、友達は大切にしないといけないだろう」
などと言ってるそばからメールの着信音が響く。
エリーから返事が来たのだろうか、それともまた別の誰かから新しいメールが届いたのかもしれない。 それまで俺を捉えていたアイツの視線は俺から外れ、携帯電話に注がれた。
「ふーん、エリーたちは友達だから大事。んでも、このオレ様は友達じゃねーから、優しくしねぇって事かなぁ?」
足を投げ出しながら携帯をいじるアイツを眺める。 アイツは携帯電話の画面を見つめたまま、呆れたように笑ってみせた。
「何だよ、随分絡んでくるな、上杉。まさか嫉妬してるのか?」
「しっ……別に、何でおれ様がそんな事しなきゃいけないんだよっ! ばーかばーか」
嫉妬。突然出てきたその言葉を、慌てて俺は否定する。嫉妬してるなんてまるでこの俺がアイツにベタ惚れして俺だけを見ていて欲しいとかそんな甘ったるい事を考えてるみたいじゃないか。そんな事はない、断じてない。
俺が誰かに惚れるとかそんなの絶対おかしいんだ。俺は誰かに惚れさせるほうがよっぽど似合ってるはずなんだから。
そうして自分を否定したって仕方ないことくらい、当然俺だってわかってる。
確かに俺は嫉妬してるし、嫉妬したくなるくらい俺自身がアイツにベタ惚れで話しかけられるのも嬉しいしこうして一緒にいる時間は何もなくても楽しいのだ。昨日電話を受けた時も楽しみですぐに寝付けなかったくらいだ、なんてまるで遠足前の小学生みたいだよな。
それだけ楽しみにしてたってのに一緒に居るのに話しかけてもくれないし一緒にいるのに俺を見てくれないのなら、腹が立って当然だろう。
アイツが優しい奴だからそうなることくらい解ってるのに俺はアイツの視線を俺に向けるような冗談もうまく言えないってのが悔しくて腹が立つがだからといって俺ではどうする事も出来ない。
この感情が嫉妬だというのは最初からわかっている。
だけどそれをアイツに指摘されるのはまるでアイツが俺を嫉妬させて楽しんでいる風に見えそれはなんだか悔しいじゃないか。いかにもアイツの手のひらで転がされているというのは流石の俺だっていい気はしない。
だから俺は悔しさからつい強く否定したんだが、それはかえって逆効果だったんだろう。
「そういう態度が、嫉妬っていうんじゃないかな。言うに事欠いてバカバカ言うあたりは上杉らしいけど」
あいつは穏やかに笑いながらメールの返信を終えて携帯電話を置いた。
アイツ、やっぱり俺が嫉妬するのを見て楽しんでいるのか。俺が困って悔しがって悲しそうにしたりするのを見て内心優越感にでも浸っているってのか。
俺にかける言葉の声こそ優しいがぶつけられる言葉は甘い囁きとは程遠い。その言動も仕草も明らかに俺をからかって遊んでいるような反応だった。
俺の事を散々と翻弄してあざ笑うくせに、あいつのメールは気遣いと優しさに満ちあふれているのだろう。 今出したメールもさぞ事細やかな気配りがされているに違いない。
俺には冷たくて、他の誰かには優しい。それを思うとやはり、苛立ちばかりが募る。こんな嫉妬するなんて情けない奴だと我ながらそう思うのだが思いを留める事が出来ないのだから仕方ないだろう。
「やっぱお前っておれ様には冷たいよなぁ。何でだよぉ、オマエにとってオレ様は友達にカウントされてねぇの?」
「まぁ、そうだね。上杉のこと友達だと今は思ってないから」
アイツは淡い笑顔を向けるとそっけない態度で言う。
あぁ、やっぱり俺はアイツに大事にされてないのか。アイツにとって俺は友達とは違うどうでもいい人間だったってのか。
俺は友達よりも一つ越えた仲だと思っていたのだけれども、アイツにとってはそうじゃない。アイツにとって沢山いる仲間の一人にでありその中でも一番雑に扱っていいような存在なのだ。
俺にとってあいつは特別に眩しい存在だっていうのに、アイツは違う。俺が思っている以上にアイツは俺から遠い存在なんだろう。
「そ、そうか。そうだよなぁ、ま、ま、おれ様にとってもオマエなんかこう、何だ? 何でもねーし」
落胆して俯いた俺がまだ何を言うべきか言葉が定まらないうちに、アイツは静かに立ち上がるとぐっとこちらへ顔を向け俺の頬に触れたかと思うと、とびっきり優しい笑顔を浮かべ、触れるだけのキスをした。
それは本当に羽が唇を撫でるような軽いキスだったけれども同じ学校に通う生徒だっている最中されたキスだったから思いがけず狼狽える。
「ちょ、おまっ……な、何すんだよっ、おい……」
あまりに驚き椅子から転げ落ちそうになる俺を前に、アイツはさも楽しそうに笑う。
「やっぱり、面白いな。秀彦は」
「な、何が面白いんだよォ。オレ様は全然面白くねぇしっ、それに急に名前で呼ぶなよッ、オレ様はなぁ」
「さっき、友達には優しくするよって言ったよね? ……だから秀彦には優しく出来ないんだよ。理由。わかる? 俺はオマエのこと好きだからなんだけど」
突然の告白に俺はただ目を丸くする。
こんな所出言う事なのかとかこんなに自然と言えるものなのかとか色々な感情が頭の中でぐるぐると回っていた。
「昔から、好きな相手ほどは虐めたくなっちゃうんだ。悪い所だと思うんだけど、おまえは優しいからさ、つい甘えちゃうんだよね」
様々な思いが駆け巡る中、胸の中がじわりと暖かくなる。
あぁそうか、やっぱり俺は、アイツにとって特別な存在だったんだ。その事実が嬉しくて心臓を早鐘のように鳴らすのだ。だけど喜びは素直に言葉に出ず、俺の顔を赤くする。
「何、何だよぉ、それ、急に言う事かよっ。それに、好きとか全然初耳なんだけど。ちょ、待ってって、オレ様すげぇ恥ずかしいし……」
顔が紅くなっている事を悟られないよう俺は思わず顔を伏せる。恥ずかしいと口にした後顔を伏せても今さらだろうがそれでも真っ赤になった顔をアイツに見られるのは恥ずかしかった。
さて、アイツに何て答えたらいいんだろう。
好きだと言ってくれたアイツに答えるべき、洒落の聞いた言葉があるんじゃないか。俺だってその言葉をずっと待っていたのだから。
だがいくら考えても柔らかな唇と甘い言葉が耳に絡まって、思うような言葉が出ない。
「でもっ、でもよ。あの……さ。ありがと……なっ」
結局消え入りそうな言葉でそう言うのが精一杯だった。
だけどアイツはそれだけで充分なほどに伝わったのだろう。「はいはい、良く出来ました」なんて言いたげな様子で俺の頭を二度、三度ぽん、ぽんと優しく撫でると静かな笑顔を向けるのだ。
何だよ、子供扱いするなよと思う。同じ歳なのにどうしてそんなに落ち着いてるんだよ、ジジイなのかとも。 だけど子供のように頭を撫でられても不思議と嫌な気はしない。
アイツだったら俺がどんなに恥ずかしい真似をしても呆れながら受け入れてくれるだろうし、本当の俺がひどく小心者だって事にもとっくに気付いているのだろう。それを思うと安心してアイツの前では素でいられる。
「こちらこそ、ありがとう。これからもよろしくな、秀彦」
静かに笑うアイツを前に何も言えないまま時間だけが過ぎていく。
特に楽しく喋る訳でもない、ただ二人で飯を食うそれだけの時間だが、俺にはとても心地よく幸福な時間に思えていた。
今日は俺と遊ぶ予定だったはずなのに、目の前に座るアイツは熱心に携帯電話を弄っていた。指の動きからメールの返信をしているのだろう。俺には目もくれず携帯電話と向き合う横顔に文句の一つも言ってやりたかったがアイツの真剣な眼差しを見ていると結局何も言えず俺は馴染みのファストフード店でアイツの頼んだポテトを勝手に食べるくらいしか出来ないままでいた。
「送信、これで良し、と」
ようやくメールを出し終わったのだろう。時間とすればたかだか2,3分といった所だが随分と長く感じた。
送信されたメールの向こうにはエリーが居るのだろう。たかが一本のメールだが、アイツからの返信はきっとエリーの綺麗な顔立ちをつぼみが綻んだ花のような笑顔へと変えていくのを俺は知っていた。
エリーはアイツのことを好いているのだから。
いや、アイツの事を好いているのはエリーだけじゃない。
マキだってアイツの事を強く思っているのが俺の目から見てもわかるし、愛や恋とは違うだろうがアヤセやユキノさんアイツの事を特別親しい仲間だと認めていた。
そうだ、アイツは仲間たちから強く信頼されている。
有り体な言い方をするとモテるんだ。
普段は無口だけれども何処か大人びた雰囲気を持つアイツは自分から注目を浴びようと行動する事はないってのに自然と皆の注目を集め、大事な決断や選択を前にした時俺たちはアイツに意見を求める事が多かった。
いや、そうなるのは俺たちだけじゃない。アイツのクラスメイトも何かあるとアイツに相談事を持ち込んでるようだったし時には教師からも声をかけられているようだからその信頼度は同世代の連中からしても頭一つ抜けてると言っていいだろう。
自分から目立とうと道化を演じている俺とはえらい違いだってのは隣にいる俺が一番わかってる。
それにルックスだっていい。
さして気取った所なんてないクセに他校でも美形だという噂が流れているようで、この前俺と歩いていたら見知らぬ女子生徒から手紙なんて貰っていた。
他校の女子生徒から手紙をもらうとか漫画でしか存在してないと思ってたのに目の前にいる奴がそんなにモテるなんて、身近にアイツを見ている身としては中々信じがたいが実際そうだったんだから仕方が無い。
しかもアイツは誰に声をかけられても例外なく優しいんだ。
誰かの誘いにのる時も断る時も真剣に考え言葉を尽くして誠実に接してくれる。そういう性格だからこそ他人が信頼するのだろうが、そのマメさに俺はどうにも苛立ってしまうのだ。
「相変わらず、モテるよなぁオマエは。モテる男は辛いねぇ。ってか」
携帯電話をやっと置いたアイツの指先を眺めながら、俺はわざと大声で言う。
つい嫌味たらしくなるのは募る苛立ちが抑えきれないからだが、こんな事を言われてもアイツが困るだけだろう。あぁ、まったく俺サマらしくもない。上杉秀彦はもっと明るく何でも茶化すように生きているのが似合いだってのに。
だけどアイツだって悪いんだ、今日俺を呼び出したのはアイツだっていうのに会ってすぐに挨拶だってろくにしないまま、メールのやりとりなんて始めるのはあまりにも失礼だろう。文句の一つを言う権利は俺にだってあるはずだ。
『今日はゆっくり、二人で居られるよ。いつものファストフード店で食事をして、それから映画でも見に行こうか。そうじゃなくても上杉が好きなように連れ回してくれて構わないから』
昨日した電話でアイツは甘く囁いた。今日は俺のために時間をとってくれると約束したんだ。
それだっていうのにあいつは俺を放って置いて他の誰かに優しい顔をする。その間視線はずっと携帯電話で俺の方には向いてないのだ。
「まぁね」
イヤミのつもりで言ったのにアイツは特に悪びれた様子もなく穏やかな笑顔を俺に向ける。まるで自分がモテるのは当然といった振る舞いは普通腹が立つのだろうが黙っていても綺麗な瞳が俺の方へと向けられればすぐに言葉は出なかった。
アイツの顔は、やっぱり綺麗だ。
中性的でとりわけ個性的といった要望ではないのだけれどもだからこそどんな表情をしても絵になるし、何よりその瞳でじっと見つめられるとこちらの心全てを見透かされるような気持ちになり自然と見入ってしまう。なんて感じるのは俺がアイツにもう魅了されてるって事なんだろうか。
俺はなんだか気恥ずかしくなり慌てて視線を逸らす。このままアイツを見ていたらいつも見せるお喋りでお調子者の上杉秀彦像が完全に叩き潰されてしまいそうだったからだ。
「いやー、それにしてもオマエって、本当に女の子には優しいよなぁ。このオレ様を一人にしてこれ見よがしにメールとか随分えらくなったもんじゃ無ェの」
内心の動揺を隠すよう努めて明るく振る舞う俺を前にアイツは涼しい顔のままカップに入ったコーラを口にする。
店のなかでも特に奥まった場所にある二人がけの小さなテーブルからフロアを眺めれば同じエルミン学園の生徒が幾人か集まり互いにノートを交換しているのが見えた。そういえばもうすぐテストだったか。
「別に優しくしているつもりなんかないさ。エリーもアヤセもゆきのさんも、マキも、みんな大事な友達だから彼女たちのことを尊重しているだけだよ。ほら、友達は大切にしないといけないだろう」
などと言ってるそばからメールの着信音が響く。
エリーから返事が来たのだろうか、それともまた別の誰かから新しいメールが届いたのかもしれない。 それまで俺を捉えていたアイツの視線は俺から外れ、携帯電話に注がれた。
「ふーん、エリーたちは友達だから大事。んでも、このオレ様は友達じゃねーから、優しくしねぇって事かなぁ?」
足を投げ出しながら携帯をいじるアイツを眺める。 アイツは携帯電話の画面を見つめたまま、呆れたように笑ってみせた。
「何だよ、随分絡んでくるな、上杉。まさか嫉妬してるのか?」
「しっ……別に、何でおれ様がそんな事しなきゃいけないんだよっ! ばーかばーか」
嫉妬。突然出てきたその言葉を、慌てて俺は否定する。嫉妬してるなんてまるでこの俺がアイツにベタ惚れして俺だけを見ていて欲しいとかそんな甘ったるい事を考えてるみたいじゃないか。そんな事はない、断じてない。
俺が誰かに惚れるとかそんなの絶対おかしいんだ。俺は誰かに惚れさせるほうがよっぽど似合ってるはずなんだから。
そうして自分を否定したって仕方ないことくらい、当然俺だってわかってる。
確かに俺は嫉妬してるし、嫉妬したくなるくらい俺自身がアイツにベタ惚れで話しかけられるのも嬉しいしこうして一緒にいる時間は何もなくても楽しいのだ。昨日電話を受けた時も楽しみですぐに寝付けなかったくらいだ、なんてまるで遠足前の小学生みたいだよな。
それだけ楽しみにしてたってのに一緒に居るのに話しかけてもくれないし一緒にいるのに俺を見てくれないのなら、腹が立って当然だろう。
アイツが優しい奴だからそうなることくらい解ってるのに俺はアイツの視線を俺に向けるような冗談もうまく言えないってのが悔しくて腹が立つがだからといって俺ではどうする事も出来ない。
この感情が嫉妬だというのは最初からわかっている。
だけどそれをアイツに指摘されるのはまるでアイツが俺を嫉妬させて楽しんでいる風に見えそれはなんだか悔しいじゃないか。いかにもアイツの手のひらで転がされているというのは流石の俺だっていい気はしない。
だから俺は悔しさからつい強く否定したんだが、それはかえって逆効果だったんだろう。
「そういう態度が、嫉妬っていうんじゃないかな。言うに事欠いてバカバカ言うあたりは上杉らしいけど」
あいつは穏やかに笑いながらメールの返信を終えて携帯電話を置いた。
アイツ、やっぱり俺が嫉妬するのを見て楽しんでいるのか。俺が困って悔しがって悲しそうにしたりするのを見て内心優越感にでも浸っているってのか。
俺にかける言葉の声こそ優しいがぶつけられる言葉は甘い囁きとは程遠い。その言動も仕草も明らかに俺をからかって遊んでいるような反応だった。
俺の事を散々と翻弄してあざ笑うくせに、あいつのメールは気遣いと優しさに満ちあふれているのだろう。 今出したメールもさぞ事細やかな気配りがされているに違いない。
俺には冷たくて、他の誰かには優しい。それを思うとやはり、苛立ちばかりが募る。こんな嫉妬するなんて情けない奴だと我ながらそう思うのだが思いを留める事が出来ないのだから仕方ないだろう。
「やっぱお前っておれ様には冷たいよなぁ。何でだよぉ、オマエにとってオレ様は友達にカウントされてねぇの?」
「まぁ、そうだね。上杉のこと友達だと今は思ってないから」
アイツは淡い笑顔を向けるとそっけない態度で言う。
あぁ、やっぱり俺はアイツに大事にされてないのか。アイツにとって俺は友達とは違うどうでもいい人間だったってのか。
俺は友達よりも一つ越えた仲だと思っていたのだけれども、アイツにとってはそうじゃない。アイツにとって沢山いる仲間の一人にでありその中でも一番雑に扱っていいような存在なのだ。
俺にとってあいつは特別に眩しい存在だっていうのに、アイツは違う。俺が思っている以上にアイツは俺から遠い存在なんだろう。
「そ、そうか。そうだよなぁ、ま、ま、おれ様にとってもオマエなんかこう、何だ? 何でもねーし」
落胆して俯いた俺がまだ何を言うべきか言葉が定まらないうちに、アイツは静かに立ち上がるとぐっとこちらへ顔を向け俺の頬に触れたかと思うと、とびっきり優しい笑顔を浮かべ、触れるだけのキスをした。
それは本当に羽が唇を撫でるような軽いキスだったけれども同じ学校に通う生徒だっている最中されたキスだったから思いがけず狼狽える。
「ちょ、おまっ……な、何すんだよっ、おい……」
あまりに驚き椅子から転げ落ちそうになる俺を前に、アイツはさも楽しそうに笑う。
「やっぱり、面白いな。秀彦は」
「な、何が面白いんだよォ。オレ様は全然面白くねぇしっ、それに急に名前で呼ぶなよッ、オレ様はなぁ」
「さっき、友達には優しくするよって言ったよね? ……だから秀彦には優しく出来ないんだよ。理由。わかる? 俺はオマエのこと好きだからなんだけど」
突然の告白に俺はただ目を丸くする。
こんな所出言う事なのかとかこんなに自然と言えるものなのかとか色々な感情が頭の中でぐるぐると回っていた。
「昔から、好きな相手ほどは虐めたくなっちゃうんだ。悪い所だと思うんだけど、おまえは優しいからさ、つい甘えちゃうんだよね」
様々な思いが駆け巡る中、胸の中がじわりと暖かくなる。
あぁそうか、やっぱり俺は、アイツにとって特別な存在だったんだ。その事実が嬉しくて心臓を早鐘のように鳴らすのだ。だけど喜びは素直に言葉に出ず、俺の顔を赤くする。
「何、何だよぉ、それ、急に言う事かよっ。それに、好きとか全然初耳なんだけど。ちょ、待ってって、オレ様すげぇ恥ずかしいし……」
顔が紅くなっている事を悟られないよう俺は思わず顔を伏せる。恥ずかしいと口にした後顔を伏せても今さらだろうがそれでも真っ赤になった顔をアイツに見られるのは恥ずかしかった。
さて、アイツに何て答えたらいいんだろう。
好きだと言ってくれたアイツに答えるべき、洒落の聞いた言葉があるんじゃないか。俺だってその言葉をずっと待っていたのだから。
だがいくら考えても柔らかな唇と甘い言葉が耳に絡まって、思うような言葉が出ない。
「でもっ、でもよ。あの……さ。ありがと……なっ」
結局消え入りそうな言葉でそう言うのが精一杯だった。
だけどアイツはそれだけで充分なほどに伝わったのだろう。「はいはい、良く出来ました」なんて言いたげな様子で俺の頭を二度、三度ぽん、ぽんと優しく撫でると静かな笑顔を向けるのだ。
何だよ、子供扱いするなよと思う。同じ歳なのにどうしてそんなに落ち着いてるんだよ、ジジイなのかとも。 だけど子供のように頭を撫でられても不思議と嫌な気はしない。
アイツだったら俺がどんなに恥ずかしい真似をしても呆れながら受け入れてくれるだろうし、本当の俺がひどく小心者だって事にもとっくに気付いているのだろう。それを思うと安心してアイツの前では素でいられる。
「こちらこそ、ありがとう。これからもよろしくな、秀彦」
静かに笑うアイツを前に何も言えないまま時間だけが過ぎていく。
特に楽しく喋る訳でもない、ただ二人で飯を食うそれだけの時間だが、俺にはとても心地よく幸福な時間に思えていた。
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