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インターネット字書きマンの落書き帳

   
アルフレくんに食べさせたい(ヤーマーとアール-)
ヤマムラさんとアルフレートくんが付き合っているような付き合っていないような。
でもお互いに相手のことを大事には思っているよね、くらいの距離感でいる友人以上、恋人未満やや好きを意識しているぞくらいの話です。(長めの挨拶)

最近は秋で飯がうまいのもあってか、アルフレートくんにいっぱいご飯食べて欲しいんですよね……という訳で、ついついアルフレートくんにいっぱい食べさせようとするヤマムラさんの話ですよ。

アルフレートくん……甘やかしたいね!
最近似たような話を書いたんじゃないかと思っても「アルフレートくんにはいっぱいご飯を食べさせていいんだよ」「最新の俺がいつも最高の俺だぜ」理論でつまり今日が最高にかわいいアルフレートくんです!




『いっぱい食べる幸せというもの』

 処刑隊の装束に身を包んだ時、アルフレートの顔には自然と困ったような笑みが浮かぶ。自分の身体にあわせたはずの装束が少しばかり窮屈になっている事に気付いたからだ。
 もちろん原因はわかっている。最近ヤマムラと行動をともにする事が多くなったからだろう。

 当然それだけが太る理由になったりはしない。 むしろ連盟として内に虫を飼う獣を探しヤーナムの地上も地下も走り回るような激しい狩りは最近アルフレートのしている血族を探すといった地道な作業と比べれば遙かにハードと言えただろう。
 久しく獣狩りから離れヤーナムでの聞き込みや目撃情報をしらみつぶしに当たるという調査が日常になっていたアルフレートにとってヤマムラの付き添いは狩りの感覚を取り戻すに充分なほどの実戦経験となっていた。
 それだけ過酷な実戦を行っているというのに太ってしまったのは、狩りの最中でもその後でもヤマムラがやたらとアルフレートに何かを食べさせようとするからだろう。

「そろそろ昼時だな、アルフレート。腹が減っただろ、キミのぶんの弁当も作ってきたよ」

 ヤマムラは狩りの荷物に「弁当」をよく入れていた。
 大概の狩人は食事など石のように固くなった乾パンかかみ切れない干し肉などの保存食で済ますのだがヤマムラは朝から宿の厨房を借り昼に食べるための食事を作って箱に詰めて入れておきそれを昼食にしているのだ。
 いったいどうしてそんな面倒な事をわざわざするのだろうとも思うし昼食なら保存食で充分だろうとも思うのだが昼頃に包みを開け食べる柔らかなパンや少し濃いめに味付けた肉料理などを食べるとなるほど、このために早起きをして料理を作る甲斐は充分にあると思えるほどに美味いから文句の一つも出なくなる。
 同時にアルフレートは今まできちんと食事を楽しんではいなかったという事を実感するのだ。

 ヤーナムでの食事はあくまで栄養補給であり味は二の次というのが常識だ。何が入っているかもわからないような食事といえば専ら目の前にある食糧を胃に詰め込むだけの作業にしか過ぎなかったのだからアルフレートのように食事はあくまで日課であり命をつなぐ作業の一つにすぎない。
 だがヤマムラの祖国では食事こそ身体作りの基本でありゆっくり食事を味わう事も娯楽の一つらしく、食事は静かにだが楽しく心豊かに向き合うといった様子をしばしば見せていた。だからこそ彼は早起きなどという他者からすれば面倒なことをして眠い目をこすりながらも弁当を詰めたりするのだろう。美味しい昼食があると思えば過酷な狩りの中にも多少は楽しみも出来るし生き残ろうという気持ちにも繋がるといった効果もあるはずだ。

「はい、アルフレートのはこれだ。キミは若いから沢山食べないとね」

 だがいつもヤマムラが詰める弁当は量が多いのだ。
 何故かヤマムラには若者=沢山食べるという認識があるようでアルフレート用の弁当にはヤマムラの弁当とくらべて倍近くのサンドウィッチや揚げ物などが所狭しと並んでいた。しかもそれが美味しいのだから食べ過ぎたら太ってしまうというのが解っていても毎回残さず食べてしまうのだから仕方ない。目の前に沢山食べるのを見るヤマムラが嬉しそうに笑って見ているから食事はなおさら美味しく感じた。
 それだけに飽き足らず、狩りを終えて帰るとヤマムラはヤーナムの屋台を見つけてはそれを買い夕食前だというのに食べるよう薦めてくる。
 先にヤーナムでは食事を楽しむ文化に乏しいと語ったが、近年では異邦人の定住も増えヤーナムの外れでは故郷の料理を振る舞うような屋台の店も増えてきた。ヤマムラはそんな屋台のなかでも特に美味そうな店を見つけるのが得意であり、たっぷりの厚切り肉をパンに挟んだものやソースが染みたフライ、新鮮な果物などを二つ買っては一つをアルフレートに手渡すのだ。当然、この時も当然大きい方がアルフレートのものになる。
 アルフレートが食べないといった時でもヤマムラは買ったパンなど半分にすると「はい、キミのぶん。半分なら食べるだろう?」なんて悪意のない笑顔を向けて差し出すのが当たり前になっており、狩りで消耗し本当は腹が減っている前に差し出される美味しそうな食べ物に抗えるほどアルフレートの意思は強くなかった。
 もちろん夕食も一緒に食べればアルフレートにはいつも大盛りの食事が運ばれてくるのだから1日でこれだけ食べさせられれば否が応でも太ってしまうだろう。

「好きな人と食べるご飯は、やっぱり美味しいよねぇ」

 だがヤマムラに笑顔でそう言われると断れる気がしない。それにアルフレートもヤマムラと同じことを思っていたのだ。 ヤマムラと一緒に食べる食事はいつだって美味しい。それが例え塩が僅かにしか入っていない豆のスープでも骨と筋しかないような赤身の肉でもヤマムラとともに笑いながら食べる食事はいつだって楽しくそして暖かく思えたから、気付いた時にはアルフレートにとっても食事は1日でも特に楽しい時間となっていた。

「まぁ仕方ないですよね。太ってしまったのなら、そのぶん動けば良いだけの話ですから」

 アルフレートは「エイヤッ」と小さくかけ声をかけてからベルトを締め歩き出す。
 こんどヤマムラと狩りに行く時はどんなご飯を食べようか。そんなことを楽しみに思えるのは血と錆のにおいに包まれたヤーナムではきっと幸福なことなのだろう。

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