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インターネット字書きマンの落書き帳

   
初心すぎるアルフレくんという概念(ヤマアル)
普段はアルフレートくんに業の深い設定……。
貧しい身の上で身体を売っていた過去なんかを背負わせてしまいがちなんですけどね。

裕福だったり高貴だったり。
そういった理由で貞操概念がガッチガチ、潔癖なくらい初心なアルフレートくんを書いてみたいな、と思ったので書いてみました。

ヤマムラさんと恋人ではあるけど、いざエッチな雰囲気になると「無理~」ってなっちゃうアルフレートくんの話です。

可愛いアルフレートくんもたまには……書きたいよねッ!




『初心すぎる身体と待つ男』

 アルフレートはベッドの上に膝をかかえて座ったまま俯いていた。

「わ、悪かったよアルフレート。その……俺も少し性急だった。もっと、君のことを慮るべきだった、よ……」

 ヤマムラの口調は優しく柔からだったがそれがかえってアルフレートを苦しめていた。
 自分でもどうしてそんな事をしたのか理解できなかったからだ。

 ヤマムラと恋人同士として親しく付き合うようになってもう一ヶ月近くは経ったろう。
 共に過して手を握り唇を重ねるのは抵抗がなくなっていた。
 何もせず一緒に眠る日々も幸せだと思えたし、ヤマムラの事が好きである事実は一片の疑いもない。

 だがその日、不意にベッドへ押し沈められヤマムラの指先が肌に触れた時、アルフレートは混乱した。
 愛しいとは思っているし、肌を重ねて見たいという気持ちもある。
 しかし、裕福な家庭に育ち清くあるべき。正しくあるべきとしつこい程に教えられてきたアルフレートにとって結婚を前提としない相手と身体を重ねるのはあまりにも抵抗があったのだ。

 また、ある種で潔癖なアルフレートにとって性交そのものが穢れのように思えていた。
 だからいざ、ヤマムラと一線を越えるという瞬間になった時無意識に抵抗してしまったのだ。

「本当に、すいませんヤマムラさん……」

 突然といったワケではなかっただろう。雰囲気として、そういう流れになっても不思議ではないとアルフレートも思っていた。
 ヤマムラと恋人同士になった以上は結婚というのは考えていなかったし、今となってはアルフレートに守れるような家名もない。
 守るべき体裁などなく、ヤマムラに抱かれるのを拒む理由など一切ないというのにそれでも身体を結ぶのが何とはなしに恐ろしくて、迫るヤマムラの身体を突き飛ばしてしまったのだ。

 油断していたヤマムラは突き飛ばされた勢いでベッドから転げ落ちて強かに腰を打ち付けてしまった。
 全身全霊で拒まれたヤマムラは当然驚いた様子だったが、それ以上にヤマムラを拒んでしまったアルフレート自身が落ち込んでいた。

「わ、私は。その、ヤマムラさんの事が嫌いなワケではないんです! ただ……そのようなけ、経験を、今までしていなかったので……急に、こ、怖くなって……」

 弁明しようと必死にすればするほど、声が上ずってしまう。
 アルフレートくらいの年齢であればすでに経験している方が普通で、律儀に貞操を守っている方がおかしいのだろうというのは自覚していた。
 結婚する予定もないのなら恋人と身体の関係になるのは自然な事だというのも理解していたはずなのに、いざその場に対峙すると感情が追いつかなかったのだ。

「いや、もういいんだ。俺が悪かったよ。君がそういう面で清くあろうと思っているのは分っているつもりだったのに、軽率だったよ」

 ヤマムラは優しいが、恋人に拒まれたのはやはりショックだったろう。
 それも口で嫌だと告げるのではなく全力で押しのけてしまったのだから尚更だ。アルフレートは自分のした事が恥ずかしいやら情けないやらで居たたまれない気持ちのまま膝を抱えて俯いていた。

「いえ、ヤマムラさんが謝る必用ないですよ……私が、臆病なだけなんです……」

 獣を相手にした時は血が昂揚し戦うのが楽しかった。血族と戦っている時も恐怖を感じた事などなかった。
 そんな自分が愛しい相手と触れあうのを恐れてしまうとは思ってもおらず、それがまた非道く情けない気がした。

「そんな顔しないでくれって……少し驚いたのは確かだけど俺は怪我をしてないし。君がそこまで落胆しているとかえって心配だよ」
「ヤマムラさん優しいですよね……自分だって傷ついてるでしょう。それなのに、私の事ばかり気にしてくれていて……」
「俺のせいで君がそんなに落ち込んでるんだからな……怖かったんだろう?」

 ヤマムラの言葉に、小さく頷く。その姿を見てヤマムラはアルフレートの頭を優しく撫でた。

「何が怖かったのか、自分で分る範囲でいいから聞かせてくれないか? ……なるべく、君が怖いと思わないように尽力したいと思うから」
「……こんな私でも呆れないでくれるんですか? ……セックスが出来ない恋人なんておかしいでしょう?」

 自嘲気味に告げるアルフレートの言葉を茶化す事もなく、ヤマムラは真面目な顔をして聞いていた。

「俺が君くらいの年頃だったらしびれを切らしていたかもしれないが、もうそれほど若くもないからね。溜ったから適当な誰かを抱くなんてマネはしないよ……君だってそれは嫌だろう?」
「い、嫌に決まってます! ヤマムラさんが、ほ、ほかの誰かとそのような関係になるなんて……」
「俺だって君以外の誰かとそういう関係になるつもりはないよ。ただ、君が……そうなるのが怖くて、俺としたくない……というのなら俺も無理強いするつもりもない。今まで通り、一緒にいるだけでも俺は別に構わないから……」

 ヤマムラはそう言うが、彼だって男なのだ。まったく性欲がないワケでもないだろう。
 それに……。

「わ、たしは……あなたの、そのっ……し、たいと思って……」
「ん……」
「だ、から……私は、貴方と……したい、と、思ってます。ただ……その……気持ちがまだ……どうしていいか分らないですしっ……ま、まだ私、自分でしかしたこと無いのでヤマムラさんの身体を受け入れられるかどうか……!」

 その言葉で、ヤマムラは驚いたように目を丸くする。それで、アルフレートは自分がつい余計な事を口走っているのに気付いた。

「あ、あのっ。わ、わたし。その……経験がないので技術不足なので……上手く出来ないと思いますし。お、男の人の裸を見た事も殆どないので……」

 慌ててさらにそう付け足すが、かえって墓穴を掘っているのに気付く。
 つまるところ、慣れてないからどうしていいか分らないのだというのにヤマムラも気付いたのだろう。アルフレートの頬を優しく撫でてから、いつものように優しいキスをしてくれた。

「……だったら、君が怖くないように少しずつ慣れていこうか? お互いの肌を見ても恥ずかしくないように。お互いの身体に触れても怖くないように。君が怖くなくなるまで、ゆっくり時間をかけて行くよ」

 そう語りながらヤマムラは唇を首筋に滑らせて、小さく震えるアルフレートを抱きしめる。

「焦らなくていいから……今日はこうして君を抱いて眠ってもいいかな? そういう所からゆっくり初めていこう」

 甘く囁き微笑んで二人でベッドに寝転べば、ヤマムラの体温が背中に伝わる。
 それは暖かくて溶けるほど優しかったから。

(ど、どうしましょう……私、思ったより早く……欲しくなってしまうかもしれません……)
 
 アルフレートは自分の耳まで赤くなっているのに気付く。
 そんなアルフレートの耳に触れると、ヤマムラはただ愛しそうに彼の身体を抱くのだった。

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インターネット駄文書き
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