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インターネット字書きマンの落書き帳

   
小林さんと藤堂くん。
イカした小林さんを見たい! 書きたい! 書かせろ! ウオー!
という事で、急に小林政男を書きます。

元々は上流階級のお坊ちゃんだったけど、父の会社が倒産したのを機に貧困に。
それから高校在学中に父の工場を取り戻しているスーパー高校生小林さんが、お金持ちのお坊ちゃんである藤堂を「昔の自分を見てるみたいだなぁ」と思ってつい世話焼いちゃう話です。

決して幸せではない小林さん。
幸せになれるといいね。

FC時代の設定とか記憶とか色々混じっているけど……俺がOK出しました!


『甘い揺りかごからの目覚め』

 その日、小林政男は冷峰学園の生徒会室に来ていた。
 もちろん小林は生徒会の役員というワケではない。
 だが個人的に生徒会長である藤堂護とは顔馴染みで、時々こっそり呼び出される事などがあったのだ。

「何の用ですか、藤堂のお坊ちゃん。私もあまり暇ではないんで、用件は手短にお願いしたいのですが……」
「……小林ィ。僕を坊ちゃんと言うのはよせと言ってるだろうが」

 部屋に入るなりそう告げる小林を藤堂は睨め付ける。
 見るからに機嫌が良くなさそうだ。

 藤堂護は「藤堂グループ」と呼ばれる資産家の末っ子である。
 小林の知る限り藤堂の父も兄も中々の人格者であると同時に良き経営者なのだが、末っ子である藤堂はまだどこか我の強さと子供っぽさを残しているように見えた。

「……では生徒会長。今日私を呼びつけたのは何があっての事でしょう」
「いや、それほどたいした用事じゃないんだ。ただ一応お前の意見も聞いておこうと思ってね」

 藤堂はあまり人の意見を聞くタイプではない。
 自分の考えた事を実践したい、というタイプの男なのだがその藤堂がわざわざ小林を呼び出して話をしたいといいしたという事は……。

(藤堂のお父上か、あるいは兄上から入れ知恵でもされたんですかね……)

 藤堂が聞かせたのは、不良に対する嫌悪感と何とかして不良というものを一掃出来ないかといった相談。出来ればこうして不良を排除したいという計画の青写真だった。

(不良を使って不良を排除する。共倒れを狙っているのでしょうが……)

 藤堂は決して頭が悪いワケではない。
 廻らせた策謀は藤堂の憎む不良をあぶり出すのに確かに良い方法だったろう。
 だがどこか危うさがある。
 計画は「理論上」成功するようになっているがそこに「人間の感情」が組み込まれていないのだ。

 いうなれば、藤堂の計画はいつだって独り善がりなのだ。
 自分の考えが絶対に正しいと思っており、その考えを貫くための財力もある故に目先の事に囚われてしまう……。

「計画は、悪くはないですよ」
「だろう?」
「ですが、成功が望めませんね。これは机上の空論です……生徒会長。あなたも人を使う立場になる人でしたら、『どうしたら人が動くのか』をもう少しきちんと考えた方がいい」
「どうしたらって、ビジネスの話だろう? 金があれば……」
「金では動かない人間もいる、という話ですよ……以前この学校を騒がせたくにおも、鮫島力も、金を握らせたら手加減するタイプではないでしょう。望月は派手な喧嘩を愛する男で、地味な喧嘩は金を握らせても本気なんて出さない。鬼塚さんに至っては道理の無い喧嘩などいくら詰まれてもしないです……だからこそ以前の生徒会長は妖しげな技まで使ってこの学校を動かしていたワケですが」
「だったら、どうしろって……」
「そうですね、生徒会長も洗脳する術でも使えたらいいんでしょうが」

 肘をつきながら窓へ視線を向ける小林を前に、藤堂はやや苛立って見える。

「そういう妙な技なんて使えないから頭を抱えてるんじゃないか……」
「技の代りに金は仕方ないでしょうが、人望を得て、信頼を得て、そういった所から開ける道というのもありますよ。ましてやあなたは生徒会長なんですから、人望を得るのは本来容易いはずです」

 この学校で藤堂護の名を知らないものはいない。
 顔も家柄も良い資産家の息子で成績優秀、スポーツも万能だ。
 だがそれを鼻にかけ他人を見下す態度をとる所があるため、生徒会長という立場にあるから従うという人間は多いが真にわかり合える友人というのは殆どいない現状には小林も気付いていた。

「そ、そうだ。僕の立場だったら、人望くらい……」
「えぇ、まず生徒会長として立派な仕事をなさると良いでしょう。その姿で人望を得て、裏切らない仲間を得て……計画というのはそうしてパーツをいくつも作り上げ、積み上げて全てが繋がった時に仕掛けるものです。わかりましたか、藤堂のお坊ちゃん」

 小林はそう告げると、藤堂の額を中指で軽く弾く。
 ペチンと小さな音を立て後ろに仰け反った藤堂はやはり不服そうな顔を向けていた。

「ぼ、坊ちゃんっていうな! それに、そんなの時間が……」
「時間がかかると思うのなら、3日後までには何をするか。一週間後には、一ヶ月後にはと期間を設けて準備するんですよ。それが計画です。目的を果たすため、その手段を整えていくのは常に計画において必用なこと……いいですか、きちんと未来を見据えて動く。これが出来なければ、あなたはいつまでたってもお父上の庇護下にある『護お坊ちゃん』のままですからね」

 そこで立ち上がると、小林は生徒会室を出た。
 西日のせいで藤堂がどんな表情をしていたかは分らなかったが、今暫くは「不良を粛正する」なんて大それた事を言い出しはしないだろう。

「小林さーん、お疲れーっス」

 生徒会室を出てすぐの壁を背もたれに、見知った男が立っていた。
 冷峰四天王自称NO.2の男である望月駿だ。

 元々、スポーツ特待生としてこの冷峰学園に入学したのだ入学した直後にあった上級生からの挨拶回りという暴力沙汰に巻き込まれ派手な喧嘩をした結果、『スポーツより喧嘩の方が断然面白い』と思うようになり、それから喧嘩に明け暮れているという「喧嘩が好きだから喧嘩をする」タイプの男だ。

 そういうとあたかも誰これ構わず喧嘩をふっかけるような狂犬に思えるが、本人は元々スポーツマンというのもあってかかなり人懐っこく愛嬌があり、明るく誰とでも友人のように接する気質から不良たちだけでなく普通の生徒にも友達が多いというから変わり種とも言えよう。

「いたんですか、望月くん」
「いましたよ? いや、小林さんが生徒会室入ってくから、藤堂の命(タマ)ぁとって生徒会長になってくれるのかなーと期待してたんだけど、何か違う感じでした?」
「何で私が生徒会長の命(タマ)とらなきゃいけないんですか……犯罪は割に合いませんよ」
「んー、そっかなぁ。俺ぁね小林さん。小林さんが生徒会長になって冷峰の頭(ヘッド)になったら絶対面白いって思ってんですよー。今より派手な喧嘩出来そうだし」
「貴方は喧嘩が出来ていればそれでいいんですね……」

 呆れながら頭を掻く小林を見ながら、望月は不思議そうに首を傾げて見せた。

「ンでも、小林さんって藤堂に甘いというか……思ったより世話焼いてる感じしますよね」
「そうですかね」
「そうですってー、小林さんわりと無駄な事しない主義じゃないですか。つまるところ、冷峰四天王の頭(ヘッド)でいるのもそれより上にいくと面倒な仕事が増えて自分のやりたいタスクがこなせなくなるからー……とかでしょ?」

 望月は喧嘩をするために騒動をおこす困った男ではあるが、決して頭は悪くない。
 普段から本意を悟られないようにしているつもりだがこちらの思惑はもう分っていたようだ。

「そうですよ……やっと以前と同じ事業を行える環境が整いつつあるんです。学校の騒動に巻き込まれるのはなるべく避けたいんですよ」

 口ではそう言うが小林はこの「冷峰学園」という場所に愛着をもっているのは確かだった。
 親睦会という名目ながら荒事が確定している運動会やスポーツ大会にも嫌がる事なく参加して義理を果たしていくのも冷峰学園に対する思い入れがあるからだろう。

「ンま、確かに藤堂を大人しくさせておけば厄介事はおきないっすからね」
「そういう事です。彼は恵まれていますから努力さえすれば何でも出来ると思い、道を外れた人間は努力不足だったから落ちこぼれたのだと思う。そういった価値観が邪魔をしてなかなか広い視野をもつに至らない……そこをクリア出来れば一層頼れる『冷峰の生徒会長』になれる器なんですけれども、ままならないですね」
「ほら、それ」

 と、望月は指を突きつける。

「それですよ小林さん。何か小林さんって藤堂に対して……何ていうんだろうなコレ。同情的? というか、やけに共感してるっていうか……お節介焼いてる感じするんですよね。音無は分るんっすよ、アイツは1年のくせに根性ありますから場数踏めば絶対強くなるって。ンでも藤堂は口先ばっかの薄っぺらいペテン野郎じゃないですか。そんな見るからに浅い奴に、どうしてそこまで手ぇ貸してやるんスかね」

 やはり望月はよく人を見てるな、と小林は思っていた。
 喧嘩をする時も相手が乗るかどうかを推し量って乗ってくる相手だけ挑発しているようだから、自然に見る目が養われたのか。あるいは元々勘働きがいいのだろう。

「そうですね……」

 小林は目を閉じて、過去の自分を思い返していた。
 勉強出来ないなんて努力をしない奴。親の決めた目標は厳しいものでも、それに従いきちんと努力すれば成功できる……そう信じていた自分の生活が失われたのは父の会社が倒産したからだった。
 それから貧困に耐えながら初めて「努力が出来るのは、今まで家族が裕福だったから努力だけをすればいい環境にいる事ができたのだ」と思い知る。
 それからは「これから」の事を考え動くようになっていた。
 高校には奨学金免除になる成績で入ればいい。学費が免除になればそのぶん生活は楽になる。バイトをして得た金銭を運用資金にし、在学中に何とかして父の工場を取り戻す……。
 失ったから取り戻そうと思った。
 そのために自分を律し、やるべき事をやるため利用できる環境は何でも利用してきた。
 人を使う時、人は金や正論だけでは動かないのも知り、相手の望むもの。相手の信条。そういった思いに寄り添いながら人を生かして使う方法を覚え、今に至るのだ。

 そういった過去を経験しているからだろう。
 父の庇護を受け恵まれた環境の中で、自分の見て居る方向だけが正しいと思っている藤堂の姿が、かつての自分と重なってしまうのだ。
 何も知らず幸福な夢を見て微睡んでいた自分に……。

「……私も感傷に浸る事があり、藤堂くんは私の古傷に触れる所がある。といった所でしょうか」
「なるほど、わからん!」
「はは、分らなくてもいいですよ。えぇ、本来は分らなくていいんです」

 望月も藤堂もまだ高校生、18才になるかならないかの年齢だ。
 子供といっても良いだろう。
 それならばまだ夢を見て微睡んだり、夢中になって何かを追いかけたり、そういう事をしててもいいはずなのだから。

「私は、少しだけ先に行ってしまったから……せめて望月くん。あなたや藤堂くんが間違ってしまわないようにするだけですよ」

 小林はそう行って笑うと、手を振りながら廊下を進む。

「……ほんと、あの人はいつもそうだよなァ」

 その姿を見送って、望月は目を細めた。

「いつも笑う時、なんか諦めたみたいな笑い方するんだよ。いつも、いっつもな……」

 それでも、と思う。
 初めて喧嘩をふっかけた時、面倒くさそうに相手をされしかもこてんぱんに負けた。
 負けた後はリベンジの機会をうかがっていたが、仲間とともにあっても何処か孤独な姿を見ているうちに本当に笑っている姿を見たいと思うようになっていた。

「でも、俺いつか見てみたいなぁ……小林さんが本当に、楽しそうに笑ってる顔さ」

 望月だけではない。
 望月の親友である早坂も、小林を兄のように慕う音無も、そして恐らくあの藤堂も心のどこかでそう思っているだろう。

 いつかあの人が歳相応の笑顔を見せてくれればいい。
 彼は報われて欲しい人だから。

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東吾
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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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