インターネット字書きマンの落書き帳
顔を怪我したお前の態度。(手芝・みゆしば)
平和な世界線で手塚と芝浦が恋人同士として普通に生活する。
そんな幸せな手塚×芝浦です。
(凝縮した幻覚の説明)
今回は、急に「会えない」と芝浦くんからメールが届いて、何だと思いつつ従ってみたが3日も耐えられなかった手塚くんの話ですよ。
どうでもいいんですが、手塚×芝浦日常話はおおむね2002~2003年頃を想定してるのでスマホじゃなくて携帯だしLI○Eじゃなくてメールだったりしてますが、俺の記憶がガバいのでそこまで忠実に2002年頃を再現はしてないです。
本当にどうでもいい話しました!
そんな幸せな手塚×芝浦です。
(凝縮した幻覚の説明)
今回は、急に「会えない」と芝浦くんからメールが届いて、何だと思いつつ従ってみたが3日も耐えられなかった手塚くんの話ですよ。
どうでもいいんですが、手塚×芝浦日常話はおおむね2002~2003年頃を想定してるのでスマホじゃなくて携帯だしLI○Eじゃなくてメールだったりしてますが、俺の記憶がガバいのでそこまで忠実に2002年頃を再現はしてないです。
本当にどうでもいい話しました!
「会いたくないのじゃなく、見られたくないのである」
しばらく忙しくなりそうだから、手塚には会えそうもない。
芝浦から届いたメールはやけに冗長だったが、要約すればそういった内容が書かれていた。
「しばらく忙しい、か」
それを読んだ手塚は、『恐らく忙しいというのは方便だろう』とすぐに察する。
本当に忙しいのならこんなに冗長なメールの文面を考える暇さえ惜しいはずだと思ったからだ。
最も、芝浦が他愛もない嘘をついて手塚の事を試すのは今に始まった事ではない。
人を茶化したり、面白いと思ったら息を吐くように嘘をつき全く違う自分を演じる事すらある男なのは付き合う以前から分っていたのだから、些細な嘘で怒るつもりはなかった。
ただ、『会えそうもない』という部分は本心だろう。
芝浦は軽率に嘘をつく男なのを知っていたからこそ、その中に隠そうとしている本心を読み解く力を手塚自身も知らぬうちに培われていたのだ。
何故会えそうも無いのか、会えない事情があるのだろうか。
色々考えたが、今は芝浦の『会いたくない』という気持ちを優先し、何も聞かないでおく事にした。
……つもりだったのだが。
「芝浦は、今日も来ないのか……」
会えないでいる時間は、3日たりとも持たなかった。
最近は週に3度は芝浦が泊まりに来るのがお決まりになっていたし、泊まりに来ない時でも昼食時などに芝浦が顔を出し、一緒に食事をする事が多くなっていたから『会わないでいる事』は手塚が思っていた以上に堪えていたのだ。
(当たり前に思っていた事が突然失われると、こうも強い喪失感に狩られるのだな……)
とはいえ、芝浦から届くメールは相変わらず『まだ会えそうにない』の一点張りで、どうして会えないのか、何があったのかと聞いてみてもはぐらかされるばかりだった。
(せめて何があったか分れば、少しは気が休まるのか……)
何故会えないのか。それが分らないからこそ寂しさだけではなく不安も募るのかもしれない。だが芝浦はそれを言うタイプではないし、そもそもそれを隠したいからこそ会わないという手段をとっているのだろう。
(正面切ってあいつに聞いても無駄だろうからな……こうなれば、別の方向から攻めてみるしかないか……)
思い立った手塚は、城戸の携帯へ電話をする事にした。
芝浦は城戸を茶化してからかってその反応を楽しんでいるような意地の悪い性格だが、城戸の事を信頼しているのは確かだったからだ。
手塚には話してない事でも城戸になら話している可能性がある。
「あれ、どうしたの手塚。珍しいな、俺に電話するなんてさ」
城戸は思ったより早くに電話に出てくれた。
移動中なのか、車の排気音のようなものがき微かに聞こえてくる。
「あぁ、実は……」
何から切り出せばいいか。今は日中で手塚は客が切れたからつい電話をしてしまったが、会社に所属している記者である城戸はまだ仕事中だったのをすっかり失念していた。
芝浦の事になると後先考えずに行動しがちな自分の軽率さを恨みつつ、単刀直入に聞くべきかそれとなく探っていくべきか思案するより先に、城戸の方から話を切り出した。
「そういえば、芝浦の顔、もう大丈夫なのか? 前見た時、けっこう酷く腫れてたみたいだけどさ」
「……顔? いや、何の事だ。俺は知らないが」
「あれっ? 最近芝浦にあってない? ……あいつさ、大学で何か資料運んでる時、前歩いてた学生のもってた長い……棒みたいなやつ? それ思いっきりぶつけられたみたいでさぁ。顔、すっごい腫れてるんだよ」
勿論、初めて聞く話だった。
「いや、聞いてなかった……最近忙しいと言って会う時間がなかったからな、それは何時の話だ?」
「えぇっと……俺が会った時が一昨日くらいで、その前にやられたって言ってたから……4,5日前になるのかな?」
それはちょうど芝浦から『事情があって会えない』というメールが来た頃と一致する。
なるほど、顔に傷ができたから会いたくないというのは合点がいく理由だ。
「それで、手塚、俺になんか用だった?」
「いや……客が途切れたからつい電話をしたが、お前はまだ仕事中だったのを失念していた。大事な用じゃ無いからまた今度、改めて電話する。食事でもしながらな」
「オッケー、わかった。俺もこれから取材入ってるから! 新しい記事、絶対読んでくれよ。それじゃ、またな」
電話が切れたのを確認した後、手塚は小さくため息をつく。
怪我をしたのなら言ってくれれば良いと思ったが、よほど怪我をした姿を見られたくなかったのだろう。
顔に傷があるのを見られたくない、というのは分らないでもないのだが。
「その程度の事で俺が……」
手塚は一人呟くと、すぐさま芝浦へとメールを出す。
今日は必ず会って話がしたい、来れないようなら迎えに行くと強く念を押して。
・
・
・
普段よりも強い文面から芝浦も何か察するものがあったのだろう。
手塚が帰った時に、芝浦はすでに手塚の部屋にいた。
「よぉ、手塚。ちょっと久しぶりだったけど、元気してた?」
その顔、左半分は丁重に包帯が巻かれている。それは傷の大きさより、傷そのものを見られたくないという風に思えるほど大げさに巻かれていたため、逆に目立って見えた。
「あぁ……お前はどうやらさして元気じゃなかったようだな」
手塚は荷物を置きながら、芝浦の方を見る。芝浦はばつの悪そうな顔をしながら、苦笑いをするばかりだった。
「いや、何というかさ……ンまぁ、見ての通りで……」
「城戸から聞いた。怪我をしたんだってな」
「えっ? あっ……あぁ……そっか。何で今まで放っておいてくれたのに、急に会いたいとか言うから何かと思ったけど……そっか、あいつかぁ……城戸に見られた時、つい喋っちゃったけどやっぱアイツ口が軽いなぁー」
その言葉で、芝浦は諦めたようにソファーへ身体を預ける。
傷を黙っていた事やそれを理由に会えないでいた事をどう説明するべきか、芝浦なりに考えていたのだろう。
「怪我をしたのなら言ってくれ。理由があって会えないのは何とはなしに分っていたが……」
「いや、でもさ。顔だよ? ……しかも結構腫れてるし、酷い痣になっててさ、ムカシの幽霊画に出てくるお化けみたいになってんだよ。そんな顔さぁ……手塚に見られたいと思うワケないじゃん」
「それは分らないでもないがな」
手塚は芝浦の隣に座ると、大仰に巻かれた包帯に触れる。
「そんなに悪いのか?」
「えーっと……瘤になっただけで、傷になったとか、縫ったとか。そういうワケじゃないから、痕も残らず綺麗に治るって話なんだけどさ」
「それなら良かった」
「でもさぁ、ホント、血の瘤ができて紫になってるし……コレ、見た目が綺麗になるの半月以上かかるらしいし……」
「それなら、半月以上俺と会わないでいるつもりだったのか?」
「いや、そういうワケじゃないけど。せめてもう少しマシな顔になるまでは……」
包帯の位置からして、ぶつけたのは額だろう。
瘤ができて紫に腫れたという事は血腫ができているに違いない。
血腫……血が溜った瘤は段々と血が体内に戻っていき傷も残らなくなるのだが、その仮定で血が下へ、下へと落ちていき、瘤そのものが額から目元へ、頬へと降りていく事になる。
腫れぼったさもあるが紫から黄色に変色する様相は怪我した当人にとっても気味悪く見えるのだから、他人に見られるのは尚更嫌なのだろう。
恋人にそんな姿を見られたくないと思うのも当然だ。
「治るまで何も言わず待たせるつもりだったのか? ……逆に俺が心配するとは思わなかったのか」
「心配してるだろうなーって思ってたし、治るまで待たせるつもりもなかったって……俺だって寂しかったんだよ? でもさぁ……」
やはり傷を見せるのには抵抗があるのだろう。
手塚は深く息を吐くと、芝浦の包帯へと手を伸ばした。
「いや、ちょ。まってまって、まだ全然治ってないから……俺、ひどい顔してるから……」
「だからこそ見ておきたい。俺がお前の顔に傷があるから……そんな理由でお前を嫌うとでも思っているのか?」
「それは、思ってない。けどッ……」
「傷の場所が分らないと、間違って触れてしまうかもしれないからな……見せてくれ」
手塚に言われ、渋々といった様子ながら芝浦は自分から包帯をほどく。
その下は彼の言う通り紫に腫れ上がり、瞼の上に瘤が覆い被さるようにして片目を塞いでいた。
「……ひっどいだろ? 自分でも朝鏡見た時、ビックリするもんな」
芝浦は視線をそらしながらそう呟く。
確かに酷い傷だ。昔の日本画に出る幽霊とは、いかにもその通りな例えにも思える。
だがそれでも、やっと芝浦が顔を見せてくれた事に安心している気持ちの方がよっぽど大きかった。
「あぁ、驚いたが……心配するな。お前が言うほどひどくは無い」
「いやいやいや、嘘つくなって。自分でも分ってるから……こんな顔見せたくないって思ってたし……」
「だが、俺はお前の顔が見れない日の方がよっぽど辛かったぞ」
手塚はそう告げ、芝浦の傷が痛まないようその瘤と痣とを唇でなぞる。
傷口は敏感だと言うが、流石に痛かったのか。あるいはくすぐったかったのだろう。芝浦は少し驚いたように身体を震わせた。
「ちょ、まってまって。触らないでって……」
「痛いか? ……もっと優しく触れた方がよかったか」
「ん……うん、まぁ……あんまり触ってほしくないけど……」
芝浦は少し困惑した様子を見せたが、すぐに笑顔になった。
「でも……安心した。もっと引かれるか、茶化されるかと思ってたからさ」
「驚きはするが、お前の事を嫌いになるはずが無いだろう。お前が気にしている事をわざわざ茶化すはずもない……芝浦、お前、普段から他人を茶化してばかりいるから、自分がその立場になったらそうされると思うんだろう。反省しろ」
「あー、はいはい。反省してまーす。反省してるから……」
そう言いながら、手塚の腕に絡みつく。
「……今日さ、いっぱい甘えていい? 俺も会えなくて寂しかったし……こんな顔でカッコ悪いなって、自分でもわかってるから、顔はあんまり見ないでほしいけど……」
見られたくないという気持ちは分る。
だから手塚はほどいた包帯を丁重に巻き直すと、その上にキスをした。
「わかってる。お前が見られたくないと思うなら見せなくてもいい……触れたら痛いのなら触れもしない。大切にしてやるから……」
絡みつく手を引き寄せて抱きしめ、唇を交す。
「大切にしてやる。だから……あまり俺から離れるな。しばらく黙って会わないでいてやったんだ……今日はたっぷりその代償を支払ってもらうからな?」
「うわっ、こわ……わかったわかった。わかってるって……俺も、いーっぱい甘えさせてもらうからね?」
二人の手は自然と重なり、長いキスが続く。
久しく会わなかった時間の対価は、一晩続けられるのであった。
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