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インターネット字書きマンの落書き帳

   
忘却しても火はともる。(ハデス模造二次創作)
ハデスはじめました!
冥府から脱出するのを目的にした、ハデスの息子ザグレウスが戦うローグライクのアクションRPG……楽しいですね。

レベルを上げて物理で殴り殺す!
が主体な生き方をしている自分ですが、能力アップやら何やらいろいろと持ち込み要素や収集要素があるので楽しんでおります。

何よりギリシャ神話モチーフなので……。
我、メガテンで神と出会ってから(新しい啓示を受けたみたいな言い方)神について調べるようになったタイプの人間なので、「知ってる名前が元気そう!」ってだけで健康にいいですね!

神々のデザインが最高にイカしてるのも楽しみの一つです。

という訳で、ハデスやりはじめで何か書きたい! と思ったので。
アキレウス師匠から修行されていてまだあんまり月日が経ってないザグレウスが、目的なく漠然と武術を学んでいた頃。

出会っていたかもしれないとある「神」の話です。

……とある神、といってもレーテの事なんですけどね。
作中ではレーテを性別も年齢も不明の人物(?)にしてますが、実際はニンフの一人と言われている場合が多いので、どちらかというと女性神格(神格より精霊に近いかも)と思います。

レーテは冥府にいっぱいある川の一つ。
名前の意味は秘匿、忘却、あるいは真実……で、冥府の魂はレーテ河の水を飲むと前世の記憶を全て失うとされている……そうです。

まだちょっとしか進んでないから今後レーテが出てきたらどうするのか。
しらん!

前置きがめっちゃ長くなったけど、まぁいいか!
よろしくね~。




「渇望こそ力となりいずれそれは灯火となる」


 今日の稽古はここまでにしよう。
 アキレウスの言葉を合図にザグレウスは近くの椅子に腰を下ろし汗を拭った。いつが朝でいつに日がくれるかもわからない冥府だが、随分と長い間手合わせをしていた気がする。
 終わりにするのは頃合いだろう等と思っていたザグレウスの前に、銀の器が差し出された。
 ザグレウスがその手を見れば、穏やかな笑みをたたえた何者かがそこにいる。

「おつかれさま、王子。訓練のあとはきちんと体を休めてください。ささやかですが、清らかな水をお持ちしました」

 男性とも女性ともとれない中性的な顔立ちと、大人とも子供ともとれない体つきはどこかで見た事がある。冥府の最深部であるタルタロスの中でも厳重に閉ざされた冥王ハデスの館にいる上、見た目が人型を保っているのだから彼、あるいは彼女が何かしらの神格なのは間違いないだろう。
 以前出会った事があるようにも思える。少なくとも初対面ではないはずだ。だがどうにも思い出せない。 歯がゆい気持ちを抱きながら、ザグレウスは器を取り清らかな水を飲み干した。ちょうど喉がかわいているところだったのだ。

「あぁ、ありがとう。ごちそうさま」

 だが、一体誰だろう。
 冥府は長らく停滞している。ここにある顔ぶれも久しく変わっていない……少なくともザグレウスが自らの存在を認識してから今まで、多少増えたり減ったりはあるし人間の魂は消えていく事もあったが神格や咎人が大きく入れ替わる事はなかった。
 冥府で罰を受けるほどの罪となるとかなり大きな事をしでかした場合か、極端に冥王ハデス……ザグレウスからすると父王の不興を買ったかのいずれかだ。
 陰気で孤独な父王だが彼が怒りにかられ衝動的に罪を与えるのはこれで案外珍しい。もしそうった罪人であれば必ず顔は覚えているのだが。

「疲れているのなら果物もお持ちしましょうか? 今日は久しぶりに王子と、アキレウスにも会えて……あぁ、アキレウスがこの館で貴方の師となってからもう随分たちますが、王子の武術は見違えるほど上達しましたね。私は武芸について素人同然。ティターンの戦いにも出ていなかった力なき神ですが、王子が強くなったのはよくわかりますよ」

 だが、相手はこちらを良く知っているらしい。 代わり映えのしない冥府で神にしても罪人にしても知らない顔などないと思っていたのだが、やはりどうにも思い出せない。
 ザグレウスはすこし気まずい思いをしながら、彼とも彼女ともわからぬ相手と対峙した。いきなり誰だと聞くのは不躾だろう。だから話しているうちに思い出せればと、そう思ったのだ。
 このあたりは、神々といえどひどく人間臭いところがあった。

「でも、まだまだだよ。師匠についていくのがやっとだ。まだ師匠だって本気は出していないだろう」
「そうですね、地上にいた頃のアキレウスはそれはそれは勇猛果敢な戦士でしたから。最も、すこしばかりの気難しさと無謀さが彼に数多の悲劇と短命の業を与えてしまったのですが……」

 どうやら相手は師であるアキレウスが生前英雄と呼ばれていた頃も知っているらしい。
 だとすると冥府でも相当古い神だと思うのだが、やはりどうにも覚えがない。相手はこちらの事を古くから知っているようではあるのだが。

「えぇと、地上にいた頃の師匠を知ってるのかい?」
「はい。直接会った事などはありませんが、その名も武勇も冥府にとどろいておりましたから。ご存じの通り、冥府は戦争がおこると忙しいですからね」
「だったら、師匠がなんであんなに強いか知ってる? このままじゃ永遠に師匠には敵わなそうだ」

 名前を思い出す事はできない。だが以前から知り合いだった気がするこの神に、ザグレウスは自然と親しげに話していた。
 あるいは以前この神から「王子なのだから堅苦しくなくても良い」と言われたような気がするが、それさえも曖昧だ。
 彼、あるいは彼女はザグレウスの質問にすこし考える素振りを見せた。

「そうですね、地上にあった頃のアキレウスは地上の人間がもつ宿業、定命という短い命を存分に輝かせるという強い目的がありました。あるいは野心と置き換えてもいい彼の強い向上心と不死の肉体をもつという強みとが彼を無謀ながら強い英雄にしていったのだろうと思います」
「なるほど、師匠はあらゆる刃を受け付けない体をもっていたけど寿命がない訳ではないから、限られた時間で強くなるしかなかった……」
「アキレウスの場合は、武勇によって得られるものが多かったのも大きいでしょうね。広大な領地、豪奢な装飾品、酒や食事、寝所においての快楽……そういった人間の欲望は、強い力を生むのです」
「欲望か……」

 ザグレウスは自分の手を見る。
 停滞した冥府で怠惰な時間を過ごすのに飽き飽きしていた所に、師としてつれてこられたのがアキレウスだった。
 父王ハデスの思惑としては、素行不良の息子がすこしでも礼節を重んじれば良いと。あわよくば冥府をうろつく亡者たちの掃除でもしてくれれば良いとでも思って武術を習わせたのだろうが、それまで別段やる事もなくただ「王子」や「若様」とどこかよそよそしい扱いしか受けていなかったザグレウスにとって、師であるアキレウスの強さと厳しさは新鮮だった。
 すぐに武術にものめり込み、最近は練習と称してあちこちの壁や床を破壊しつくして父王の書類を増やしているのだが父に嫌味を言われるようになった今の方が以前より充実しているように思えた。
 少なくとも以前のザグレウスは父に対して、何ともいえない息苦しさばかりが勝りろくにものも言えないような神だった。だが今は対等に言い返し皮肉なども口にしたりする。
 ハデスはそれを素行の悪い不良息子のあきれた所業だと思い、以前より息子がずっと遠くにいったように思っていただろう。
 だが実際の親子としてみれば子が親に何も言えず鬱屈した思いだけを胸に抱いて口をつぐんでしまうより、互い言い合える方がよほど「まとも」な状態なのだが、子を多くもたぬハデスにはそういった加減もわからないのだろう。

 「つまり、何か求めるものがあればもっと強くなれるって事かな?」
「そうですね、もっと強い相手と戦いたい。この冥府を守りたい。あるいはこの冥府を支配したい。そんな思いが強ければ、きっとより力を求める……人間の体は限界があります。生まれもっての才能や寿命で、いくら渇望しても得られる力は微々たるものですから。ですが王子は不老にて不死なるもの。望み、求めれば得られる事でしょう」
「うーん、望みかぁ。考えた事なかったからなぁ……」

 ザグレウスは椅子に腰掛けたまま頬杖をつく。ずっとハデスの館に守られてきた、神々のなかでも年若いザグレウスはほとんど世間を知らずに育っており、冥府では欲しいものに不自由しない生活をしている。 それ故に強く何かを求めるという気持ちにはなれないでいた。
 そんなザグレウスの心を見透かしたかのように、彼あるいは彼女は静かに微笑むとまるで重要な秘密でも告げるかのように口を開いた。

「……そうですね、例えば天上を目指すのはどうでしょう。冥府から出る、というのは」
「冥府から? あぁ、案外面白いかもな。何せほとんどこの館から出たことないし」
「あなたのお父上は長らく親類であるオリュンポスの神々と親交を断っておりますから、この家に来るのは冥府の住人ばかりですからね」
「オリュンポス……」
「えぇ、あなたのお父上はオリュンポス……天上の神々の長たるゼウス、その兄です。でもあなたはそれをきちんと聞かされてもいない。叔父たちのことも、従兄弟のことも、そして母のことも……」
「母? いや、母ニュクスはご健在だ。今でも館で父の手伝いを……」
「あなたの母君は、ニュクス様ではありませんよ」

 まさか、と叫びそうになるザグレウスの唇を彼、あるいは彼女は人差し指で留める。そして静かに、と小さな声で告げた。

「……どうでしょう。あなたは、あなたの事を何も知らない。秘匿された冥府の事も、罪人が何故罪人かも。その秘密を曝くのは、貴方の力になり得ませんか?」

 もし全てが本当なら、それは力を求める充分な理由になり得ただろう。 だが果たしてそれは真実なのだろうか。もし真実だとしたら、それは父王ハデスが秘匿しておきたかった話に違いない。 それを容易く口にしたら、この神もただでは済まないのではないか。

「ご心配なさらず。私は何を言ってもいいのです、この冥界でも地上でも天上においても、私のことを覚えていられるものはいないのですから」

 彼、あるいは彼女は空になった器をザグレウスから受け取ると、音もなく廊下を歩きはじめる。 すでに背中しか見えないその姿は、何故だろう。彼が、あるいは彼女がどんな顔をしていたのかさえ思い出す事ができなくなっていた。

「私の言葉も、姿も、全て泡沫のようなもの。一時触れたとしても、すぐに煙のように消えてしまう…...ですが私の言葉も姿も全て忘れられたとしても、その心に燃えるような闘志が宿ったのならそれは決して消える事はありません。ごきげんよう、王子。あなたが強く賢い神になるよう……」
「ま、まて。待ってくれ、キミの名前は……」
「私の名は……」

 レーテ。秘匿、忘却を意味する名前はあるいは真実でもある。
 だが存在が忘却である彼、あるいは彼女の名前や姿を覚えておき、接した記憶を保っているのは極めて難しいのだ。
 だからレーテは許される。真実を語り、秘匿された事実を暴き出す事を。そのかわり、誰もレーテを覚えていないのだから。

「さぁ、どうするザグレウス。訓練はもう終わりにするか?」

 アキレウスの声を受け、ザグレウスは振り返る。
 今し方まで誰かと話していた気がするが、どうにも覚えていない。だが何故だろう、今はただ強くなりたいと思ったから。

「いえ、師匠。もうすこし稽古をお願いします」

 ザグレウスはまっすぐに師であるアキレウスを見据える。その目には強い闘志と力を渇望する戦士の色が輝いていた。

 彼が冥府を脱するため戦いに挑むのは、もうすこし先の話になる。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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