インターネット字書きマンの落書き帳
【襟尾とあやめと写真のはなし(パラノマ二次創作)】
襟尾純と灯野あやめが出る話です。
作中では特に知り合いって訳じゃないんですけど、この話では知り合いみたいなテイですすめておりますが、バグではなく仕様です。
作中であやめのアレコレソレが暴露されているので、ゲームをプレイしてから楽しく見てね♥
今回は、「趣味でカメラはじめよーっと、被写体欲しいから被写体になってよ」って襟尾があやめにお願いして、あやめは「えー嫌だけど仕方ないなー」って、でも頼まれたら全力で頑張って写真とらせたよーみたいな話ですよ。
カメラの話と可愛くないってわかってる女性の話とかそういうのです。
二次創作はオレの好きなもの全部盛りにしていいと聞いたので盛りました。
オレ大盛り! オレ次郎です!
pixiv用にもまとめてみました。 → pixiv版
pixivの作品は気まぐれに消してしまうからいつまであるかわからないけどま、可愛いオレのすることだから許してください
web用もあります → web版
webは面倒だからサイトが消えるまでは残ってるんじゃないかと思います。
作中では特に知り合いって訳じゃないんですけど、この話では知り合いみたいなテイですすめておりますが、バグではなく仕様です。
作中であやめのアレコレソレが暴露されているので、ゲームをプレイしてから楽しく見てね♥
今回は、「趣味でカメラはじめよーっと、被写体欲しいから被写体になってよ」って襟尾があやめにお願いして、あやめは「えー嫌だけど仕方ないなー」って、でも頼まれたら全力で頑張って写真とらせたよーみたいな話ですよ。
カメラの話と可愛くないってわかってる女性の話とかそういうのです。
二次創作はオレの好きなもの全部盛りにしていいと聞いたので盛りました。
オレ大盛り! オレ次郎です!
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pixivの作品は気まぐれに消してしまうからいつまであるかわからないけどま、可愛いオレのすることだから許してください
web用もあります → web版
webは面倒だからサイトが消えるまでは残ってるんじゃないかと思います。
『かわいく無いってわかっている』
風呂上がりの濡れた髪を乾かしながら灯野あやめはテーブルにおかれた封筒を手に取った。
先日、父親である津詰徹生から頼まれて彼の部下である襟尾純に撮ってもらった写真が出来上がったというので一昨日、あやめの元へ届いたものである。
『部下がカメラ買ったけど被写体がいないっていうからよ、悪いがお前、頼めねぇか』
父である津詰はしばらく世間話をした後、そう切り出したのはよく覚えている。
母と不仲で決別した津詰はあやめとの関係も当然のように悪く、今は用事が無いと電話などしてこないのだがその時の用事が「部下の被写体になってほしい」というものだった。
もちろん、本気ではないことはわかっている。自分と話したい口実で部下のカメラを持ち出したのだろうというのもだ。
だがもしこれを引き受けたら津詰はどんな気分なのだろう。自分の部下とはいえ知らない男に写真をとられるなど、あのお堅い父親はどんな思いでいるのだろう。
想像するだけで面白いと思ったあやめは億劫そうに返事をし、休日襟尾と会う事になったのだ。
約束の日、公園に現れたのはあやめがイメージする刑事とは違う柔和な雰囲気の青年だった。
彼は気取った様子も見せなければ買ったカメラの自慢もせず、『何処がよさそうかな』とか『キミはこの公園で好きな場所とかある? オレはあんまりこういうの疎くって、ほら、素人だから』と色々話しかけてきたので気を遣わず済んだことが有り難く思えたのは、こういう場では女が男に話しかけ男をもちあげるのが当然、といった輩の相手を多くしてきたからだろう。
どうしてカメラを始めたのか聞いた時、彼は屈託ない笑顔を浮かべていた。
『最近、同期の連中も学生時代の友人もだいたい所帯をもっちゃってね。一人でもできる趣味でも増やそうかと思って、それでカメラ。はは、安易だろ? でもオレくらいの歳になると一緒に連んで遊べる仲間って段々減ってきちゃうんだぜ』
首から提げていたのはピカピカの一眼レフカメラだ。ファインダーを覗く姿も覚束なく、カメラを構えるのには余計な力が入っている。最初のフィルムを入れる時はあやめが横から指示しないときちんと入れられない程だったので、本当に始めたばかりだったのだろう。
『カメラに使われているみたいですよ』
あまりにへっぴり腰だったからチクリ嫌味を言ってやれば、彼は変わらぬ笑顔のまま
『まず形からって言うだろ。それに最初、しっかり投資しておけばあんなにお金かけたんだからやらなきゃ損だろって気持ちになるし。オレの場合、そうでもしないと趣味で何かやろうって気持ちにならないんだよ』
そう、はっきりと言っていた。
写真の合間に、休日なんてろくに無いことやたまの休みでは殆ど寝て過ごす事。仕事にかまけている間で周囲の人間は次々と結婚し置いていかれている気持ちになるがそれでも仕事は充実していて楽しいのだと話していた気がする。
詳しい内容は覚えてないが、退屈ではなかったのだけは何となく覚えていた。
『結婚はしないんですか』
一人の趣味を模索し、所帯をもつ同期や友人が多いのを悲しがる彼にそう聞けば、襟尾は困ったように笑っていた。
『周りの人間は結婚しろって言うけど、いまは考えてないかなぁ。恋人もいないし仕事も忙しいしね。ほら、結婚ってやっぱり好きな相手を幸せにしたいからするもんだろ? そうなると、今の仕事で家族まで幸せにする自信なんてとてもないからさ』
よどみなく答える姿に嘘は見られない。
正直なところ、父の部下で公園に呼び出されたのだから口説かれたりするのではとも思っていたのだが襟尾にはその気が無いようで撮影中も下心が透けて見えるような発言は一切なかったのだから、結婚は自分の立場を守るためでもなければ義務でもなく、家庭を顧みる暇がないのならやたらにするべきではないと思っているのは本心なのだろう。
あるいは襟尾の上司でありあやめの父でもある津詰が結婚生活に失敗しているからというのも幾分か彼を考えさせているのかもしれない。
たとえ周囲が結婚しろとせっついても目の前に家庭を作れなかった男がいたら二の足を踏むのも当然だろう。
実際のところ、津詰はあやめにとっていい父親ではなかった。
遊園地や動物園などに連れて行ってもらった記憶はなかったし、家族旅行など当然一度だってない。
そもそも日曜日に津詰が家にいた事がないのだから家族サービスなど無くて当然で、どこかに行くのは殆ど母と一緒だったし運動会も授業参観も進路指導もすべて母が出ており、幼少期のあやめが記憶している父の姿は蒲団で寝転ぶ姿ばかりだった。
しかもたまに起きていると自分は昼までダラダラ寝ているくせに、やれアレはするなコレはするな真面目に生きろと説教してくるのだから面倒くさい。
忙しすぎて家族にかまける暇がないのなら、家庭なんて作るものじゃない。
子供に寂しい思いをさせておいて父親面をするんじゃない。
小さい頃から何度もそう思ってきた愛憎は今でもあやめの胸に渦巻いて消える事はなかった。
もし襟尾が「刑事は家庭などもつものではない」と考えているのなら、勢いで家庭をもちそれを守れず壊した津詰よりマシな男なんだろう。
そんな事を考えながら不器用なカメラマンの素人撮影会に付き合った日をぼんやりと思い出しながらあやめ髪にタオルを巻き封筒を開け中を見た。
薄手のシートに包まれた写真は10枚程あっただろう。
公園を背景に笑顔をみせるあやめ。噴水をまえに手を広げてみせたり、まわりにあつまる鳩とはしゃぐように笑うあやめ。鞄を持ちアイドルのよなポーズをとるあやめ。素人がぎこちないポーズで撮ったにしては綺麗に写っているだろう。
カメラを買ったばかりにしては充分に上手い写真だがどれも似たり寄ったりのつまらない写真だった。
あやめはこれまでも何度かカメラのモデルを務めてきた。
新しくカメラをかった、始めたから被写体になってほしいと頼んでくる男は何人もいたし、皆が一様に可愛くて無邪気なイマドキの女子大生を撮りたがっているのがハッキリと伝わっていた。時にはカメラを理由にホテルに誘おうという下心丸出しの男もいた。
みんな同じだ、女に求めるのは愛嬌ばかり。女性の社会進出だとか強い女性の時代が来るとか世間ではそう言っていても、男がほしがるのは可愛くて男を甘えさせる優しい女なのだ。
それがわかっていたから、あやめも期待にこたえるよう笑顔を見せて過度なくらいに可愛いポーズをとって愛嬌をふりまいた。服だって自分が好きだから選んだものではない。女子大生ってこうなんだろう、と言われる服を選んだものだ。
それを皆待ってましたという風にシャッターを押すのだからどの写真も似たりよったり、面白い写真になるはずもない。
そう思っていたあやめの手が止まったのは、ベンチに座る自分をとらえた写真だった。
ふてくされたように頬杖をつき、枯れ葉が舞い散る公園の向こうを見る写真はいつ撮られたものだか分からない。おそらく、休憩中に襟尾が撮った写真だろう。
おおよそ可愛い女子大生とは言い難い不機嫌そうな横顔は、可愛くない顔だというのに嫌味なくらいに綺麗に撮れていた。
「やだ、こんな写真撮るなんて……」
つまらなそうにしてる。愛想もよくないし、性格も悪そうだ。他人、とくに男を見下してるし男という生き物に心底呆れている、その癖にまだ期待を捨てきれないから何度でも落胆している。下心満載で近づいてくる男は辟易しているくせに下心満載の男が好きそうな服ばかり選んで愛嬌を振りまいてしまうのは、今どきの女子大生がみんなそうだからそれに習っているだけだ。
口うるさくアレをしろ、これをしろという男はますます好きではない。だけど大嫌いだからこそ、簡単に利用できる。 だから面倒くさいけど連んでやる価値はある。
打算ばかりで本心を見せない癖にそれを不満に思っている、嫌な女の顔をしていた。
実際、襟尾に付き合って写真を撮らせたのも大嫌いな父親を蔑みたい気持ちがあったからだ。父親の部下もまた自分が津詰の娘だから、女性だから、女子大生だからという理由で可愛い写真を求め多少綺麗にとれた写真を送ってくるようなつまらない人間なのだろうと思い、実際届いた写真がつまらないものだったら「やはりその程度の男しか父には従わないのだ」と馬鹿にしたい気持ちがあったからなのだ。
それだというのにこの写真は、ちゃんとあやめを撮っている。
本音を見せるのが怖くて、だからつまらない事をして気を引いて、相手に幻滅することで自分を守ろうとする「つまらないあやめ」を襟尾はちゃんと見ていたのだ。
「あいつ、最低。全然可愛くない」
あやめはそう呟いて、写真を部屋の電灯に照らす。
可愛げはない、だが悪くない自分の写真だ。
襟尾はどんなつもりでこの写真を撮ったのだろう。彼は何を思ってファインダーを覗き、こんなふてくされたあやめの顔を残そうと思ったのだろうか。
心がざわつく。会って話をし、実際聞いてみたい。写真を見てそう思ったのは初めてのことだった。
「……バカみたい」
写真を手にしたままあやめはベッドへ寝転がる。
何を考えているのだろう、たまたま一枚だけ可愛くない写真があっただけだ。襟尾は話した印象だと楽観的であまり深く物事を考えていない風に見えたから、ただノリと雰囲気で撮っただけに違いない。
そう思っても、何故か気になる。
あやめは手にした写真をもう一度眺める。
写真のなかにいるあやめは相変わらずつまらなそうにベンチの向こうから秋空を眺めていた。
風呂上がりの濡れた髪を乾かしながら灯野あやめはテーブルにおかれた封筒を手に取った。
先日、父親である津詰徹生から頼まれて彼の部下である襟尾純に撮ってもらった写真が出来上がったというので一昨日、あやめの元へ届いたものである。
『部下がカメラ買ったけど被写体がいないっていうからよ、悪いがお前、頼めねぇか』
父である津詰はしばらく世間話をした後、そう切り出したのはよく覚えている。
母と不仲で決別した津詰はあやめとの関係も当然のように悪く、今は用事が無いと電話などしてこないのだがその時の用事が「部下の被写体になってほしい」というものだった。
もちろん、本気ではないことはわかっている。自分と話したい口実で部下のカメラを持ち出したのだろうというのもだ。
だがもしこれを引き受けたら津詰はどんな気分なのだろう。自分の部下とはいえ知らない男に写真をとられるなど、あのお堅い父親はどんな思いでいるのだろう。
想像するだけで面白いと思ったあやめは億劫そうに返事をし、休日襟尾と会う事になったのだ。
約束の日、公園に現れたのはあやめがイメージする刑事とは違う柔和な雰囲気の青年だった。
彼は気取った様子も見せなければ買ったカメラの自慢もせず、『何処がよさそうかな』とか『キミはこの公園で好きな場所とかある? オレはあんまりこういうの疎くって、ほら、素人だから』と色々話しかけてきたので気を遣わず済んだことが有り難く思えたのは、こういう場では女が男に話しかけ男をもちあげるのが当然、といった輩の相手を多くしてきたからだろう。
どうしてカメラを始めたのか聞いた時、彼は屈託ない笑顔を浮かべていた。
『最近、同期の連中も学生時代の友人もだいたい所帯をもっちゃってね。一人でもできる趣味でも増やそうかと思って、それでカメラ。はは、安易だろ? でもオレくらいの歳になると一緒に連んで遊べる仲間って段々減ってきちゃうんだぜ』
首から提げていたのはピカピカの一眼レフカメラだ。ファインダーを覗く姿も覚束なく、カメラを構えるのには余計な力が入っている。最初のフィルムを入れる時はあやめが横から指示しないときちんと入れられない程だったので、本当に始めたばかりだったのだろう。
『カメラに使われているみたいですよ』
あまりにへっぴり腰だったからチクリ嫌味を言ってやれば、彼は変わらぬ笑顔のまま
『まず形からって言うだろ。それに最初、しっかり投資しておけばあんなにお金かけたんだからやらなきゃ損だろって気持ちになるし。オレの場合、そうでもしないと趣味で何かやろうって気持ちにならないんだよ』
そう、はっきりと言っていた。
写真の合間に、休日なんてろくに無いことやたまの休みでは殆ど寝て過ごす事。仕事にかまけている間で周囲の人間は次々と結婚し置いていかれている気持ちになるがそれでも仕事は充実していて楽しいのだと話していた気がする。
詳しい内容は覚えてないが、退屈ではなかったのだけは何となく覚えていた。
『結婚はしないんですか』
一人の趣味を模索し、所帯をもつ同期や友人が多いのを悲しがる彼にそう聞けば、襟尾は困ったように笑っていた。
『周りの人間は結婚しろって言うけど、いまは考えてないかなぁ。恋人もいないし仕事も忙しいしね。ほら、結婚ってやっぱり好きな相手を幸せにしたいからするもんだろ? そうなると、今の仕事で家族まで幸せにする自信なんてとてもないからさ』
よどみなく答える姿に嘘は見られない。
正直なところ、父の部下で公園に呼び出されたのだから口説かれたりするのではとも思っていたのだが襟尾にはその気が無いようで撮影中も下心が透けて見えるような発言は一切なかったのだから、結婚は自分の立場を守るためでもなければ義務でもなく、家庭を顧みる暇がないのならやたらにするべきではないと思っているのは本心なのだろう。
あるいは襟尾の上司でありあやめの父でもある津詰が結婚生活に失敗しているからというのも幾分か彼を考えさせているのかもしれない。
たとえ周囲が結婚しろとせっついても目の前に家庭を作れなかった男がいたら二の足を踏むのも当然だろう。
実際のところ、津詰はあやめにとっていい父親ではなかった。
遊園地や動物園などに連れて行ってもらった記憶はなかったし、家族旅行など当然一度だってない。
そもそも日曜日に津詰が家にいた事がないのだから家族サービスなど無くて当然で、どこかに行くのは殆ど母と一緒だったし運動会も授業参観も進路指導もすべて母が出ており、幼少期のあやめが記憶している父の姿は蒲団で寝転ぶ姿ばかりだった。
しかもたまに起きていると自分は昼までダラダラ寝ているくせに、やれアレはするなコレはするな真面目に生きろと説教してくるのだから面倒くさい。
忙しすぎて家族にかまける暇がないのなら、家庭なんて作るものじゃない。
子供に寂しい思いをさせておいて父親面をするんじゃない。
小さい頃から何度もそう思ってきた愛憎は今でもあやめの胸に渦巻いて消える事はなかった。
もし襟尾が「刑事は家庭などもつものではない」と考えているのなら、勢いで家庭をもちそれを守れず壊した津詰よりマシな男なんだろう。
そんな事を考えながら不器用なカメラマンの素人撮影会に付き合った日をぼんやりと思い出しながらあやめ髪にタオルを巻き封筒を開け中を見た。
薄手のシートに包まれた写真は10枚程あっただろう。
公園を背景に笑顔をみせるあやめ。噴水をまえに手を広げてみせたり、まわりにあつまる鳩とはしゃぐように笑うあやめ。鞄を持ちアイドルのよなポーズをとるあやめ。素人がぎこちないポーズで撮ったにしては綺麗に写っているだろう。
カメラを買ったばかりにしては充分に上手い写真だがどれも似たり寄ったりのつまらない写真だった。
あやめはこれまでも何度かカメラのモデルを務めてきた。
新しくカメラをかった、始めたから被写体になってほしいと頼んでくる男は何人もいたし、皆が一様に可愛くて無邪気なイマドキの女子大生を撮りたがっているのがハッキリと伝わっていた。時にはカメラを理由にホテルに誘おうという下心丸出しの男もいた。
みんな同じだ、女に求めるのは愛嬌ばかり。女性の社会進出だとか強い女性の時代が来るとか世間ではそう言っていても、男がほしがるのは可愛くて男を甘えさせる優しい女なのだ。
それがわかっていたから、あやめも期待にこたえるよう笑顔を見せて過度なくらいに可愛いポーズをとって愛嬌をふりまいた。服だって自分が好きだから選んだものではない。女子大生ってこうなんだろう、と言われる服を選んだものだ。
それを皆待ってましたという風にシャッターを押すのだからどの写真も似たりよったり、面白い写真になるはずもない。
そう思っていたあやめの手が止まったのは、ベンチに座る自分をとらえた写真だった。
ふてくされたように頬杖をつき、枯れ葉が舞い散る公園の向こうを見る写真はいつ撮られたものだか分からない。おそらく、休憩中に襟尾が撮った写真だろう。
おおよそ可愛い女子大生とは言い難い不機嫌そうな横顔は、可愛くない顔だというのに嫌味なくらいに綺麗に撮れていた。
「やだ、こんな写真撮るなんて……」
つまらなそうにしてる。愛想もよくないし、性格も悪そうだ。他人、とくに男を見下してるし男という生き物に心底呆れている、その癖にまだ期待を捨てきれないから何度でも落胆している。下心満載で近づいてくる男は辟易しているくせに下心満載の男が好きそうな服ばかり選んで愛嬌を振りまいてしまうのは、今どきの女子大生がみんなそうだからそれに習っているだけだ。
口うるさくアレをしろ、これをしろという男はますます好きではない。だけど大嫌いだからこそ、簡単に利用できる。 だから面倒くさいけど連んでやる価値はある。
打算ばかりで本心を見せない癖にそれを不満に思っている、嫌な女の顔をしていた。
実際、襟尾に付き合って写真を撮らせたのも大嫌いな父親を蔑みたい気持ちがあったからだ。父親の部下もまた自分が津詰の娘だから、女性だから、女子大生だからという理由で可愛い写真を求め多少綺麗にとれた写真を送ってくるようなつまらない人間なのだろうと思い、実際届いた写真がつまらないものだったら「やはりその程度の男しか父には従わないのだ」と馬鹿にしたい気持ちがあったからなのだ。
それだというのにこの写真は、ちゃんとあやめを撮っている。
本音を見せるのが怖くて、だからつまらない事をして気を引いて、相手に幻滅することで自分を守ろうとする「つまらないあやめ」を襟尾はちゃんと見ていたのだ。
「あいつ、最低。全然可愛くない」
あやめはそう呟いて、写真を部屋の電灯に照らす。
可愛げはない、だが悪くない自分の写真だ。
襟尾はどんなつもりでこの写真を撮ったのだろう。彼は何を思ってファインダーを覗き、こんなふてくされたあやめの顔を残そうと思ったのだろうか。
心がざわつく。会って話をし、実際聞いてみたい。写真を見てそう思ったのは初めてのことだった。
「……バカみたい」
写真を手にしたままあやめはベッドへ寝転がる。
何を考えているのだろう、たまたま一枚だけ可愛くない写真があっただけだ。襟尾は話した印象だと楽観的であまり深く物事を考えていない風に見えたから、ただノリと雰囲気で撮っただけに違いない。
そう思っても、何故か気になる。
あやめは手にした写真をもう一度眺める。
写真のなかにいるあやめは相変わらずつまらなそうにベンチの向こうから秋空を眺めていた。
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