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インターネット字書きマンの落書き帳

   
サヨナラは言わないまま(ヤマアル)
何でもないような日々はいつも突然終ってしまうんだろうな。(挨拶)

というワケで、ヤーナムで出会いお互いに恋心を抱いて、少しの間恋人同士として幸せな日々を過ごしていたヤマムラさん×アルフレートのオハナシですよ。

幸せに過ごしていた。
そう過去形。

これは目覚めたら、すでに愛しい人が旅立っていたヤマムラさんの、朝の風景です。

ヤマムラさん視点で書いているんでキミと俺と、としか表現されてませんが……。
ヤマムラさんが俺ですしっ、アルくんがキミですよッ!




「すでに行ってしまったキミへ」

 目を覚ました時、がらんどうになっていた部屋を見て 「あぁ、やっぱりキミは行ってしまったんだ」 と思った。
 正直なことを言うと、昨晩のキミはいつもと少しだけ違っていて……。
 もっと言えば 「いつもと同じように振る舞おうとしていた」 事に俺は違和感を覚えて、その無理矢理作り出したような笑顔を前にして 「ひょっとしたらキミは近くに。いや、明日にでも旅だってしまうのではないか」 なんて、そんな予感はしていたんだ。

 キミの事だからきっと旅立つ前に別れの言葉なんて言わないだろうと思っていたからね。

 勿論、俺だってそれを望んでいたワケでもない。
 キミが俺に別れを告げる事でキミの決意を鈍らせたり、改めて顔を合わせる事で戸惑わせてしまうのは俺の本意でもないからね。

 止めたくなかった……といえば、嘘になる。

 どうして「今」いかなければいけないのか。
 キミはまだ若いのだから、せめてもう少し後回しにしてもいいんじゃないのか。
 俺が死ぬまで傍にはいてくれないのか……。

 キミより年かさだとか言って、キミの前では大人ぶってはいたけど、ざまぁないな。
 俺は自分が思っている以上にエゴイストで、自分勝手で……。
 ……でも、本気でキミの事を愛していたんだな、と今になって思うよ。

 キミと一緒にいた部屋は、一見して普段とは変わらないままだ。
 二つのカップが並び、花瓶には花が挿してあり、窓辺にはキミが露店で見つけた小さなサボテンの鉢植えがおいてあって……。

 俺がキミに買ったマフラーとか、夏場にキミの狩装束はあまりにも暑そうだからと見つけてきた通気性のよいアンダーシャツとか、そろいで買った指輪さえも、全部置いて行ってしまったんだね。

 あぁ、それだって当然分っている。
 キミと俺とが出会ってから共に過ごした時間に1秒たりとて無駄な時間など存在してないと思っているけど。
 いや、1秒たりとも無駄ではない大切な時間だったからこそ、俺と過ごした日々に得たモノはキミには重すぎただろうから、何一つもっていく事などできなかったんだろうって。

 ……キミがこの指輪を置いていったのは、つまりそういう事だろう。

 キミには露店で見つけて似合うと思ったからだとか、御守りにするといいとか、狩人は人間の理性を保つためにも何か日常の象徴になるようなものを身につけておくといいとか、色々と言い訳をして渡したけど、薬指に指輪をはめた時、くすぐったそうに笑っていたキミが何も知らずにその指輪をつけてくれたとは、思っていないからね。

 キミと生活してきた全てがこの部屋には残っているというのに、今この部屋にはキミの荷物だけがない。

 キミと最初に出会った時、キミがもってきた荷物……。
 処刑隊の装束とその武器、キミが尊敬し一途に信望してきたローゲリウスの書だけが存在しないのを見て、改めてキミがただ真っ直ぐに輝きへと向い歩んで行こうとした男なのだという事を実感しているよ。

 行ってしまったという事も、そしてもう帰ってこないという事も。

 俺にはカインハーストがどれだけ遠い所にあるかは分らない。
 今じゃないとキミが行く事が出来ないと思っていたその理由も分らない。
 輝きに満たされたキミが、その先の事を考えようとしなかった、その理由もわからない。

 結局、俺はキミの本当の理解者には成り得なかったんだろうな。
 そうとは思うが、それでいいとも思っている。

 もし俺がキミにとって本当の理解者であり、キミの心全てに共感していれば俺とキミとは戦友として、同じ処刑隊の装束をまとい、師の名誉を回復するために闘って、輝きへ魂を昇華させるのも厭わなかっただろう。

 だけどそうであればキミと俺は盟友であり、戦友であり、同志である事はできただろう。
 だがきっとあの温かな時間を過ごした恋人同士のようにはなれなかった気がするんだ。

 キミも、きっとそう思っているんだろう。
 俺はキミを理解できないし、キミは理解しきれない俺という存在だからこそ愛する事が出来た。
 違った感情を、価値観を抱いている俺だからこそ寄り添う事が出来たんだろうと思うし、そこは少しだけキミというミステリアスな男を愛し、愛されたという事が誇りにも思えるんだ。

 ……キミは今、どこにいるだろうか。

 ヤーナムで過ごした日常の全てを置いて行ったキミだから、迷いや惑いもなくただ真っ直ぐに、キミの見た輝きへの道を進んでいるに違いない。
 俺は、キミならキミの望む未来を勝ち取れると思っているし、だからこそキミはもうここに戻ってこないという事も理解している。

 キミの全ては分らなかったけど、キミの信念に関しては少し分っているつもりだから。
 だから今はこの、キミの残して言った思い出の抜け殻がつまった部屋で何もせず、だらしなく呆けているだけの俺を許してくれないか。

 明日になったらまた、キミの知っている俺に戻って。
 明日からキミと過ごした日々と思いを背負って、生きていこうと思おうから。

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