インターネット字書きマンの落書き帳
グレゴールがムルソー迎えにいったら風呂で爆睡してた話(リンバス)
リンバスカンパニーで遊んでます。
シナリオは遅々として進まない状態でまだ3章とかもだもだしてますけどね。
プレイして新しい事実を知るたび「えぇ、どうなってるの……」「何その組織……」みたいな顔を毎回しながら楽しんでます。
自分たちの事なのにわからないことが……わからないことが、多いッ!
今回は、囚人たちのこと何もわからない!
けど、グレゴールがムルソーのこと迎えにいったら風呂で爆睡して動けなくなってるムルソーがいたらいいな、と思って書きました。
俺の願望詰め合わせセットをお楽しみください。
シナリオは遅々として進まない状態でまだ3章とかもだもだしてますけどね。
プレイして新しい事実を知るたび「えぇ、どうなってるの……」「何その組織……」みたいな顔を毎回しながら楽しんでます。
自分たちの事なのにわからないことが……わからないことが、多いッ!
今回は、囚人たちのこと何もわからない!
けど、グレゴールがムルソーのこと迎えにいったら風呂で爆睡して動けなくなってるムルソーがいたらいいな、と思って書きました。
俺の願望詰め合わせセットをお楽しみください。
『小さめのバスタブ』
仲間たちが集まる中、ムルソーの姿が見えないのに気付いたグレゴールは以前聞いたムルソーの塒まで来ていた。
何事に対しても時間厳守のムルソーが遅刻するとは珍しい等と考えながらドアをノックするも、返事はない。出かけているのか、あるいはどこかで入れ違いになったのだろうか。入れ違いになっていたら無駄足だ、皆のところに戻ろうと振り返ったグレゴールの耳にシャワーが流れるような音がした。
なんだ、シャワーを浴びているのか。
安堵の気持ちと同時に、ひどく不安な気持ちが内側から溢れてくる。
以前、グレゴールに憧れた男がいた。同じようにG社の術式を受け、頭が蟲へと変貌した男だ。男は普段と変わらぬように仕事を終え、普段と変わらぬようにグレゴールへ礼を尽くして帰路についた後、仕事に来なくなった。心配になり家を訪ねれば、今日と同じようにドアの向こうからシャワーの音がする。不安になりドアを開ければ、唯一蟲にならなかった手首を深く切ってすでに事切れていた。
メモ書きには「人間でいられるうちに」と走り書きだけが残され、冷たいシャワーは血をすっかり流していたというのに、狭いバスルームにはむせかえる程血の臭いが充満していたのは今でもはっきりと覚えている。
まさか、死んでいるのか。
もし死んでいても時計を巻き戻せばいいのだろう。頭ではそう思っても、身体が自然にうごいていた。
死なないでくれ、俺を置いてどうして皆生き急ぐんだ。死ぬのなら俺のようなロクデナシからじゃないか。中途半端に人間の面影を残して生き続ける、ヒトモドキが死ねばいいじゃないか。
ドアノブを回せば容易く戸が開き、流れるシャワー音に導かれるよう向かった先に、ムルソーはいた。小ぶりのバスタブから手足を出し、シャワーを出しっぱなしにして目を閉じている。
死んだのか。慌てて傍らにより跪けば、狭いバスタブから露出した胸元が呼吸にあわせて上下するのが見てとれた。生きている。どうやらバスタブにつかったまま眠ってしまったようだ。シャワーを出しっぱなしにしていたからだろう、注ぐ湯は狭いバスタブに溢れ浴室をすっかり濡らしている。グレゴールは袖を濡らしながらシャワーをとめると、ムルソーの耳元で声をあげた。
「おい、旦那。起きろって、風呂で寝てると風邪をひくぞ」
「ん……ん、あ……あぁ……」
グレゴールの声を聞き微睡みから現実に戻ってきたのか、ムルソーは億劫そうに目を開ける。そしてグレゴールを見ると、僅かに気まずい顔をした。
「……迷惑をかけたか」
「いや、迷惑ってほどじゃないけどね。いやー、心配したよ。真面目なアンタが集合場所に来てないんだからな」
「集合……もうそんな時間か、しまった……」
慌ててバスタブから出ようとするが、小さなバスタブで妙な格好のままうたた寝をした弊害だろう。足が痺れているのか思うように動かずもつれ、その巨体がグレゴールの方へと倒れ込む。
「いや、待て待て待てー! お前さんみたいにデカい男を支えるのは、辛ッ……辛いだろうが、しっかりしろー」
「……すまない。だが……思うように身体が……」
「あぁ、もうわかったわかった、何とか支えるからせめてタオルくらいかけてくれって。その肉体美が晒されるのは目の毒だっての……ふぅ。お前さんでも風呂で寝るようなマヌケな事するんだな」
何とかムルソーの身体を支え、近くにあるバスタオルを投げてやればムルソーは申し訳なさそうに頭を下げる。
「すまない、この埋め合わせは必ず……」
グレゴールに恩義を感じているのだろう。深々と頭を下げるムルソーに、グレゴールは慌てて笑顔を見せた。
「いやいや、気にしなさんなって。持ちつ持たれつ、殺し殺されあう仲間だろう。いつも俺だって世話になってるから、貸し借りなんて野暮なこと止めとこうや」
それに、とグレゴールは内心呟く。
今まで何人も、自分を置いて逝った。憧れを抱いた若者も、憎しみを抱いた敵たちも、誰もがグレゴールより先に逝き、生き残った連中もろくな生活をしていない。そんな中、ここに生きてる奴がいる。自分を知り、仲間として連んでまだ生きている相手が、信頼しこうして身体を預けてくれている。
そばに誰かがいてくれる、置いて逝く事もなくともに歩めるのは、確かに喜ばしい事だ。
(なんて、散々若ぇのを見殺しにしておいた癖に、一人が寂しいなんて本当に俺は弱虫だよ)
その喜びは、苦い過去と身勝手な自分の思いの中に埋もれていく。
隣ではムルソーが濡れた肌を拭っていた。
仲間たちが集まる中、ムルソーの姿が見えないのに気付いたグレゴールは以前聞いたムルソーの塒まで来ていた。
何事に対しても時間厳守のムルソーが遅刻するとは珍しい等と考えながらドアをノックするも、返事はない。出かけているのか、あるいはどこかで入れ違いになったのだろうか。入れ違いになっていたら無駄足だ、皆のところに戻ろうと振り返ったグレゴールの耳にシャワーが流れるような音がした。
なんだ、シャワーを浴びているのか。
安堵の気持ちと同時に、ひどく不安な気持ちが内側から溢れてくる。
以前、グレゴールに憧れた男がいた。同じようにG社の術式を受け、頭が蟲へと変貌した男だ。男は普段と変わらぬように仕事を終え、普段と変わらぬようにグレゴールへ礼を尽くして帰路についた後、仕事に来なくなった。心配になり家を訪ねれば、今日と同じようにドアの向こうからシャワーの音がする。不安になりドアを開ければ、唯一蟲にならなかった手首を深く切ってすでに事切れていた。
メモ書きには「人間でいられるうちに」と走り書きだけが残され、冷たいシャワーは血をすっかり流していたというのに、狭いバスルームにはむせかえる程血の臭いが充満していたのは今でもはっきりと覚えている。
まさか、死んでいるのか。
もし死んでいても時計を巻き戻せばいいのだろう。頭ではそう思っても、身体が自然にうごいていた。
死なないでくれ、俺を置いてどうして皆生き急ぐんだ。死ぬのなら俺のようなロクデナシからじゃないか。中途半端に人間の面影を残して生き続ける、ヒトモドキが死ねばいいじゃないか。
ドアノブを回せば容易く戸が開き、流れるシャワー音に導かれるよう向かった先に、ムルソーはいた。小ぶりのバスタブから手足を出し、シャワーを出しっぱなしにして目を閉じている。
死んだのか。慌てて傍らにより跪けば、狭いバスタブから露出した胸元が呼吸にあわせて上下するのが見てとれた。生きている。どうやらバスタブにつかったまま眠ってしまったようだ。シャワーを出しっぱなしにしていたからだろう、注ぐ湯は狭いバスタブに溢れ浴室をすっかり濡らしている。グレゴールは袖を濡らしながらシャワーをとめると、ムルソーの耳元で声をあげた。
「おい、旦那。起きろって、風呂で寝てると風邪をひくぞ」
「ん……ん、あ……あぁ……」
グレゴールの声を聞き微睡みから現実に戻ってきたのか、ムルソーは億劫そうに目を開ける。そしてグレゴールを見ると、僅かに気まずい顔をした。
「……迷惑をかけたか」
「いや、迷惑ってほどじゃないけどね。いやー、心配したよ。真面目なアンタが集合場所に来てないんだからな」
「集合……もうそんな時間か、しまった……」
慌ててバスタブから出ようとするが、小さなバスタブで妙な格好のままうたた寝をした弊害だろう。足が痺れているのか思うように動かずもつれ、その巨体がグレゴールの方へと倒れ込む。
「いや、待て待て待てー! お前さんみたいにデカい男を支えるのは、辛ッ……辛いだろうが、しっかりしろー」
「……すまない。だが……思うように身体が……」
「あぁ、もうわかったわかった、何とか支えるからせめてタオルくらいかけてくれって。その肉体美が晒されるのは目の毒だっての……ふぅ。お前さんでも風呂で寝るようなマヌケな事するんだな」
何とかムルソーの身体を支え、近くにあるバスタオルを投げてやればムルソーは申し訳なさそうに頭を下げる。
「すまない、この埋め合わせは必ず……」
グレゴールに恩義を感じているのだろう。深々と頭を下げるムルソーに、グレゴールは慌てて笑顔を見せた。
「いやいや、気にしなさんなって。持ちつ持たれつ、殺し殺されあう仲間だろう。いつも俺だって世話になってるから、貸し借りなんて野暮なこと止めとこうや」
それに、とグレゴールは内心呟く。
今まで何人も、自分を置いて逝った。憧れを抱いた若者も、憎しみを抱いた敵たちも、誰もがグレゴールより先に逝き、生き残った連中もろくな生活をしていない。そんな中、ここに生きてる奴がいる。自分を知り、仲間として連んでまだ生きている相手が、信頼しこうして身体を預けてくれている。
そばに誰かがいてくれる、置いて逝く事もなくともに歩めるのは、確かに喜ばしい事だ。
(なんて、散々若ぇのを見殺しにしておいた癖に、一人が寂しいなんて本当に俺は弱虫だよ)
その喜びは、苦い過去と身勝手な自分の思いの中に埋もれていく。
隣ではムルソーが濡れた肌を拭っていた。
PR
COMMENT