インターネット字書きマンの落書き帳
どこかで、うたわれる英雄(ルドウイーク概念)
今日のルドウイーク写経です。
(挨拶)
ルドウイークは色々な可能性を感じてしまう英雄ですが、ボクはどうしてもこう……。
周囲からは誠実だと思われているが、本人は実は劣等感が強い。
自分は卑しい存在だと思い込んでいた……みたいな英雄像を感じてしまいます。
故に色々な可能性を模索していきたいね!
醜い獣になったとしても、英雄であったのだから慈悲は必用だ。
そして語り継がれる姿が美しいのは、英雄に残された慈悲の一つであっても良いだろう。
(挨拶)
ルドウイークは色々な可能性を感じてしまう英雄ですが、ボクはどうしてもこう……。
周囲からは誠実だと思われているが、本人は実は劣等感が強い。
自分は卑しい存在だと思い込んでいた……みたいな英雄像を感じてしまいます。
故に色々な可能性を模索していきたいね!
醜い獣になったとしても、英雄であったのだから慈悲は必用だ。
そして語り継がれる姿が美しいのは、英雄に残された慈悲の一つであっても良いだろう。
『うたわれる英雄』
最初はただ、人より狩りがほんの少しだけ上手いというだけだった。
それは他の狩人よりほんの少しだけ武器の扱いが早く馴染み、他の狩人よりほんの少しだけ見切りが早く、ほんの少しだけ運が良い。
ほんの少しだけの違いがいくつも重なっただけであり取り分けて秀でた才能があるからではないと、彼自身は思っていた。
だが戦場では人より少ない傷で戻ってくる事が出来ていた。
どんな熾烈な戦いでも生きて戻り、部隊が壊滅するような惨事にあっても自分だけは無事に戻れる。
怪我はするが四肢を欠損する事もなく、数日たてばまた狩りに出る程に回復していた。
彼はずっと自分を凡庸な男だと思っていた。
洒落た話も出来ず、流行りの歌も知らず、小さな工場で人より遅く仕事をしてやっと日銭を稼ぐ生活をしていた彼はむしろ自分は人より劣っているのだと。人並みの仕事すらやっとこなせるような出来損ないだと思っていたし、実際その通り。彼は日々の生活をするのがやっとといった生き方しか出来ない不器用な男だった。
もし彼が何もない普通の街で産まれていたのなら、きっとそのまま目立つ事もない地味で静かな男のままだったろう。(あるいは、そのような中で細やかな幸福を噛みしめる事が出来る生き方もあったのかもしれないが)
そんな彼を、「獣狩り」が変えた。
常に戦い、常に勝つ。
多くの獣を狩りいつでも当たり前のように街へと戻ってくる彼を、人はいつしか「英雄」と呼ぶようになったのも自然な流れだったろう。
英雄と呼ばれるようになっても、彼は生活を変えようとはしなかった。
多くの富を求める事もなく、酒色に溺れる事もない。
ただ武器を振るい、己を鍛え続ける彼を慕い、賛美する狩人も多かった。
ある市民は彼を「清貧なる英雄」と呼んだ。
ある狩人は彼を「高潔なる英雄」と呼んだ。
富や名声を求めるワケでもなく、常に謙遜するような所作を見せる彼はなるほど「清貧」に見えただろうし「高潔」にも見えただろう。
街で子供たちは彼を見ると競って追いかけた。
狩人の多くは彼の背に学ぼうとし、また彼のようになろうとした。
清らかな乙女は恥じらいながら花を渡して憧憬の言葉を口にした。
彼はヤーナムの人々に愛され、慕われていたのである。
だがそんな純真な人々を見るたび、英雄は内心非道く狼狽していた。
どうか、自分に憧れないでくれと密かに願う程だった。
自分は清貧などではない。ましてや高潔な魂など持ち合わせているものか。
多くの屍を踏み越えてきた自分はただ死に損なっただけだ。
本当に勇敢なものは誰かのために命をなげうち決死の覚悟で挑んでとっくに命を散らしているはずだ。
まだ小隊にいた頃は、自分たち若手を逃がすために隊長が命を張り壁となった事で生き延びた。
英雄と呼ばれるほど獣を狩り殺した今になると「英雄様を逃がすために」といった理由で肉壁となった若者も知っている。
自分は強かったから、それだけで英雄になったワケではない。
他人が犠牲になるのを知った上で逃げ出した事があるから今まで生きてこられただけ。英雄の名声は、その屍を積み重ねてつくられた虚構にすぎないのだから。
それに、自分は本当に英雄などではないのだ。
命をなげうって守ろうとした相手を平気で見捨てて逃げ出したのは臆病風に吹かれたからからというワケではない。
『まだまだ殺したりない』と。そう、思ったからだ。
『もっともっと、殺してやりたい。獣という獣全てを』
そんな事を考えるようになったのがいつからかはもう覚えていない。
ただ彼は1日でも長く武器をとり、1匹でも多く獣を屠っていたかった。
獣の血を浴びると心が高揚した。
脂にまみれた武器の匂いにはどんな美酒の香りよりも心地よく酔えた。
自分はただ殺したいだけ。
それだけの理由で生きているのだ。
今まで人生で何ら心動かされる事などなく、このまま誰にも知られず看取られもせずひっそりと静かに死ぬのだと。そう思っていた彼を初めて突き動かす衝動。
それが「狩り」であり、狩りは彼の歓喜その全てだった。
故に彼は月光へ誘われる。
より強く、より遠くにある「獣」をも越えた何かをも全て殺し尽くすために。
例え自分の身体が醜い獣と落ち、その身がよじれてしまったとしても。
血に酔い、血に飢えて殺し続け。
そしてついにその先を越えていった英雄にして醜きもの。
だが誰が彼を責められるというのだろうか。
喜びのない世界で初めて見た彩りが、赤い血と青ざめた月であった彼を。
だから蒼い月が出る時は、彼の本能と闘争を鎮めるために歌うのだ。
青白い月の歌と、青ざめた血の歌を。
……この集落では「英雄・ルドウイーク」という悲しき獣はそのようにうたわれている。
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