インターネット字書きマンの落書き帳
ヒースとシンクレアと一夜の過ち(リンバス・BL)
天啓を得た!
天啓で「一夜の過ちを犯してしまうヒースクリフとシンクレアを書きなさい」と言ってた!
それは天使の囀りか、悪魔の嘲笑かはわからない。
だが俺はそれを書けると思い、そして書いたのだッ……。
というワケで、Twitterに放流していたヒースクリフ×シンクレアのBLです。
俺は! 感情が重い男と感情が重い男がぶつかるのがだいすき!
これからも感情が重い男を、どんどん事故らせていきたいと思います。
天啓で「一夜の過ちを犯してしまうヒースクリフとシンクレアを書きなさい」と言ってた!
それは天使の囀りか、悪魔の嘲笑かはわからない。
だが俺はそれを書けると思い、そして書いたのだッ……。
というワケで、Twitterに放流していたヒースクリフ×シンクレアのBLです。
俺は! 感情が重い男と感情が重い男がぶつかるのがだいすき!
これからも感情が重い男を、どんどん事故らせていきたいと思います。
『夜明けの似た者同士』
鈍い身体の痛みと心地よい倦怠感にうながされシンクレアが目を覚ました時、隣には全裸で眠るヒースクリフの姿があった。
ちょっとまってください、一体どういうことですか。
頭の中で声が響くのと同時に、昨夜の思い出が鮮明に蘇る。
火照った身体に重なる吐息、肌をあわせ唇を重ね、いくつかの甘い言葉が耳に絡まる記憶は身体にも強く残っていた。
「そんな目で見んじゃ無ェよ……」
自然と熱を帯びた視線を向けていたシンクレアの思いに気付いたのだろう。
激しい情熱と行き場のない愛しさを燻らせたヒースクリフは、自分の内に秘めた想いが亡霊を追うだけの行為だというのを知ってもなお、シンクレアの姿に、身体に、亡霊の面影を重ね、それに苦悩しているのは明白だった。
「お前みたいなのに縋られたら、俺は……また、壊しちまう。きっと、また……」
ヒースクリフがひどく怖れているのは肌で伝わる。
シンクレアの好意を知った上で、シンクレアの心と身体にかつて愛した別の誰かを重ねる自分の愚かさに気づき、その愚かさと欲望に際限ないのを自分でも理解しているのだ。
だからこそ、シンクレアの純粋な愛情や好意を素直に受け入れる事ができないまま、今日までずっと秘めた思いと欲望とを制御してきたのだろう。
シンクレアの純真さを壊さないためにも、それを利用して自身の飢えた欲望を満たす道具として扱わないためにも。
だが、シンクレアはそれを拒まなかった。
お互いに愛しているのだから、それが例えどんなに歪な形であっても過去の模倣であっても、ヒースクリフの気持ちが少しでもこちらに向き、そして彼が救われるのならそれで良かったのだ。
「いいですよ、僕は貴方になら壊されてもいいんです。だから……抱いてくださいヒースクリフさん……絶対に、後悔なんてしませんから……」
その日、二人は強かに酔っていた。
普段のシンクレアは飲酒などしないのだが、いかんせん周りにいる大人がルールやマナーなど二の次といった連中だ。ジュースだと思った飲み物に強めの酒が仕込まれていて、酔って歩けなくなった彼をヒースクリフが抱えて連れて帰ったのは、何とはなしに覚えている。
彼に抱えられ、寄り添われ、肌をそばに感じるとシンクレアはいつも幸せな思いがした。
血が通い、温もりがある自分より年上で身体の大きな男。
シンクレアは以前から、粗暴だが親身になってくれるヒースクリフのことを好いていた。
それは、シンクレアが生理的嫌悪を抱いていた義体を施していない身体だったというのもあるだろう。
自分にも、自分の家族にも見られなかった激しさと、分かりやすいほど感情を露わにする姿に対する憧れもあっただろう。
躊躇ない暴力に強さを感じていたのもあったし、自分より長身で逞しい身体であることも、どこか遠国を感じさせる浅黒い肌にも、傷だらけの身体にも、整った顔立ちが珍しいのもあったろう。
全てが憧れであり、憧れは好意と混ざりあう。
まだ思春期といっても良い年頃のシンクレアにとって、年上であるヒースクリフに対する憧れは恋慕の情に程近いものへと成長するのにそれ程時間はかからなかった。
当然、普段はそんな思いをおくびにも出さないでいた。
だが昨晩は二人とも酔いが回り、特にヒースクリフは酷く感傷的になっていたのだ。
シンクレアを部屋まで送り届けベッドに寝かせた後も髪を撫で、じっと顔を見つめて、知らない女の名前を苦しそうに吐き出す。
ヒースクリフは昨夜のように酔い潰れたり、疲れて身動きがとれなくなったシンクレアを部屋に連れ戻しベッドへと寝転がした後、時々そうしてシンクレアの顔を眺める事があったのだ。
シンクレアはきっと、自分の顔が愛しい誰かに似ているのだろうと思っていた。
ヒースクリフが今でも、その誰かを愛しているということも聡い彼は当然気付いていた。
だからこそ、ひょっとしたら、ヒースクリフの心が揺らいでいる時ならそれにつけ込み、言い寄ってふれ合える機会があるのではないか。そんな打算的な感情を、抱くようになってしまったのだ。
「抱いてください」
そんな恥じらいのない言葉を口走ったのも、全てはヒースクリフの内にある枷を取り払うためだった。
これだけ憧れているのだ、抱かれてもいい。そう思ったのは事実だったし、実際その日のヒースクリフは少しばかり人恋しかったのだろう。シンクレアが彼を受け入れた時、耐えきれぬよう押し倒し、我慢がきかぬ獣のよう首筋を、胸元を、身体ぜんたいを貪った。
情熱的で激しく、だが心地よい快楽が何度もシンクレアに声をあげさせる。
そんな最中、ヒースクリフはずっと知らない女を呼んでいた。
まるで自分のことなど、身代わりでしかないと宣言するかのように。
昨晩の痴態はすべて記憶に残っている。
シンクレアは酒で大胆になる事はあるが、記憶を失う事はないのだ。
ヒースクリフはどうだろう。声をかけるかどうか迷っているうちに、「う、うん」と小さい声が聞こえ、ヒースクリフは起き上がる。そして隣で裸のままでいるシンクレアを見て、大きく目を見開いた。
「あぁ、そうか……シンクレア、悪い」
最初に出たのは謝罪だった。
どうやらヒースクリフも、昨晩の記憶はしっかりと残っているらしい。
シンクレアにとってはじめての体験だったから忘れられたら悲しいとうっすら思っていたが、覚えていられるというのも気恥ずかしく、シンクレアは小さくなると何度も
「いいんです、大丈夫ですから」
と小さく返事をした。
「……身体、痛いとこ無ぇか」
「本当に大丈夫です、少し、違和感はありますけど」
「悪いな、その……俺がこんな事を言うのはお門違いだってのはわかってんだけどよ、犬に噛まれたもんだと思って忘れてくれ。もう、抱いたりしねぇから」
ヒースクリフは少し考えるような素振りを見せた後、視線を逸らしそう告げる。
昨晩のことは忘れろ、ということだろう。
一回だけ、お互いの思いを確かめる事もなくベッドを共にしたのだ。大人の間でそんな関係は、過ちとして処理されるのだろう。
だがシンクレアはそれを理解できるほど大人ではなかった。
「嫌です、僕は……僕は、僕はヒースクリフさん、貴方が好きで、貴方になら許してもいいと思って抱かれたんです。それなのに、そんな、突き放すみたいにされるのは……悲しいじゃないですか」
シンクレアは一息で告げると、ベッドの上で膝を抱え俯いてしまう。
それを見て、ヒースクリフは困ったような目を向けた。
「いや、駄目だ。シンクレア、忘れてくれ」
「嫌です、どうして忘れなきゃいけないんですか。僕……貴方に知らない人の名前で呼ばれても、それでも、貴方が好きでした。それでも、良かった。代替でも、愛されているのならそれで良かったんです」
「そうじゃねぇんだ、俺は……」
「僕は、ヒースクリフさんの全てを受け入れる覚悟があります。あなたに僕の全てを委ねてもいい。だからヒースクリフさんも、貴方を受け入れる、僕を受け入れてくれませんか……」
顔を上げ、真っ直ぐヒースクリフを見据える。
その態度に負けたよう、ヒースクリフは頭を掻き深いため息をついた。
「おい、ガキ。二言はねぇな」
「は、はい。二言はないです、僕が好きなのはヒースクリフさんですから」
「だったら……正直に、言う。俺はな」
と、そこでシンクレアの身体がベッドへと押し沈められる。彼の上に、張り付いた笑顔を見せるヒースクリフがいた。
「俺はなぁ、メチャクチャに嫉妬深いんだよ」
「……えっ?」
シンクレアの肌に、ヒースクリフの指が滑る。くすぐったい快楽が、じわじわと身体に広がっていた。
「俺を愛するって言ったな? 俺も、お前の事を愛してやる。お前だけを、お前の髪の毛一本から爪一欠片にいたるまで、全部愛してやる。だからお前は、他の奴を見るんじゃねぇ。いいか?」
「えっ……あ、はい」
「愛してるの言葉は全部、俺のためだけに言え。他の男も、他の女も、好意を寄せた目で見るな。お前の愛は全部俺のものだ、いいな」
胸と脳とを刺すような言葉が、シンクレアの心をえぐる。
ヒースクリフは嫉妬深いといった。実際そうなのだろう、ひどく独占欲があり、自分に向けられた愛は絶対に取りこぼしたくない、そんな執念が鎖のように心と身体を締め付ける。
そしてヒースクリフはこれから、その愛という名のエゴでシンクレアの心も体も縛り尽くし、所有するのだろう。深い独占欲と強い嫉妬心の果てに生まれるのは、互いしか見ない閉じた関係性しかない。ヒースクリフが求める愛とは、つまるところそのようなものだ。
頭の良いシンクレアは、すぐにそれを察した。それがどれだけ重い鎖なのかも、充分にわかっていた。だが、それでも。
「……はい、これから僕が口にする愛の言葉は、全てヒースクリフさん。貴方のために捧げます」
どこか陶酔するように、シンクレアはヒースクリフの唇に触れる。
重く、縛られるこの愛が、果てしなく心地よい。
結局のところ、シンクレアも縛られ閉ざされ二人だけの閉じた関係を望む、そのような依存心を抱く、似たもの同士なのだろう。
鈍い身体の痛みと心地よい倦怠感にうながされシンクレアが目を覚ました時、隣には全裸で眠るヒースクリフの姿があった。
ちょっとまってください、一体どういうことですか。
頭の中で声が響くのと同時に、昨夜の思い出が鮮明に蘇る。
火照った身体に重なる吐息、肌をあわせ唇を重ね、いくつかの甘い言葉が耳に絡まる記憶は身体にも強く残っていた。
「そんな目で見んじゃ無ェよ……」
自然と熱を帯びた視線を向けていたシンクレアの思いに気付いたのだろう。
激しい情熱と行き場のない愛しさを燻らせたヒースクリフは、自分の内に秘めた想いが亡霊を追うだけの行為だというのを知ってもなお、シンクレアの姿に、身体に、亡霊の面影を重ね、それに苦悩しているのは明白だった。
「お前みたいなのに縋られたら、俺は……また、壊しちまう。きっと、また……」
ヒースクリフがひどく怖れているのは肌で伝わる。
シンクレアの好意を知った上で、シンクレアの心と身体にかつて愛した別の誰かを重ねる自分の愚かさに気づき、その愚かさと欲望に際限ないのを自分でも理解しているのだ。
だからこそ、シンクレアの純粋な愛情や好意を素直に受け入れる事ができないまま、今日までずっと秘めた思いと欲望とを制御してきたのだろう。
シンクレアの純真さを壊さないためにも、それを利用して自身の飢えた欲望を満たす道具として扱わないためにも。
だが、シンクレアはそれを拒まなかった。
お互いに愛しているのだから、それが例えどんなに歪な形であっても過去の模倣であっても、ヒースクリフの気持ちが少しでもこちらに向き、そして彼が救われるのならそれで良かったのだ。
「いいですよ、僕は貴方になら壊されてもいいんです。だから……抱いてくださいヒースクリフさん……絶対に、後悔なんてしませんから……」
その日、二人は強かに酔っていた。
普段のシンクレアは飲酒などしないのだが、いかんせん周りにいる大人がルールやマナーなど二の次といった連中だ。ジュースだと思った飲み物に強めの酒が仕込まれていて、酔って歩けなくなった彼をヒースクリフが抱えて連れて帰ったのは、何とはなしに覚えている。
彼に抱えられ、寄り添われ、肌をそばに感じるとシンクレアはいつも幸せな思いがした。
血が通い、温もりがある自分より年上で身体の大きな男。
シンクレアは以前から、粗暴だが親身になってくれるヒースクリフのことを好いていた。
それは、シンクレアが生理的嫌悪を抱いていた義体を施していない身体だったというのもあるだろう。
自分にも、自分の家族にも見られなかった激しさと、分かりやすいほど感情を露わにする姿に対する憧れもあっただろう。
躊躇ない暴力に強さを感じていたのもあったし、自分より長身で逞しい身体であることも、どこか遠国を感じさせる浅黒い肌にも、傷だらけの身体にも、整った顔立ちが珍しいのもあったろう。
全てが憧れであり、憧れは好意と混ざりあう。
まだ思春期といっても良い年頃のシンクレアにとって、年上であるヒースクリフに対する憧れは恋慕の情に程近いものへと成長するのにそれ程時間はかからなかった。
当然、普段はそんな思いをおくびにも出さないでいた。
だが昨晩は二人とも酔いが回り、特にヒースクリフは酷く感傷的になっていたのだ。
シンクレアを部屋まで送り届けベッドに寝かせた後も髪を撫で、じっと顔を見つめて、知らない女の名前を苦しそうに吐き出す。
ヒースクリフは昨夜のように酔い潰れたり、疲れて身動きがとれなくなったシンクレアを部屋に連れ戻しベッドへと寝転がした後、時々そうしてシンクレアの顔を眺める事があったのだ。
シンクレアはきっと、自分の顔が愛しい誰かに似ているのだろうと思っていた。
ヒースクリフが今でも、その誰かを愛しているということも聡い彼は当然気付いていた。
だからこそ、ひょっとしたら、ヒースクリフの心が揺らいでいる時ならそれにつけ込み、言い寄ってふれ合える機会があるのではないか。そんな打算的な感情を、抱くようになってしまったのだ。
「抱いてください」
そんな恥じらいのない言葉を口走ったのも、全てはヒースクリフの内にある枷を取り払うためだった。
これだけ憧れているのだ、抱かれてもいい。そう思ったのは事実だったし、実際その日のヒースクリフは少しばかり人恋しかったのだろう。シンクレアが彼を受け入れた時、耐えきれぬよう押し倒し、我慢がきかぬ獣のよう首筋を、胸元を、身体ぜんたいを貪った。
情熱的で激しく、だが心地よい快楽が何度もシンクレアに声をあげさせる。
そんな最中、ヒースクリフはずっと知らない女を呼んでいた。
まるで自分のことなど、身代わりでしかないと宣言するかのように。
昨晩の痴態はすべて記憶に残っている。
シンクレアは酒で大胆になる事はあるが、記憶を失う事はないのだ。
ヒースクリフはどうだろう。声をかけるかどうか迷っているうちに、「う、うん」と小さい声が聞こえ、ヒースクリフは起き上がる。そして隣で裸のままでいるシンクレアを見て、大きく目を見開いた。
「あぁ、そうか……シンクレア、悪い」
最初に出たのは謝罪だった。
どうやらヒースクリフも、昨晩の記憶はしっかりと残っているらしい。
シンクレアにとってはじめての体験だったから忘れられたら悲しいとうっすら思っていたが、覚えていられるというのも気恥ずかしく、シンクレアは小さくなると何度も
「いいんです、大丈夫ですから」
と小さく返事をした。
「……身体、痛いとこ無ぇか」
「本当に大丈夫です、少し、違和感はありますけど」
「悪いな、その……俺がこんな事を言うのはお門違いだってのはわかってんだけどよ、犬に噛まれたもんだと思って忘れてくれ。もう、抱いたりしねぇから」
ヒースクリフは少し考えるような素振りを見せた後、視線を逸らしそう告げる。
昨晩のことは忘れろ、ということだろう。
一回だけ、お互いの思いを確かめる事もなくベッドを共にしたのだ。大人の間でそんな関係は、過ちとして処理されるのだろう。
だがシンクレアはそれを理解できるほど大人ではなかった。
「嫌です、僕は……僕は、僕はヒースクリフさん、貴方が好きで、貴方になら許してもいいと思って抱かれたんです。それなのに、そんな、突き放すみたいにされるのは……悲しいじゃないですか」
シンクレアは一息で告げると、ベッドの上で膝を抱え俯いてしまう。
それを見て、ヒースクリフは困ったような目を向けた。
「いや、駄目だ。シンクレア、忘れてくれ」
「嫌です、どうして忘れなきゃいけないんですか。僕……貴方に知らない人の名前で呼ばれても、それでも、貴方が好きでした。それでも、良かった。代替でも、愛されているのならそれで良かったんです」
「そうじゃねぇんだ、俺は……」
「僕は、ヒースクリフさんの全てを受け入れる覚悟があります。あなたに僕の全てを委ねてもいい。だからヒースクリフさんも、貴方を受け入れる、僕を受け入れてくれませんか……」
顔を上げ、真っ直ぐヒースクリフを見据える。
その態度に負けたよう、ヒースクリフは頭を掻き深いため息をついた。
「おい、ガキ。二言はねぇな」
「は、はい。二言はないです、僕が好きなのはヒースクリフさんですから」
「だったら……正直に、言う。俺はな」
と、そこでシンクレアの身体がベッドへと押し沈められる。彼の上に、張り付いた笑顔を見せるヒースクリフがいた。
「俺はなぁ、メチャクチャに嫉妬深いんだよ」
「……えっ?」
シンクレアの肌に、ヒースクリフの指が滑る。くすぐったい快楽が、じわじわと身体に広がっていた。
「俺を愛するって言ったな? 俺も、お前の事を愛してやる。お前だけを、お前の髪の毛一本から爪一欠片にいたるまで、全部愛してやる。だからお前は、他の奴を見るんじゃねぇ。いいか?」
「えっ……あ、はい」
「愛してるの言葉は全部、俺のためだけに言え。他の男も、他の女も、好意を寄せた目で見るな。お前の愛は全部俺のものだ、いいな」
胸と脳とを刺すような言葉が、シンクレアの心をえぐる。
ヒースクリフは嫉妬深いといった。実際そうなのだろう、ひどく独占欲があり、自分に向けられた愛は絶対に取りこぼしたくない、そんな執念が鎖のように心と身体を締め付ける。
そしてヒースクリフはこれから、その愛という名のエゴでシンクレアの心も体も縛り尽くし、所有するのだろう。深い独占欲と強い嫉妬心の果てに生まれるのは、互いしか見ない閉じた関係性しかない。ヒースクリフが求める愛とは、つまるところそのようなものだ。
頭の良いシンクレアは、すぐにそれを察した。それがどれだけ重い鎖なのかも、充分にわかっていた。だが、それでも。
「……はい、これから僕が口にする愛の言葉は、全てヒースクリフさん。貴方のために捧げます」
どこか陶酔するように、シンクレアはヒースクリフの唇に触れる。
重く、縛られるこの愛が、果てしなく心地よい。
結局のところ、シンクレアも縛られ閉ざされ二人だけの閉じた関係を望む、そのような依存心を抱く、似たもの同士なのだろう。
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