インターネット字書きマンの落書き帳
千景を得物にするヤマムムさんの話
久しぶりにブラッドボーンのヤマムラ=サンを書きたくなったので書きました。
わざわざ自分が傷つく武器を使う理由。
それがヤマムラ=サンなりの罪滅ぼしだったらいいなァ~。
そう思った願望をぎゅっぎゅっと詰めましたyo。
ヤーナムにいる異邦の狩人っぽさが出ていればいいなと思います!
わざわざ自分が傷つく武器を使う理由。
それがヤマムラ=サンなりの罪滅ぼしだったらいいなァ~。
そう思った願望をぎゅっぎゅっと詰めましたyo。
ヤーナムにいる異邦の狩人っぽさが出ていればいいなと思います!
『異邦の狩人』
その男は獣を狩る時、いつでも血に濡れていた。
得物が自らの血を贄とするものだからだ。
己が血を刃に飲ませ刀身全体が濡れて輝くその武器は、かつて獣狩りの栄誉を欲しいままにし、今は住処を追われた血族の武器である。
ひとむかし前であれば刀身に刻まれた意匠も血濡れた刃も人々の羨望を浴びていただろうが今は忌々しい視線を向けられる古くさい遺物にすぎないだろう。
実際、血族の武器が強さと激しさをもって獣を打ち倒したのはかつての話であり今はそれより激しく的確に獣を裂く武器も多くある。男が痛みを得てまでして、そのような懐古主義の権化をふるう必用などないのだ。
以前いちど、男に聞いた事がある。
「どうしてそんな武器を使うのだ」と。
「工房に頼めば似たような武器でもっと性能がいいものもある。獣を狩るのに相応しい武器も沢山ある、それなのにどうしてそのように古くさい武器を後生大事にもちあるくのだ」とも。
男は獣狩りに長けていたのもあり、己が傷を負う武器をふるう事で男が窮地に陥るのではないか、傷の痛みで不覚を取るのではないか、心配でもあったのだ。
男は狩人にしては謙虚で、獣狩りを誉れとせず、酒を傾ける時も多くを語らぬ良い隣人であったから尚更である。
だが男は、こちらの言葉にただ曖昧に笑うと静かに首をふるのだった。
「己がこの武器を振るうのは、贖罪なのだから」
酔った時、男がそう零したのを何とはなしに覚えている。
贖罪とは誰のためのものか、あるいは何のためのものであるのかついに聞く事はなかった。
掃き溜めのようなヤーナムへ行き着くような人間は、みな人に言えぬ業を背負っている。物静かに見えるこの男も人には言えぬ傷や咎を背負っていても不思議ではなく、わざわざそれを聞く事で他人の業まで背負いたくはなかったからだ。
贖罪という言葉を使う限り男には人に言えぬ過去があるのだろう。
誰かを殺めたか、死に至らしめたのか。大事な存在が獣へ変貌しそれを屠った事もあるかもしれない。
だが、もしそれを罪だと思っているのなら至極真っ当な人間なのだろう。少なくともヤーナムで生きていくには惜しい男だ。背徳と冒涜が跋扈するヤーナムでは、罪悪感を抱くほどの道徳も知性も摩耗した人間が殆どなのだから。
あれから、その男には会っていない。
ヤーナムで狩りを続けていれば獣に食らわれ命を落とす事もあるだろう。病に罹患し獣に落ちる事だってある。治療と称して胡乱は薬剤を打たれそのまま異形に変貌することも、教会に目を付けられ人知れず始末されることもある。見てはいけないもの、あるいは見えてはいけないものを見て、狂気に陥ることもだ。
生きる理由がないくせに、死ぬ理由は山ほどあるのだからしかたない。
だがきっとあの男は、血濡れた刃を得物とし自ら傷を負いながら獣を刈り続けたに違いない。
懐古主義の権化を背負い、自ら血を流し獣を血に染める。それがあの男の贖罪なのだというのだから。
その男は獣を狩る時、いつでも血に濡れていた。
得物が自らの血を贄とするものだからだ。
己が血を刃に飲ませ刀身全体が濡れて輝くその武器は、かつて獣狩りの栄誉を欲しいままにし、今は住処を追われた血族の武器である。
ひとむかし前であれば刀身に刻まれた意匠も血濡れた刃も人々の羨望を浴びていただろうが今は忌々しい視線を向けられる古くさい遺物にすぎないだろう。
実際、血族の武器が強さと激しさをもって獣を打ち倒したのはかつての話であり今はそれより激しく的確に獣を裂く武器も多くある。男が痛みを得てまでして、そのような懐古主義の権化をふるう必用などないのだ。
以前いちど、男に聞いた事がある。
「どうしてそんな武器を使うのだ」と。
「工房に頼めば似たような武器でもっと性能がいいものもある。獣を狩るのに相応しい武器も沢山ある、それなのにどうしてそのように古くさい武器を後生大事にもちあるくのだ」とも。
男は獣狩りに長けていたのもあり、己が傷を負う武器をふるう事で男が窮地に陥るのではないか、傷の痛みで不覚を取るのではないか、心配でもあったのだ。
男は狩人にしては謙虚で、獣狩りを誉れとせず、酒を傾ける時も多くを語らぬ良い隣人であったから尚更である。
だが男は、こちらの言葉にただ曖昧に笑うと静かに首をふるのだった。
「己がこの武器を振るうのは、贖罪なのだから」
酔った時、男がそう零したのを何とはなしに覚えている。
贖罪とは誰のためのものか、あるいは何のためのものであるのかついに聞く事はなかった。
掃き溜めのようなヤーナムへ行き着くような人間は、みな人に言えぬ業を背負っている。物静かに見えるこの男も人には言えぬ傷や咎を背負っていても不思議ではなく、わざわざそれを聞く事で他人の業まで背負いたくはなかったからだ。
贖罪という言葉を使う限り男には人に言えぬ過去があるのだろう。
誰かを殺めたか、死に至らしめたのか。大事な存在が獣へ変貌しそれを屠った事もあるかもしれない。
だが、もしそれを罪だと思っているのなら至極真っ当な人間なのだろう。少なくともヤーナムで生きていくには惜しい男だ。背徳と冒涜が跋扈するヤーナムでは、罪悪感を抱くほどの道徳も知性も摩耗した人間が殆どなのだから。
あれから、その男には会っていない。
ヤーナムで狩りを続けていれば獣に食らわれ命を落とす事もあるだろう。病に罹患し獣に落ちる事だってある。治療と称して胡乱は薬剤を打たれそのまま異形に変貌することも、教会に目を付けられ人知れず始末されることもある。見てはいけないもの、あるいは見えてはいけないものを見て、狂気に陥ることもだ。
生きる理由がないくせに、死ぬ理由は山ほどあるのだからしかたない。
だがきっとあの男は、血濡れた刃を得物とし自ら傷を負いながら獣を刈り続けたに違いない。
懐古主義の権化を背負い、自ら血を流し獣を血に染める。それがあの男の贖罪なのだというのだから。
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