インターネット字書きマンの落書き帳
教区長となるためのローレンス概念
普段はわりとルーズだったりする人間臭いローレンスだけど、教区長となる時は率先して仮面を被り、「そうたるものであろうとする」のではないかなッ!?
と思ったネタを書きました。
以前書いたルドウイークの話とは対になってる感じですね。
別にローレンスとルドウイークをカップリングのような感じに捉えてないんですが、どうもこの二人は対にして書きたいなぁと思ってしまいます。
密偵は多分シモンさんです。
(しれっと言うなよ)
いつかこう、シモンさんとローレンスの会話みたいな話もやりたいねッ。
と思ったネタを書きました。
以前書いたルドウイークの話とは対になってる感じですね。
別にローレンスとルドウイークをカップリングのような感じに捉えてないんですが、どうもこの二人は対にして書きたいなぁと思ってしまいます。
密偵は多分シモンさんです。
(しれっと言うなよ)
いつかこう、シモンさんとローレンスの会話みたいな話もやりたいねッ。
『汝教区長たれ』
急ぎの用件を伝えるため、無礼を承知しながらも男はローレンスの部屋へ入った。
「失礼します」
ノックをしても返事がなかったので仕方なく室内に入れば、そこには豪奢なソファーに身体を投げ出して眠るローレンスの姿がある。
胸にはビルゲンワースの署名がある羊皮紙が握られ、ベストもシャツも着崩れている。
恐らくは職務の最中に眠くなってしまったのだろう。
「ローレンス様、ローレンス様……」
男が二度、三度と声をかけるとローレンスはようやく億劫そうに瞼を持ち上げ一つ伸びをすると男の姿を睨め付けた。
「密偵が無断で私の部屋に入るか」
「すいません、火急の用がありまして不躾かとは思いましたが……」
やはり無断で部屋に入ったのは不味かったか。そう思い非礼を詫びようとする男の言葉をローレンスは手で制止した。
「いいや、私の部屋に駆けつけるという程はよほどの事だろう。それにこの部屋まで入ってこれるのはたいした物だ。おまえという優秀な密偵がいて嬉しいよ」
ローレンスは立ち上がると、デスクの上におかれたパンにレタスやハム、チーズなどを挟んだものを片手で食べながら手にしていた羊皮紙を読む。
その口調は淡々としており感情がこもっていないのは分っていたが、不思議と男の中にある密偵としての自尊心を高めてくれるような響きをもっていた。
「それで、用件は。用件次第で、お前という優秀な密偵の評価を変えなければいけなくなるが」
パンを囓りながら、ローレンスは言う。
羊皮紙は素早く書棚に入れたため中身は把握できなかった。元ももし中身を読めたとしてもビルゲンワースは特殊な暗号や文字を使う。男には理解できなかっただろう。
「はい、実は……」
ローレンスの傍らに膝をつき用件を告げれば、彼は「ふむ」と小さく呟く。
そして。
「いや、そうか。それならば私が出た方がいいな。了解した、すぐに向おう」
ローレンスはパンを食べ終わると杯に満たした水を一息に飲み干す。
それからは早かった。
今まで着ていたよれたシャツや汚れたベストを脱ぎ捨てのりのきいたシャツとベストに着替え、クローゼットにしまわれた教区長としての装束へ袖を通す。
「さぁ、行くか」
顔を上げた時、今し方までソファーでゴロ寝しパンを貪ってた「人間・ローレンス」はどこにも居なかった。
堂々とした佇まいは威厳があり、遠くを見据える目は儼乎たる様子で、ただ「行くか」その一言にさえも有無を言わせぬ迫力と思わず聞き入る魅惑的な響きがある。
これが教区長ローレンスなのだ。
清濁飲み下し、ヤーナムにある汚いものをも抱え込んでも堂々と笑っていられるかぎりなく穢れた高潔さを持つ男だ。
何か命令を下されたワケではない。
だがそれだというのに男は自然と跪き、ローレンスを前に頭を垂れていた。
「そう改まるな。私はまだ教区長の仕事はしてない」
頭を垂れる男の前に、ローレンスは手を伸ばす。
その指先は死人のように冷たく、その笑顔はどこか傀儡のような作り物さを感じたがだからこそ彼の神秘性が高まっているように思えた。
「さぁ、この教区長ローレンスが直々に聞かせてやろう。ヤーナムの市民が望む、望まざるに関わらず、医療教会と私が『正しい』と思うように。おまえも着いてこい。私の仕事を間近で見られるのは栄誉な事だからな」
絢爛なマントを翻し、ローレンスは淡く笑う。
その背を見て、男は思うのだ。
ローレンスという男をおいて、この街に教区長たる人物はいないと。
だが同時にこうも思うのだ。
もし教区長という存在がない世界にローレンスがいたら、彼はいったいどのような人間になっていたのだろうと。
あるいは、ローレンスは教区長という座があるからこそ存在できたのではないか。
ただそれだけの傀儡なのでは……。
「……さぁ、役目を果たすかな」
ローレンスは歪に笑う。
その笑みは、まるで自らが空虚である事を知ってるかのようだった。
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