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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ムルソーにネクタイあげるグレゴール(リンバス)
グレゴールがムルソーにネクタイをプレゼントする世界線があったらいいよね。
あるとしたらどこだろう!
……現パロ?

みたいな気持ちになったので、何か平和なオフィスで仲良し同僚をやっているムルソーとグレゴールの話です。

経験上、ムルソーとグレゴールくらい身長差があると、視点が股間にしかいかないので、ネクタイやシャツの色には気付きにくい。
これ本当ですよ! 悲しいね!


『気付いてグレゴール』

 ロージャはタイムカードを押しフロアを見渡すなり、まっさきにムルソーの襟元へ目をやった。

「あら、ムルソー。それ新しいネクタイ? 普段と違ってお洒落じゃない。誰かのプレゼント?」

 嬉々として話しかけるロージャに対し、ムルソーは小さく頭を下げる。
 ムルソーという男は普段から多くを語らず、自分の生活スタイルを変えることもあまりない。
 会社にはいつも同じ色のスーツとネクタイ、ワイシャツ、革靴で、本人いわく、家には同じものが幾つもあるのだそうだ。

「いつものえんじ色も似合ってるけど、濃いブラウンのネクタイも素敵よ」

 ご機嫌な様子でネクタイに触れるロージャに、ムルソーは再び頭を下げる。
 そしてため息をひとつ付いた後、無言のままグレゴールの姿を見据えた。

 しまった、気付かなかった。

 グレゴールは内心冷や汗をかいている。ムルソーにブラウンのネクタイをプレゼントしたのは、他でもないこのグレゴールだったからだ。
 きっかけは何だったか忘れてしまった。ただ、いつも同じスーツにネクタイと替わらぬ生活をしているムルソーが少しばかり気になったのだ。

「ムルソー、おまえさん他の服は着ないのかい。ほとんど内勤とはいえ、いっつも同じ服ってのもなぁ」
「別に困ってはいない。外回りの仕事は殆ど無いし、服装に迷うこともないからな」
「でもねぇ、ネクタイくらいは変えてもいいんじゃない。おまえさんは顔もいいし、そのネクタイ以外でも映えると思うけどなぁ」

 グレゴールの言葉に、ムルソーはあまり乗り気ではない様子だった。
 効率重視で合理的なムルソーにとってネクタイの色をわざわざ変える意味がわからなかったのだろう。

「そうだ、それじゃ、俺がひとつネクタイをプレゼントしてやるよ」

 だからグレゴールがプレゼントする事にしたのだ。
 ムルソーに似合いそうなネクタイをひとつ、それほど高いものでもないし、必用ないならタンスに眠らせておけばいい。その程度のつもりだった。
 気が向いたら着けてくれれば嬉しいくらいに思っていたのだが、まさかあのムルソーが本当に着けてくるなんて……。

「お、ムルソー。珍しいな、それ、新しいネクタイか?」

 次いでフロアへ入ったヒースクリフも驚いたように声をあげる。ヒースクリフは服装などに無頓着だと思っていたが、ムルソーのネクタイにすぐに気付くとは。グレゴールはますます頭を抱える。

 今朝、ムルソーに次いでフロアに入ったのはグレゴールだった。ムルソーの隣でコーヒーを飲み、今日の業務内容を確認した後しばらく雑談もしている。
 それだというのに、グレゴールはムルソーが自分の贈ったネクタイをしているのに全く気付かなかったのだ。

(でも仕方ないでしょ、俺とムルソーの身長どんだけ違うと思ってんの。俺の隣にいたら、ムルソーの首元なんて全然見えないもん。ヒースやロージャはそりゃ、背が高いから気付くだろうけどさ……)

 グレゴールはすっかり頭を抱える。
 今気付いたようにネクタイを褒めようかと思ったが散々ムルソーと話した後だから今更だろう。結局グレゴールは悶々とした思いをかかえたまま、就業時刻まで何も言う事ができなかった。

 帰りのロッカーで、グレゴールは偶然ムルソーと一緒になる。
 作業着からスーツに着替える所だったのだろう、下着姿のムルソーを見て、グレゴールは顔をあげた。

「あれ、ムルソー。それ、新しいパンツだね。確かそんなものもってなかったよな」

 その言葉を聞いて、ムルソーは呆れたようにため息をつく。

「どうしてネクタイには気付かないのに、下着にはすぐ気付くんだ?」
「え、あ……だぁって仕方ないでしょ、俺と身長差がどんだけあると思ってんの。俺の視線だと、あんたの腰くらいしか見えないの、わかる?」
「なるほど、だから下着の色には気付くんだな」
「あー……うー……ごめんねぇ、ムルソー。俺がプレゼントしたってのにさ……」

 グレゴールは観念したように呻くと、頭を下げる。その姿を見てムルソーは珍しく笑って見せた。

「いや、別にいいんだ……その……悪かった、ありがとう」

 ぎこちない礼の言葉を聞き、ムルソーはプレゼントを案外喜んでくれていたのに気付く。

「いいんだよ、気に入ってくれたら嬉しいな」

 グレゴールは笑うと、照れたように頭を掻くのだった。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
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