インターネット字書きマンの落書き帳
平行世界において誰が正しくその人であるのだろうか(隆押)
押切トオルくんと従兄弟のお兄さんがお互い片思いをしているような話です。
俺の趣味から隆幸お兄さん×トオルくんの話になりますが、俺の理性が「隆幸お兄さんは常識人だから、高校生のトオルくんになんか手を出さないよ」と常に言っていますね。
だから都合の良い「平行世界と通じる家」という展開を存分に活用致しました。
イトジュン作品で男CPの話をちゃーんと書くのは初めてで至らぬコトもあるとおもいますが……まぁ俺は天才だから多少至らなくても許せよな!
二次創作。
常に俺の解釈は最高! のスタンスで生きていきたいよね!
俺の趣味から隆幸お兄さん×トオルくんの話になりますが、俺の理性が「隆幸お兄さんは常識人だから、高校生のトオルくんになんか手を出さないよ」と常に言っていますね。
だから都合の良い「平行世界と通じる家」という展開を存分に活用致しました。
イトジュン作品で男CPの話をちゃーんと書くのは初めてで至らぬコトもあるとおもいますが……まぁ俺は天才だから多少至らなくても許せよな!
二次創作。
常に俺の解釈は最高! のスタンスで生きていきたいよね!
『隣にあれど交わらず』
押切トオルは従兄弟である隆幸の家に来てからずっと何かを考えているようだった。
何を考えているのかは知らないが悩んでいるように見えたのでトオルのから何か語るまでは黙っているつもりだったが、部屋に来た時にいれたコーヒーにすら手をつけないまますっかりカップごと冷め切ってしまっている。
話すべきか、それとも黙っているべきなのかトオル自身まだ決める事が出来ないのだろう。
その表情からは強い迷いと行き場のない感情があるようにも思えた。
「なぁ、どうしたトオル。さっきからずっと黙りこくって何も喋らないが一体何があったっていうんだ? もし悩みがあるなら俺でよければ相談に乗るぞ」
トオルから切り出すまでは黙っていようと思っていたが、彼から喋るような素振りは一切見られない。沈黙に耐えかねた隆幸はそう言いながら新しいコーヒーを注ぐとトオルの前においてやった。冷めたコーヒーは手を着けられていなかったので自分で一息に飲み干す。
冷たいコーヒーは煮詰まったような雰囲気のある今の頭を幾分か冷やしてくれた。
「俺なんかじゃろくなアドバイスも出来ないかもしれないが、一人で悩んでいるのが辛いんだったら話してみれば楽になるかもしれないだろ」
隆幸は自分のために新しいコーヒーを注ぎながらなるべく明るい語調で告げる。
あまり深刻な顔をしてはかえってトオルは何も話さないだろう。彼は何かと自分の中にため込んでしまう性格なのを隆幸はよく知っていた。
従兄弟であるトオルが以前から何か隠している様子があったのには気付いていた。
だが最近は何かを隠しているという以上に、悩んでいるような素振りが多く見られるようになっている。
まだ高校生なのだから、学業や進路、色恋沙汰と悩む事は多いだろう。
だがトオルが心を砕く理由の殆どは彼が住む奇妙な「家」の事だった。
街の郊外にある一軒家が押切トオルの家になる。
傍目からすると奇抜すぎるくらいなデザインだが高校生が一人で住むには広すぎるくらいの大きな家であり、トオルはそこで一人暮らしをしていた。
中古住宅であるその一軒家を購入して10年も経たないうちにトオルの両親は海外に出向する事となった。
その頃すでに高校進学が決まっていたトオルがこの場所に残る事を決めたのは近所に従兄弟である隆幸たちがいた事や、急に生活環境を変えるのが良くないと思った事、海外への出向も1年程度の予定だった事、家は誰か住まなければ立ちどころにいたんでしまうといった事などを総合して考えた結果だろう。
1年だけの予定だった海外への出向は思ったよりも伸びて今に至るが、トオルは以前と変わる事もなく一人での生活を続けている。
高校生で一人暮らし。
それも郊外で誰の目も気にする必用のない生活なのだから、傍目からすれば羨ましい事だろう。
うるさく言う緒やもなく大きな家で好き放題に生活できるのだ。
沢山の友人を連れ込み毎日を遊び呆けたり、彼女を呼び込んでしたい事をする……なんておおよそ高校生が妄想する「楽しい生活」が今の彼には可能なのだから。
だが隆幸はトオルの家を知っているが故に、トオルがそのような明るい気持ちになれない理由も、家に人を呼びたいと思わない理由もは何とはなしに理解できていた。
(いくら一人暮らしといえ、あの家に人を呼ぶ気にはなれないだろうな……)
従兄弟である隆幸は、過去に何度かトオルの家に行った事もある。
遅くなったからという理由でた事も泊まった事もあるのだが、あの家は何とも言えず落ち着かないのだ。
食事中でもトイレにいる時でも、風呂にいる時でさえ常に誰かの視線を感じる。
寝ている最中に何処からか囁くような声や、誰かが走るような足音が聞こえる事すらある。
幽霊などあまり信じてはいない隆幸だが、実際にあの家ではそういう事が頻繁におこっているようでありまたそれは「幽霊」という曖昧なものよりもっと実体を伴っているような気がした。
そう、あの家には確実に自分たち以外の「誰か」あるいは「何か」が存在しているのだ。
郊外にあるわりには奇抜な建物でもあり、あまり住人がいつかない事もあってトオルの家にまつわる噂はいくつか存在した。
あの建物を設計したデザイナーは設計中に気が狂い自殺した。
工事中に事故がおこったが、それを隠すために死体が埋めてある。
建物が出来た時、そこに入居する予定だった花嫁が自殺した。
鬼門にあるあの家は霊界に通じており、窓から複数の子供たちがじっと外を眺めている影を見た……。
この手の噂は一つや二つではない。
だが自殺やら事故といったのは本当に根も葉もない噂だろう。隆幸はあまりにも非道い噂ばかりがたつ事に憤り一度周辺の新聞を調べてみたのだがそんな事件は一つもなかった。
おそらくこの家を買った住人が仕事の都合などで立て続けに家を手放している事や、広い中古住宅のわりに格安で売り出されている事などが妙な噂になった理由だろう。
実際、トオルの家は広くはあるが交通の便があまり良くはなく近くにあるコンビニでさえ自転車を出して10分は走らないと到着できないといった有様だ。
周囲に家らしい家もなく静かで過しやすいといえばそうだが、寂しい場所だという印象が強いだろう。
今までの住人も外観の良さと広さに惹かれて住んではみたものの思いの外利便性がなく早く売りに出した、というのが真相のようだ。
だがそれが分っていても隆幸はあの家に何か悪いものがあるような気がしてならなかったのだ。
それは過去に泊まった時に「誰かの気配」を感じたのは勿論だが、他にも一つ理由があった。
トオルの家には時々『無いはずの部屋』が現れる事があるのだ。
元より彼の家は広く、トオル自身も「いくつ部屋があるか分らない」と言う程だ。構造も奇妙で思わぬ場所に引き戸があるなんて事もある。だがそれをそれを差し引いても奇妙な経験を、隆幸は以前した事があった。
いつの日だったかは覚えていない。
だが何かしらの理由でトオルの家に泊まる事になった、その日の夜の事である。
トイレに行こうと思い寝ぼけ眼でトイレに入ったのは夜明け前の事だろう。
トイレから出た時、隆幸は目の前に「存在しないはずの扉」があるのに気付いた。
部屋を間違えたのか道を間違えたのかと思いつつ寝ぼけていた隆幸は好奇心もありその扉を開けてみれば、そこには二階で寝ているはずのトオルが寝間着姿のまま座っていた。
確かに自分は今日、一階で寝ていたはずだしトオルは二階の自室にいたはずだ。
トイレは二階にもあるがトオルの部屋の前ではないし、自分がいるのも一階のトイレのはずなのだが。
奇妙に思っているうちに、トオルは見た事もない程艶やかに微笑むと隆幸のそばまで小走りで近づいてきた。
白く細い手が隆幸の首へ触れ、肌の温もりが伝わる。
かと思うと不意に唇を重ね、さも楽しそうに笑って見せた。
『兄さん、どこいってたのさ? ……今日はもっといっぱい可愛がってよ。ね? 兄さんになら何されてもいい。何したっていいよ』
そうしてごろりとベッドに寝転び、自ら寝間着をたくし上げ肌を晒すその白のまぶしさは吸い寄せられる程だった。
だが同時に隆幸の中に警鐘が鳴る。
これは、トオルじゃない。
従兄弟の形をした別の誰かだ。
このまま引き込まれたら自分はきっと、二度と「元の世界」に戻れなくなる。
とっさにそう思い扉を閉じ、自分の部屋に逃げた。鍵をかけ誰も入れないようにし蒲団を被っているうちに気付いたら朝になっており、朝食の前に同じ場所へと行ってみたがそこにはただ壁があるだけで扉らしいものは影も形もなかった。
あれは夢だろうとは思っているのだが、その時触れた唇の柔らかさと熱は未だ隆幸の中で生々しい程に残っている。
同時に思うのだ。
あの美しい肢体に触れていたら、どうなっていたのだろうかと……。
「……コーヒー、飲まないのか? 冷めるぞ。ミルクと砂糖も好きに入れていいからな」
隆幸は目の前にいる従兄弟から視線をそらし、シュガーポットを彼の方へ向ける。
血の繋がった従兄弟であるが、押切トオルは線の細く美しい少年だった。
もう高校生のはずだが顔立ちはどこかあどけなく、未だに成長しきっていない身体はどこか女性的ですらある。
あの日の事を思い出すと、トオルに対して沸々と湧き上がるのに気付いていた。
それは恋心や愛情といった生やさしい感情ではない。
トオルの身体を組み伏せてグチャグチャにしてやりたい。思う存分にしゃぶり尽くしてたっぷりと愉しみたい……欲情や劣情という言葉が似合いのドス黒い欲望だ。
そしてそんな思いが日に日に募っていく自分に罪悪感ばかり覚えるのだった。
(まずいよなァ……従兄弟とはいえ血が繋がってる、年下の……まだ高校生の子供に対してこんな風に思うんじゃ……)
あれから押切の家に泊まってはいない。
泊まってしまえばあの時に抑えた気持ちが解き放たれて、トオルに対し何をするか自分でも分らなかったからだ。
また、自分の内にある欲望を暴いた「夢の中のトオル」がまた出て来てしまわないかという心配もあった。
今の状態であのトオルと出会ったら、自分は今度こそ戻ってこれないと思っていた。
「あの家が気持ち悪いのか?」
試しにそう問えば、トオルはやっと僅かに顔を上げた。その表情か微かに驚いたように見える。 トオルは以前から「自分の家はおかしい気がする」と頻繁に話していた。
隆幸がトオルの家に泊まった時に聞いたような足音や囁き、人の気配はあの家で毎日のようにある事なのだ。
オルは儚げな見た目とは違いこれでかなり気丈な性格だが、それでもあんな奇妙な家で過していれば気が滅入ってしまうのだろう。
「そうなら、何日か家に泊まっていけばいいだろう? ……トオルだったら父さんも母さんも嫌な顔しないだろうし、あんな辺鄙なところに一人でいる方がかえって心配だからなぁ」
トオルに対して劣情を抱いていないといえば嘘になる。
だが自分の家なら両親もいるし、自制くらいは出来るだろう。少なくともあの魔性のような力のあるトオルの家のように自制心を失いそうな事にはならないはずだ。
そう思っての提案だったが、トオルはすぐに首を振ってみせた。
「ううん、大丈夫だよ兄さん。ただ……うん、ただ少しあの家は寂しいから、久しぶりに兄さんたちの顔を見たくなったのと。ちょっと考えたい事があったから、こっちに顔を出しただけなんだ。心配かけてごめんね」
そしてどこか作ったように笑うと、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーに手をつける。それは落ち着いてきたというより、むしろ急いでこの場を立ち去ろうといった様子が覗えた。
「ごちそうさま。それじゃ、もう帰るよ。何かちょっとボーっとするために来たみたいでごめんね、兄さん」
「いや、気にしなくていいさ。確かにあの家は寂しい所にあるからなぁ。息抜きになるならいつでも来てくれよ。近所に住んでるんだし、トオルは本当の弟みたいなものだからな」
隆幸はそう告げ、立ち上がり帰ろうとするトオルの頭を撫でる。
その手に触れたトオルは、今にも泣きそうな顔をして無理矢理に笑っているように見えたが。
「おい、トオル……」
やはり、何か悩んでいるのか。
そう聞くまえに彼は。
「ありがとう、兄さん……兄さんのそういう所、ホントに好きだよ」
どこか寂しげに笑うと、逃げるようにその場を後にするのだった。
・
・
・
押切トオルが誰もいない家に帰れば 「おかえり」 の声が響いた。
目の前には従兄弟である隆幸の姿がある。
いや、彼は隆幸の姿をしているが、隆幸ではない。別の世界から来た隆幸であり、この世界にいる隆幸とは別の存在だ。
見た目は同じだが性格も、嗜好も、思想も、全てがこの世界にいる従兄弟とは異なる別人なのだ。
押切の家は昔から「異世界」へ通じていた。
そこはこことまったく別の世界とは違う、鏡の向こうにあるようによく似た世界だが皆の価値観も経歴も少しずつ違うような世界であり、この家はラジオのチャンネルが狂った時にまったく知らない国の言葉が流れてくるように、時々その「別世界」へ繋がってしまうのだ。
これは「異世界」「別世界」というより「平行世界」が交わる場所とでも表現すればいいのだろうか。
つまり目の前にいる従兄弟そっくりの男は、従兄弟と同じ「隆幸」という名前であり年齢も、身長も、体格も顔立ちも何もかもが従兄弟と同じだが、平行世界にいる別人なのだ。
「戻ったのか、トオル? 浮かない顔だな……どうした」
玄関まで出迎えた隆幸はシャツにジャージのズボンといったラフな姿でトオルの傍に寄ると彼の髪に触れた。
「……少しだがコーヒーの匂いがするな。高校生で喫茶店にでも行ったか?」
この「隆幸」は目聡い。トオルの些細な変化すら見逃さない。
何と答えようか迷っているうちに、彼はさも愉快そうに笑って見せた。
「ははァ……俺の家に行ってたな? この世界の俺の家に……違うか?」
図星である。やはり、この「隆幸」は勘が良い。
こちらの世界にいる従兄弟は鈍感すぎるくらいだというのだが、向こうの隆幸は他人の感情その機微に驚く程敏感だった。
「どうだ、この世界の俺は……俺と違ってもっと鈍感で、真面目で。だが勉強は俺よりもうちょっと出来るみたいじゃないか。お堅い男なんだろ?」
饒舌に語る男を横に、トオルは無言のまま家に上がる。 自分の部屋にもどり荷物をおいて着替えようと思ったからだ。
だがその道を、「隆幸」は塞ぐと、少し強引にトオルの身体を廊下の壁へ押しつけた。
「……おい、逃げるなよトオル。あいつの家に行ったのなら分っただろう? お前が求める俺はここにいる俺で、アイツじゃないって事がさ」
「違う……違う、違うッ……隆幸兄さんは……」
顔を上げそう言いかけた唇を、その男は唇で留める。
重なる熱と交わる舌はキスの経験が乏しいトオルからしても昂ぶるほどに心地よかった。
「違わないだろ、トオル? ……この世界にいる俺は、お前にキスなんかしてくれるのか?」
男は挑発するように笑うと、トオルの制服に指を伸ばす。
男らしい大きな手がゆっくりとボタンを外していく感覚に抗えないのは、目の前にいる男が自分より力があるからというだけではなかった。
これからもたらされる快楽のこと。交わる身体の心地よさを、覚えてしまったからだ。
「隆幸兄さんが、してくれるはずがない……あの人は、貴方と違う。貴方と違って……」
「男は抱かない、か。まぁ、そうだろうな……常識とか倫理がある真っ当な相手だったら、男の身体なんて欲しがらない。ましてやお前みたいなガキの身体なんて、な」
首筋に舌を這わせ、男は笑う。
「だけど俺はするんだよ。倫理? 常識? 道徳? そんなモノの何が楽しいんってんだ。正論だって世の中の流れでコロっと変わっちまうだろうが。俺はそんな下らない他人の目や評価なんぞよりずっとお前の身体が好きだし、お前の身体が気持ちいいのを知ってるからなァ……どうだ? もうこの世界の俺は諦めて、ずっと俺と一緒にいる覚悟をしようぜ。なぁトオル、悪いようにはしないよ、俺は」
指先はより深くトオルの身体を慰めて、やがて熱い身体がその内側を責め立てる。
「はぁっ、ぁ……隆幸にいさっ……兄さん、兄さん……」
違う、違うのだ。
自分が愛しているのは「この男」じゃない。
真面目で堅物で鈍感で、だが優しい「この世界にいる従兄弟の隆幸」なのだ。
だがその思いを伝えても、きっとそれは届かないだろう。
気持ち悪い目で見られ、距離をとられ、従兄弟として普通に接してもらえなくなるのは恐ろしい。 この恋心が永遠に届く事がないのなら。
「……気持ちいいか、トオル?」
「はぁ……ん、イイ……すごく……隆幸兄さん、キスして……もっと抱いて、全部……忘れさせて……」
同じ顔と声をした、異界からきた男が愛してくれるなら、それで諦めるべきなのだ。
愛しい男と同じ容姿の、だがまったく別の男の身体に抱かれて。
「……お前、ホントに俺の事嫌いだよな」
「そんなこと……」
「別にいいぜ、それでもさ……お前が本当に好きな『隆幸』の名前呼んで、俺の身体に抱かれてろ。俺も同じ『隆幸』だからな」
ただ自分の身体を快楽の吐け口にしかしないこの化け物を前に淫らに悶えて。
「兄さんっ、隆幸にいさ、にいさ……兄さん……兄さん……」
愛しい人の名を呼び縋り付く。
そんなトオルの身体を、男はさも楽しそうに嗤って見ているだけだった。
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