インターネット字書きマンの落書き帳
パラノマの葦宮とアパシーの荒井が会話するという概念
パラノマサイトをクリアしたので、アパシー 鳴神学園七不思議の話をします。
全然意味がわからないこと言い出しちゃったねごめんね! いつものコトだよ。
何の話かというと、駒形高校に興味をもった荒井が駒形高校に侵入したら葦宮らしい男と出会ってしまう、ただそれだけの話です。
特に事件や事故や物騒がおこる話ではないです。
BLでもないです、ご安心ください。
そう、俺が書きたいから書いた! 二次創作はいつもhappy&madness!
全然意味がわからないこと言い出しちゃったねごめんね! いつものコトだよ。
何の話かというと、駒形高校に興味をもった荒井が駒形高校に侵入したら葦宮らしい男と出会ってしまう、ただそれだけの話です。
特に事件や事故や物騒がおこる話ではないです。
BLでもないです、ご安心ください。
そう、俺が書きたいから書いた! 二次創作はいつもhappy&madness!
『名と顔と居場所を置いていったなら あとはすべて血に沈むがいい』
あぁ、坂上くん。そばまで来ていたんですね、全然気付きませんでした。
少しばかり考え事をしていたので……そうだ、坂上くんも聞いてくれますが。
先週の日曜日にあった話なのですが……。
僕は所用があり親に連れられ都内まで出かけてきました。
何のことはない、よくあるつまらない親戚の集まりですよ。
一応僕もついて行く事になりましたが、ほとんど大人たちが膝をつきあわせてする話をするだけで僕はあくまでいるだけ、という状態でしたからね。
これなら僕一人がいなくなっても気付かないだろうと、東京見物をしゃれ込もうと決めたワケです。
とはいえ、あまり遠出が出来る状態ではありませんでした。
一応はきちんとした集まりだからと制服で出かけていましたし、あまり大金も持っていません。電車に乗って遠くまで行きすぎては両親に叱られてしまいますので、行ける場所は歩いて
いける範囲に限られていました。
最も、それでも東京二十三区内ですからね。
住宅街にある僕の家と比べればよっぽど賑わっていましたし、人も多く少し休めるカフェやら部屋を彩るインテリアの店などは充分すぎるくらいにありましたよ。
それに、僕の目的もは最初から同区内にある「駒形高校」に決めていましたから、どこかの店を覗くつもりもありませんでした。幸いに歩いていける距離でしたしね。
ところで坂上くんは駒形高校のことは知っていますか?
……えぇ、知らなくても当然ですよね。
駒形高校は今から40年ほど前に殺人鬼が潜伏していたと言われる学校ですよ。
当時世間を賑わした殺人鬼が名を変え姿を変えて用務員として潜入し、長らくその学校で生活していたようです。
彼が殺人鬼ではないかと疑いがかかると同時に姿を消してしまったそうですが、生徒からの評判は良かったようですよ。 用務員をやっている最中に人を殺したといった話も無かったようですしね。
ただ、当時その用務員が愛読していた本は少々刺激的な内容が多かったようでして……。
用務員が逃げた時、その刺激的な書物は残されていたようですが捨てるには惜しいと思った誰かが図書室の奥に押し込んだともっぱらの噂で、今でも校内のバックヤードで眠っていると噂されているのです。
僕はその殺人鬼が愛読していた本というものに少しばかり興味がありまして、駒形高校へ行ってみたんですよ。
学校ですからいつでも門が開いているというワケではありませんでしたが、その日は運動部がグラウンドを使っていたので僕でも気にせず入り込む事が出来たのです。
鳴神学園の制服を着て行ったのも怪しまれずにすんだ理由の一つでしょうね。
あの日は夏日でしたからワイシャツとズボンだけだと駒形高校の制服とあまり変わりませんでしたから。
こういう時には変にキョロキョロしたりビクついたりするとかえって怪しいものでしょうから、僕は堂々と生徒通用口から廊下へ向かうと図書館がどこにあるか調べてみました。
鳴神学園と比べれば他の学校なんて小さくてわかりやすいものです。図書室は特別棟の一階にありましたよ。
出来れば日曜日に解放されていれば良いと願いながら図書館に向かったのですが、生憎司書らしい人はおらず扉は閉ざされていました。
ですが誰かが鍵を閉め忘れたのでしょう。ドアは開いていたんですよ。
ヒヒヒ……何かいいたげですね、坂上くん。僕が鍵を壊したとでもお思いですか。
そんなコトするワケないでしょう。偶然開いていたんですよ、偶然です。
今はそれでいいじゃないですか……ヒヒヒ。
それから図書室を簡単に見てまわりましたが、もくてきの本は見当たりませんでした。
……僕が何を目的にしていたのかって?
当然、殺人鬼・根島史周が愛読した魔術書ですよ。
坂上くんは根島史周、あるいは根島事件について知っていますか?
……えぇ、そうですよね。駒形高校の事件も知らないのですから知らなくても当然です。
あれはもう半世紀以上前の事件ですから知らない方が普通なのでしょう。
それに、今となっては彼のおこした事件よりも身勝手で凄惨な事件が他に沢山ありますから忘れ去られるのもまた自然なコトでしょう。
概要はこうです。
墨田区周辺で女性が行方不明になるということがしばしば起こるようになったある日、隅田川で女子生徒の手首が浮かんでいるのが発見されました。
見つかったのは手首だけでしたが、その手首に特徴的な痕が残っていた事から女子高生の身元が判明されたのです。
そこから、彼女が最後に接触した男が根島史周だと判明し当時の警察による大捜索の甲斐もあり根島史周は逮捕されました。
逮捕された後、根島史周は容疑を大筋で認め無期懲役の刑が確定したのですが、それはあくまで彼が殺害したコトが判明したのが一人の女子高生だったからに過ぎなかったでしょうね。
恐らく彼はもっと沢山殺し、川へ投げ捨て証拠隠滅を図っていたというのが今でも通説になっています。
何で他の死体が見つからなかったのか、ですか。
それは当時、隅田川は水質汚染がひどい場所だったんですよ。近隣に立つ工場から当たり前のように有害の廃棄物が垂れ流しにされていて、中を潜って捜査することすら危険な状態だったのです。
女性の手首が見つかったのは本当にただの偶然で、もしそれが浮いてこなければ川底に沈みヘドロとなって消えていた事でしょう。そして根島はもっと沢山の人を殺していたと思いますよ。
彼は何かしら目的がある犯罪者でしたから。
実際に根島が何人殺したかは明らかになっていませんが、少なくとも3,4人の女性が被害にあっていたのではないかと言われています。
ですが根島は最後までどうして、何のために彼女たちを殺害したかは明らかにしなかったんですよ。
その話題になると根島は錯乱常態にあり……実際は錯乱状態を演じていた可能性が高いのですが、とにかくまともな会話が出来る状態では無くなってしまったので、最後まで動機は不明といいう形で処理されていたようです。
ただ、当時の記録だと根島はかなり外国語に精通している人物のようでした。
古本市などで海外の魔術書を買いあさり黒魔術の儀式に傾倒していたという噂もあります。
それらの情報から、僕は根島史周が何らかの黒魔術をつかおうとしていたのではと思い、もし当時の書物があるのなら彼がどんな黒魔術を試そうとしたのかそれを見てみたいと思ったんです。
最も、そのような本ですから当然図書館の中では見当たりませんでした。
僕はバックヤードにあるんじゃないかと思いカウンターの後ろへと潜り込んで蔵書の確認を始めたのです。
図書館の奥には滅多に読まれないような古い本や資料価値はあるものの生徒にはあまり人気のない郷土史関連の本が所狭しと並べられていましたね。
そういえば、いっとき世間を騒がせたという「禄命簿」らしい本もありましたよ。
禄命簿の事は知りませんか?
一過性のブームでしたからね……ほんの一時、蘇りの秘術という噂とともにオカルトブームにのって評判になったのです。
ただそれもすぐに廃れてしまいましたが……。
そういえば、禄命簿に関する発表をしたのもまた駒形高校の教師だったようですね。
それにしては置いてある禄命簿が原本ではなく写本であった事、少々気になる所ですが……いや、今となってはどうでもいい事でしょう。
迷路のように積まれた本を暫く眺めながら奥へと進んでいくうちに、僕はそこに置かれているには少々不似合いな本を見つけました。
黒い背表紙に金色の文字でタイトルが押された本は英語が並んでいる事もありそこには明らかに異質だったのです。
ひょっとしたらこれが根島史周の愛読していた魔術書なのではないか、そう思いワクワクしながら本を取り出しましたよ。上に積まれていた本は全て倒れてしまいましたがそれは管理が悪いせいであって僕のせいではありません。
ページをめくれば、英語に並び魔方陣の図解などが描かれています。
詳しく読み込む事は出来ませんでしたが、おそらくドイツ語の魔術書を強引に英語へ翻訳したようなものでしょうね。
ウサギのような小動物から人間に至るまで生贄を与えることで願いをかなえるといったひどく血なまぐさい内容でしたよ。
ヒヒヒ……坂上くんはこの魔術書、本物だと思いますか?
……えぇ、そうです。こういった生贄の儀式云々というのは大概、まがい物なのです。
そもそも魔術で血なまぐさい生贄の儀式が行われることなど、それでこそホラー映画の中くらいのものなんですよ。 このような過激な本が出回るのは、魔術の恐ろしさを周囲に知らしめる為の場合もあれば不老不死の研究をする錬金術師などがパトロンを納得させるため最もらしくかつ不可能な内容を書いて誤魔化した事などから生まれたものでしょう。
簡単に言えばエンターテインメント、見世物としての魔術だったんです。
ですがその内容は、当時の根島史周が行ったとされる殺害方法によく似ているようにも思えました。
今になって見ればデタラメな内容だというのも一目瞭然ですが、当時の根島史周はそう思っていなかったんだろうと思います。
さて、僕としてみればこれだけわかれば充分なくらいの成果なのですが、もう少しこの本を調べてみたいという気持ちもありました。
ずっと駒形高校の片隅にあるにしては少々センセーショナルな内容ですし、世間を震撼させた殺人鬼が何をもってこの本を研究したのか興味がないといえば嘘ですからね。
これだけの蔵所ですから一冊くらい無くなっても気づきはしないだろうし、このまま腐らせておくのも勿体ないでしょう。
そんな悪い考えが頭をもたげてきてしまいましてね。ちょうど手頃な肩掛け鞄で来ていましたから、こっそりもっていっても誰も気付かないなんて思っていたんですが……。
「よぉ、おまえさん。ここの蔵所は貸し出し禁止だぜ」
気がついたらドアに男が一人立っていたのです。
歳は……50代半ばくらいでしょうか。白髪交じりの髪にタレ目で、人なつっこそうに笑っていたのが印象的で、口には火の付いてない煙草をくわえています。
一瞬、教師に見つかったのかと思い身構えましたが彼は僕の気を紛らわすよう両手をこちらに向けると静かに首を振りました。
「おっと、慌てなさんな。別にセンセーじゃ無ェんだ。この学校の用務員で葦宮ってもんだよ」
用務員の葦宮氏いわく、外で花壇の手入れなどをしていたら図書室に人影が見えておかしいな、と思って様子を見に来たのだそうです。 この学校では休日に図書室を開放してないみたいなんですよね。だからこの時間に人がいるのを妙だと感じたのでしょう。
「すいません、ドアが開いていたから勝手に入ってしまいました……以前からバックヤードを見てみたかったので」
僕の言葉に葦宮氏はさして気にする様子もなくどこか寝ぼけたような目をこちらへと向けていました。
「はぁ、そうかい。変わってるねェ、バックヤードの本だなんて分厚くて古いばっかりの本しかねぇだろ。何かいいもん見つかったか」
「えぇ、目的の本は探せました。最も英語で読めなかったんですけど……」
「ふぅん……ところでおまえ、ウチの生徒じゃないだろ。名前、なんてェんだ?」
そこまで言われて、僕はどう言い訳しようか考えると同時にちょっとした違和感を覚えました。 余所の学校の生徒が入り込んだとき、どこの学校の何という名前の生徒なのかが気になるものだろうと思ったからです。
ですが彼は僕が誰なのか、しか聞きませんでした。
まるで名前以外に興味がないようです。
「僕は風間望といいます。鳴神学園の3年です」
だからとっさに、僕は風間さんの名前と住所を告げていました。
何故そんな事をしたのかは自分でもよくわかりませんが、呪術などではよくあるそうじゃないですか。「相手に名前を知られただけでも呪術でなら殺せる」なんて……だからとっさに、風間さんの名前を名乗っていたんですよね。
これでもし本当に風間さんが死んだらちょっと面白いとも思いましたから。
「なるほど、風間望、住所は……茨城の方が、へぇ。随分と遠くへ来たもんだなァ……とにかく、部外者があんまりチョロチョロするもんじゃないよ。ほらとっとと出ていけ、俺だから見逃してやるけど、他の教師に見つかったら大問題だぞ」
「……逃がしてくれるんですか?」
「別に、こんな小さなコトでオマエさんの人生をぶち壊そうなんて思っちゃいねぇよ。最近はアレだろ、些細な失敗でも取り返しがつかないくらい貶められたりするもんだろう? はぁ、大変だねぇオマエらもさ」
「そうですね……ありがとうございます、葦宮さん」
僕が生徒通用門まで立つと葦宮さんは「いいのいいの」と手をヒラヒラさせ姿を消しました。
話はここでオシマイなんですけれども……。
これは後で調べたんですが、駒形高校に葦宮なんてなまえの用務員はいないんですよ。
しかもその名前は殺人鬼・根島史周が学校に潜伏していた時に名乗っていた仮の名前だったそうです。
そして根島史周……当時は葦宮誠と名乗っていたようですが、彼は生徒ほとんどの名前と顔、住所を記憶していたそうですよ。
とても正確に、執拗なまでに記憶していて彼は何をするつもりだったんでしょうか……。
あれから僕の身の回りで変なコトなどはおこっていません。
幸いというか残念ながらというか、風間さんもすこぶる健康そうですよね。
だけどもし、あの時僕が本当の名前を名乗っていたとしたら……あるいはあの人に風間さんの顔を見せていたとしたら、一体どうなっていたんでしょう。
それを思うと今でも僕は少しばかり胸の中がざわめくのですよ。
きっと、もっと面白い事になっていたんじゃないのか、なんて……。
僕の話はこれで終わりです。
坂上くん、お付き合いありがとうございました。
あぁ、坂上くん。そばまで来ていたんですね、全然気付きませんでした。
少しばかり考え事をしていたので……そうだ、坂上くんも聞いてくれますが。
先週の日曜日にあった話なのですが……。
僕は所用があり親に連れられ都内まで出かけてきました。
何のことはない、よくあるつまらない親戚の集まりですよ。
一応僕もついて行く事になりましたが、ほとんど大人たちが膝をつきあわせてする話をするだけで僕はあくまでいるだけ、という状態でしたからね。
これなら僕一人がいなくなっても気付かないだろうと、東京見物をしゃれ込もうと決めたワケです。
とはいえ、あまり遠出が出来る状態ではありませんでした。
一応はきちんとした集まりだからと制服で出かけていましたし、あまり大金も持っていません。電車に乗って遠くまで行きすぎては両親に叱られてしまいますので、行ける場所は歩いて
いける範囲に限られていました。
最も、それでも東京二十三区内ですからね。
住宅街にある僕の家と比べればよっぽど賑わっていましたし、人も多く少し休めるカフェやら部屋を彩るインテリアの店などは充分すぎるくらいにありましたよ。
それに、僕の目的もは最初から同区内にある「駒形高校」に決めていましたから、どこかの店を覗くつもりもありませんでした。幸いに歩いていける距離でしたしね。
ところで坂上くんは駒形高校のことは知っていますか?
……えぇ、知らなくても当然ですよね。
駒形高校は今から40年ほど前に殺人鬼が潜伏していたと言われる学校ですよ。
当時世間を賑わした殺人鬼が名を変え姿を変えて用務員として潜入し、長らくその学校で生活していたようです。
彼が殺人鬼ではないかと疑いがかかると同時に姿を消してしまったそうですが、生徒からの評判は良かったようですよ。 用務員をやっている最中に人を殺したといった話も無かったようですしね。
ただ、当時その用務員が愛読していた本は少々刺激的な内容が多かったようでして……。
用務員が逃げた時、その刺激的な書物は残されていたようですが捨てるには惜しいと思った誰かが図書室の奥に押し込んだともっぱらの噂で、今でも校内のバックヤードで眠っていると噂されているのです。
僕はその殺人鬼が愛読していた本というものに少しばかり興味がありまして、駒形高校へ行ってみたんですよ。
学校ですからいつでも門が開いているというワケではありませんでしたが、その日は運動部がグラウンドを使っていたので僕でも気にせず入り込む事が出来たのです。
鳴神学園の制服を着て行ったのも怪しまれずにすんだ理由の一つでしょうね。
あの日は夏日でしたからワイシャツとズボンだけだと駒形高校の制服とあまり変わりませんでしたから。
こういう時には変にキョロキョロしたりビクついたりするとかえって怪しいものでしょうから、僕は堂々と生徒通用口から廊下へ向かうと図書館がどこにあるか調べてみました。
鳴神学園と比べれば他の学校なんて小さくてわかりやすいものです。図書室は特別棟の一階にありましたよ。
出来れば日曜日に解放されていれば良いと願いながら図書館に向かったのですが、生憎司書らしい人はおらず扉は閉ざされていました。
ですが誰かが鍵を閉め忘れたのでしょう。ドアは開いていたんですよ。
ヒヒヒ……何かいいたげですね、坂上くん。僕が鍵を壊したとでもお思いですか。
そんなコトするワケないでしょう。偶然開いていたんですよ、偶然です。
今はそれでいいじゃないですか……ヒヒヒ。
それから図書室を簡単に見てまわりましたが、もくてきの本は見当たりませんでした。
……僕が何を目的にしていたのかって?
当然、殺人鬼・根島史周が愛読した魔術書ですよ。
坂上くんは根島史周、あるいは根島事件について知っていますか?
……えぇ、そうですよね。駒形高校の事件も知らないのですから知らなくても当然です。
あれはもう半世紀以上前の事件ですから知らない方が普通なのでしょう。
それに、今となっては彼のおこした事件よりも身勝手で凄惨な事件が他に沢山ありますから忘れ去られるのもまた自然なコトでしょう。
概要はこうです。
墨田区周辺で女性が行方不明になるということがしばしば起こるようになったある日、隅田川で女子生徒の手首が浮かんでいるのが発見されました。
見つかったのは手首だけでしたが、その手首に特徴的な痕が残っていた事から女子高生の身元が判明されたのです。
そこから、彼女が最後に接触した男が根島史周だと判明し当時の警察による大捜索の甲斐もあり根島史周は逮捕されました。
逮捕された後、根島史周は容疑を大筋で認め無期懲役の刑が確定したのですが、それはあくまで彼が殺害したコトが判明したのが一人の女子高生だったからに過ぎなかったでしょうね。
恐らく彼はもっと沢山殺し、川へ投げ捨て証拠隠滅を図っていたというのが今でも通説になっています。
何で他の死体が見つからなかったのか、ですか。
それは当時、隅田川は水質汚染がひどい場所だったんですよ。近隣に立つ工場から当たり前のように有害の廃棄物が垂れ流しにされていて、中を潜って捜査することすら危険な状態だったのです。
女性の手首が見つかったのは本当にただの偶然で、もしそれが浮いてこなければ川底に沈みヘドロとなって消えていた事でしょう。そして根島はもっと沢山の人を殺していたと思いますよ。
彼は何かしら目的がある犯罪者でしたから。
実際に根島が何人殺したかは明らかになっていませんが、少なくとも3,4人の女性が被害にあっていたのではないかと言われています。
ですが根島は最後までどうして、何のために彼女たちを殺害したかは明らかにしなかったんですよ。
その話題になると根島は錯乱常態にあり……実際は錯乱状態を演じていた可能性が高いのですが、とにかくまともな会話が出来る状態では無くなってしまったので、最後まで動機は不明といいう形で処理されていたようです。
ただ、当時の記録だと根島はかなり外国語に精通している人物のようでした。
古本市などで海外の魔術書を買いあさり黒魔術の儀式に傾倒していたという噂もあります。
それらの情報から、僕は根島史周が何らかの黒魔術をつかおうとしていたのではと思い、もし当時の書物があるのなら彼がどんな黒魔術を試そうとしたのかそれを見てみたいと思ったんです。
最も、そのような本ですから当然図書館の中では見当たりませんでした。
僕はバックヤードにあるんじゃないかと思いカウンターの後ろへと潜り込んで蔵書の確認を始めたのです。
図書館の奥には滅多に読まれないような古い本や資料価値はあるものの生徒にはあまり人気のない郷土史関連の本が所狭しと並べられていましたね。
そういえば、いっとき世間を騒がせたという「禄命簿」らしい本もありましたよ。
禄命簿の事は知りませんか?
一過性のブームでしたからね……ほんの一時、蘇りの秘術という噂とともにオカルトブームにのって評判になったのです。
ただそれもすぐに廃れてしまいましたが……。
そういえば、禄命簿に関する発表をしたのもまた駒形高校の教師だったようですね。
それにしては置いてある禄命簿が原本ではなく写本であった事、少々気になる所ですが……いや、今となってはどうでもいい事でしょう。
迷路のように積まれた本を暫く眺めながら奥へと進んでいくうちに、僕はそこに置かれているには少々不似合いな本を見つけました。
黒い背表紙に金色の文字でタイトルが押された本は英語が並んでいる事もありそこには明らかに異質だったのです。
ひょっとしたらこれが根島史周の愛読していた魔術書なのではないか、そう思いワクワクしながら本を取り出しましたよ。上に積まれていた本は全て倒れてしまいましたがそれは管理が悪いせいであって僕のせいではありません。
ページをめくれば、英語に並び魔方陣の図解などが描かれています。
詳しく読み込む事は出来ませんでしたが、おそらくドイツ語の魔術書を強引に英語へ翻訳したようなものでしょうね。
ウサギのような小動物から人間に至るまで生贄を与えることで願いをかなえるといったひどく血なまぐさい内容でしたよ。
ヒヒヒ……坂上くんはこの魔術書、本物だと思いますか?
……えぇ、そうです。こういった生贄の儀式云々というのは大概、まがい物なのです。
そもそも魔術で血なまぐさい生贄の儀式が行われることなど、それでこそホラー映画の中くらいのものなんですよ。 このような過激な本が出回るのは、魔術の恐ろしさを周囲に知らしめる為の場合もあれば不老不死の研究をする錬金術師などがパトロンを納得させるため最もらしくかつ不可能な内容を書いて誤魔化した事などから生まれたものでしょう。
簡単に言えばエンターテインメント、見世物としての魔術だったんです。
ですがその内容は、当時の根島史周が行ったとされる殺害方法によく似ているようにも思えました。
今になって見ればデタラメな内容だというのも一目瞭然ですが、当時の根島史周はそう思っていなかったんだろうと思います。
さて、僕としてみればこれだけわかれば充分なくらいの成果なのですが、もう少しこの本を調べてみたいという気持ちもありました。
ずっと駒形高校の片隅にあるにしては少々センセーショナルな内容ですし、世間を震撼させた殺人鬼が何をもってこの本を研究したのか興味がないといえば嘘ですからね。
これだけの蔵所ですから一冊くらい無くなっても気づきはしないだろうし、このまま腐らせておくのも勿体ないでしょう。
そんな悪い考えが頭をもたげてきてしまいましてね。ちょうど手頃な肩掛け鞄で来ていましたから、こっそりもっていっても誰も気付かないなんて思っていたんですが……。
「よぉ、おまえさん。ここの蔵所は貸し出し禁止だぜ」
気がついたらドアに男が一人立っていたのです。
歳は……50代半ばくらいでしょうか。白髪交じりの髪にタレ目で、人なつっこそうに笑っていたのが印象的で、口には火の付いてない煙草をくわえています。
一瞬、教師に見つかったのかと思い身構えましたが彼は僕の気を紛らわすよう両手をこちらに向けると静かに首を振りました。
「おっと、慌てなさんな。別にセンセーじゃ無ェんだ。この学校の用務員で葦宮ってもんだよ」
用務員の葦宮氏いわく、外で花壇の手入れなどをしていたら図書室に人影が見えておかしいな、と思って様子を見に来たのだそうです。 この学校では休日に図書室を開放してないみたいなんですよね。だからこの時間に人がいるのを妙だと感じたのでしょう。
「すいません、ドアが開いていたから勝手に入ってしまいました……以前からバックヤードを見てみたかったので」
僕の言葉に葦宮氏はさして気にする様子もなくどこか寝ぼけたような目をこちらへと向けていました。
「はぁ、そうかい。変わってるねェ、バックヤードの本だなんて分厚くて古いばっかりの本しかねぇだろ。何かいいもん見つかったか」
「えぇ、目的の本は探せました。最も英語で読めなかったんですけど……」
「ふぅん……ところでおまえ、ウチの生徒じゃないだろ。名前、なんてェんだ?」
そこまで言われて、僕はどう言い訳しようか考えると同時にちょっとした違和感を覚えました。 余所の学校の生徒が入り込んだとき、どこの学校の何という名前の生徒なのかが気になるものだろうと思ったからです。
ですが彼は僕が誰なのか、しか聞きませんでした。
まるで名前以外に興味がないようです。
「僕は風間望といいます。鳴神学園の3年です」
だからとっさに、僕は風間さんの名前と住所を告げていました。
何故そんな事をしたのかは自分でもよくわかりませんが、呪術などではよくあるそうじゃないですか。「相手に名前を知られただけでも呪術でなら殺せる」なんて……だからとっさに、風間さんの名前を名乗っていたんですよね。
これでもし本当に風間さんが死んだらちょっと面白いとも思いましたから。
「なるほど、風間望、住所は……茨城の方が、へぇ。随分と遠くへ来たもんだなァ……とにかく、部外者があんまりチョロチョロするもんじゃないよ。ほらとっとと出ていけ、俺だから見逃してやるけど、他の教師に見つかったら大問題だぞ」
「……逃がしてくれるんですか?」
「別に、こんな小さなコトでオマエさんの人生をぶち壊そうなんて思っちゃいねぇよ。最近はアレだろ、些細な失敗でも取り返しがつかないくらい貶められたりするもんだろう? はぁ、大変だねぇオマエらもさ」
「そうですね……ありがとうございます、葦宮さん」
僕が生徒通用門まで立つと葦宮さんは「いいのいいの」と手をヒラヒラさせ姿を消しました。
話はここでオシマイなんですけれども……。
これは後で調べたんですが、駒形高校に葦宮なんてなまえの用務員はいないんですよ。
しかもその名前は殺人鬼・根島史周が学校に潜伏していた時に名乗っていた仮の名前だったそうです。
そして根島史周……当時は葦宮誠と名乗っていたようですが、彼は生徒ほとんどの名前と顔、住所を記憶していたそうですよ。
とても正確に、執拗なまでに記憶していて彼は何をするつもりだったんでしょうか……。
あれから僕の身の回りで変なコトなどはおこっていません。
幸いというか残念ながらというか、風間さんもすこぶる健康そうですよね。
だけどもし、あの時僕が本当の名前を名乗っていたとしたら……あるいはあの人に風間さんの顔を見せていたとしたら、一体どうなっていたんでしょう。
それを思うと今でも僕は少しばかり胸の中がざわめくのですよ。
きっと、もっと面白い事になっていたんじゃないのか、なんて……。
僕の話はこれで終わりです。
坂上くん、お付き合いありがとうございました。
PR
COMMENT