忍者ブログ

インターネット字書きマンの落書き帳

   
元カレが黒沢な世界線の山ガスを保護しているダーマツの世界
俺は、元カレが黒沢という山ガスの概念がだ~いすき♥
その上で、松田に対して惹かれてしまう山ガスもだぁ~い好き♥
それでも松田に元カレ時代の黒沢を重ねてしまう山ガスが、特にだぁ~い好き♥
(ここまで自己紹介)

なので書きました。
松田の家に転がり込んで生活を再建していて、松田に世話になって、好きでもある。
でもその好きにいつも元カレの黒沢を重ねてしまうタイプの山ガスです。

松田は山ガスの世話をしているけど付き合ってない距離感……。

キミも「元カレの黒沢」概念のこと好きにならないか?
今日から好きになろうぜ!



『面影と同じように重なる夢を見る』

 山田はノートパソコンを閉じると、テーブルに突っ伏した。

 何とか今日の作業は終わった。まだ完成ではないが、提出したから返事待ちになる。
 急ぎの仕事はないから、一段落ついたといってもいいだろう。

 まったく、全然思うように進まない仕事だった。
 細かい修正ばかり五月雨式に来て、修正をした後に新たな修正が入るタイプの依頼は面倒くさい。
 一度、修正案を出したのなら修正してから指示をしてくれたほうがよっぽどありがたいのだが。
 この仕事が終わったら、もうここからの依頼は受けるのをやめよう。
 支払いも渋い内容で、これだけの修正を受け付ける理由なんてない。

 テーブルに突っ伏したまま大きくため息をつく山田の前に、愛用のマグカップが置かれる。
 甘やかな香ばしさが鼻腔をくすぐった。

『――あんまり無理するなよ』

 優しく、柔らかく、落ち着いた声。
 モノトーンで統一されたシンプルな、だが肌触りのいい服。
 育ちがよく上品な笑顔――。

「おう、終わったんか?」

 脳裏によぎる映像を、無粋な銅鑼声が断ち切る。
 顔を上げれば、松田が心配そうにこちらを見ていた。
 ここ数日、ずっとパソコンに向かっていたから仕事がつまっているのは察していたのだろう。

「うん、まぁ、だいたい。ありがとね、松田さん」

 山田はのろのろ体を起こすと、マグカップを自分のほうに寄せる。
 松田はテーブルにさらに砂糖とミルクを置くと

「あんまり無理したらあかんで」

 そうとだけ言って、部屋の奥に引っ込んでいった。
 山田は砂糖とミルクをたっぷり入れ、コーヒーをすする。疲れた体に、砂糖の甘みが広がっていった。

 コーヒーの香りで思い出したのは、もう何年も前の記憶。
 自分の隣にまだ、黒沢がいた頃の記憶だ。
 黒沢はよく、コーヒーを入れてくれた。
 凝り性だった黒沢は、お気に入りのコーヒー店から豆を買い付けていて、わざわざ豆をひいてコーヒーを入れてくれたのだ。
 ナッツを炒ったような香りが漂ってくると、また黒沢のコーヒーが飲めるのだと思えて、それだけでうれしかった。

 あの時の、優しい声。優しい目。優しい顔――。

 山田は首を小さく振り、コーヒーを飲み下す。

 だめだ。
 まだ、黒沢のことを思い出してしまう。

 松田の優しさに、黒沢の背中を重ねてしまう。

 自分の全てを受け入れ、許し、欲しい言葉はすべて与えてくれる。
 見た目も性格も声も、すべてが違う。
 それなのに、松田に黒沢の面影を見るのは、二人とも似た気質があるからだろう。

 あるいは、山田の求めるものがいつも、優しさと享受なのかもしれないが――。

「あー、もう。ほんと、僕ってサイテー……」

 カップを置き、山田はつぶやく。
 松田は優しい。口は悪いがよく山田を気遣ってくれるし、過去の傷を知った上で、それを背負うならと条件付けはあったが、許しを与えてくれている。
 行き場がなく路頭に迷いそうだった山田を引きとどめてくれたのが松田で、今でもその優しさに甘えることで何とか生活を続けている。
 彼がいなければ、自分はきっとだめになっていた。

 恩人だ。愛しいと思う。好意に、何かしら思いを返したいとも。
 だけど、自分に返せるものなんて何もない。
 松田の家に居候して何とか生活しているが、今の仕事では一人暮らしすらできそうにないから金や物は渡せない。
 気の利いた言葉でも言えればいいのだろうが、心のない美辞麗句が上っ面だけのお世辞であることを見抜けないほど、松田も馬鹿ではない。

 かといって、本心をさらけ出し素直な言葉なんて、恐ろしくてとても言えそうにはない。

 ――好きだから、好きだといったらきっと怖がられる。嫌われる。気持ち悪がられる。
 今の距離感なら松田さんは僕を許容し、置いていてくれるけど、好きになってしまったと告げたら、きっといやな気分になるだろう。
 松田さんの人生を変えてしまったのは、僕なんだから。

 そのくせ、未だに黒沢さんの面影を探して、松田さんの仕草にそれを重ねて、黒沢さんに愛された記憶をなぞりながら、松田さんもそうしてくれたらなんて考えてる。
 黒沢さんのこと、引きずってるのに松田さんのこと好きだなんて、僕が言うのは厚かましい。

 山田は無言のまま、目の前のパソコンをバッグにしまう。
 着替えも荷物も、キャンプをする時に使っていた大きめのリュックに全部つめこんでゆるゆると立ち上がる。

 僕は、最低だから、このまま松田さんの時間と人生を食い潰して生きていてはいけない。
 それに、黒沢さんと別れたときに、決めていたじゃないか。

 この思い出だけで生きていこうって。
 あの時に、もう何もいらないって思っていたんだから、新しく手に入れるなんて図々しい。

 だから、出ていこう。
 少ないけど、今まで払ったお金をおいて。
 しばらくは、ネットカフェでも転々として……何なら住み込みの仕事とか、そういうのも探せばいい。

 一人だったら、何とかなるだろうから。

「おい、待てや」

 こっそり出て行くつもりだったのに、気づいたら松田が立っていた。

「大仰な荷物抱えて、どこ行くつもりや」

 言葉がすぐに出ない。
 ちょっと、コンビニ。なんていっても無駄だろう。

「ごめ、松田さ……僕、迷惑ばかりかけて。何も、できないから……」
「はぁ? 何や、今さらやな。ちょっとは上手く行き始めとるんやろ? もうちょっとやってみたらえぇん違うか」
「ん、でも……あんまり、優しくされても。僕には、何もないし……恩返しとか、そういうのもさ。無理だから。これ以上、松田さんの人生とか。時間とか、僕がもらっちゃったら、悪いし……」

 しどろもどろな説明に、松田は軽く額をはじく。

「アホか? おまえからお返しなんて、最初から期待しとらんわ。だいたい、何や恩返しって。機織りでもするつもりか?」
「で、でも……」
「俺は、おまえがフツーに飯くって、寝て、風呂入って。そうしてるだけで、充分や。俺から逃げんと、しっかり俺の前で更生するんやな」

 松田はぐい、とリュックを引っ張り山田のことを引き戻す。

「でも、僕……」

 山田は顔をあげ、慌てて松田のほうを見た。

「僕ってさ、最低なんだよ。松田さん、優しいからつけ込んで……今日も、気を遣ってコーヒーとか入れてくれたのに。そういうので、まえ、好きだった人のこと思い出して、比べたりする。ほら、ずるくて、卑怯で、最低だから。だから……」

 必死だった。泣きそうになっていたとも思う。
 しかし松田は自分の小指を耳の穴につっこんで、耳垢を掻き出す仕草をすると

「知っとるわ、おまえがどうしようもない奴なのも織り込み済みでこっちは預かっとるんやで。だから……その、何や。勝手に、どっか行くなや」

 そうして、今度は山田の手を引く。

『俺のそばにいてくれるよな。おまえは、どこにもいかないでくれ』

 時々、寂しそうになり山田の体を抱きしめる黒沢のぬくもりが体を包む。
 松田はそんなことをするような相手でも、そういう関係でもないのだが。

「ほんと、いいの? 僕、今も昔の人のこと思い出してたよ」
「何度も言わすなや。かまわんわ。おまえが、どんな風に生きておっても……いま、俺んとこにいる。それだけで、充分や」

 それって、好きってことかな。
 好きってことだったらいいんだけど。

 内心のつぶやきをぐっと飲み込んで

「仕方ないな。そんなに僕が大事なら、まだ一緒にいてあげる」

 笑いながら、リュックを下ろす。

 この人は、黒沢さんに似てる。
 だけどやっぱり、黒沢さんとは違う。

 黒沢さんとは、耐えられなかった。
 松田さんは、罪から遠い人なのも、あるのだろうと思うけど――。

「おう、だったらそろそろ寝ろや。夜中にもぞもぞ動かれて、いちいち起きるのも面倒やしな」
「そう? それなら、一緒に寝ちゃおうかな。僕が逃げないよう監視できるし、そのほうがいいんじゃない」
「……せやな」

 と、そこで松田は山田の体を抱きかかえ得ると、自分のベッドにつれて落とす。
 ぼすんと体が弾んで、柔らかなベッドに沈んだ。

「えっ、いいの? 松田さん、一緒に寝てくれる? 僕と?」
「当たり前や。こっちは明日仕事やで。これ以上、おまえに振り回されるくらいなら……」

 ベッドの中で、強く抱きしめられる。
 かすかな煙草のにおいと、昼間につけてた香水のにおいが混ざり合い、喉の奥にしみた。

「……こう、しててやるから。もう寝とき」

 暖かな体が、肌が、吐息が、すべて近くにある。
 優しく、愛おしい松田の体。大きくて暖かく、かすかな愛をも感じるのに――。

『こうしているほうが、眠れるか?』

 面影がまた重なる。

 黒沢さんのこと、まだ忘れられてない。
 松田さんの中に、これからも、何度も黒沢さんを見てしまうかもしれない。

 それでも、松田さんは、僕のこと許して、愛してくれるかな。

 繊細な不安と、かすかな期待を抱きながら、山田はそのまま眠りに落ちる。
 目が覚めた時、どうか。

 どうか、愛する人が隣にいてくれますように。
 図々しいとわかっていても、それを願わずにはいられなかった。

拍手

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
カレンダー
07 2026/08 09
S M T W T F S
1
3 4 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
プロフィール
HN:
東吾
性別:
非公開
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
Copyright ©  -- くれちきぶろぐ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]