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インターネット字書きマンの落書き帳

   
記憶にも記録にも残したい思い(手芝・みゆしば)
平和な世界線で普通に恋人同士として付き合っている手塚と芝浦の概念です。
(今日も1行で説明する幻覚)

おおむね2002年基準で書いているので、世界観や機材が少し古いのはそういう事ですよ。
スマホを使わないしばじゅんちゃんという存在……!

今回は、写真のデータを整理してたら思ったより彼氏とツーショットが少なくて寂しいからツーショットをとりたいしばじゅんちゃん概念と、そもそも写真が苦手というみゆみゆ概念ですよ。

言うて二人ともプロだからその気になれば目線決められそうだけどねッ!(プロとは?)




「記録と記憶」

 携帯電話とデジカメの写真を眺めながら芝浦は以前から思っていた事を改めて確信する。
 手塚が一人で写っている写真は多いのだが、芝浦と二人で写っている写真は極端に少ないのだ。
 そもそも、手塚が一人で写っている写真に関しても殆ど手塚が寝ている写真か油断してこちらに気付いてない時の写真ばかりで視線がこちらに向いている写真は殆どなかった。

「手塚があんまり写真好きじゃないのは知ってるけど、もうちょっと二人で一緒に写ってる写真欲しいよなぁ……」

 データを確認しながら芝浦は独りごちる。
 そして普段なら外に出かける時にしか持ち出さないデジカメを鞄に入れると手塚の家へと向うのだった。

 ・
 ・
 ・

「一緒に写真を撮りたい?」

 手塚の部屋についてすぐにツーショット写真を頼めば、手塚は露骨に面倒臭そうな顔をして見せた。

「いいだろ別にさぁー。今日データ整理してたら、二人で写ってる写真全然無いんだもん。絶対他の奴に見せたりしないしからさ。ほらほら、こっち見て」

 デジカメを構え二人でフレームに入るよう調整するが、手塚はわざとフレームから逃げるように身体を遠ざける。

「なんで逃げるんだよッ。俺は二人の写真が欲しいって言ってんの!」
「仕方ないだろ、俺は写真の類いは苦手なんだ……」

 そう言いながらデジカメより遠ざかる手塚を見ながら、芝浦は改めてデータを確認する。
 振り返った時に不意打ちで撮った写真や無防備な寝顔の写真は自然な姿の手塚だが、カメラ目線をしている時はどこか表情がぎこちないのを見るとやはり写真は苦手なのだろう。
 以前、城戸が「手塚を取材したい」と言った時もあまりにぎこちない笑顔ばかりだったから、芝浦が手塚に無断かつ不意打ちでとった自然体の写真をいくつか提供した事もある。
 写真が苦手というより、カメラを意識してしまうと自然体ではいられないのだろう。

「でも俺、手塚と二人で撮った写真もっと残したいんだよねー。二人だけしか知らない記憶も大事な思い出だけどさ。二人で一緒にいたっていう記録も、俺は大事だと思うし」

 だからさ。とその言葉は聞こえぬよう唇だけで語ると、芝浦は手塚の肩を抱き寄せ片手でシャッターを押す。
 油断していた手塚はやや驚いた顔をしていたし片手だけで撮ったため写真はややブレていたがそれでもぎこちない笑顔よりよっぽど手塚らしい写真が撮れたと思った。

「へへー。よしよし、やっぱ手塚は不意打ちで写真とるしかないかなー? こっちの写真の方がよっぽど普段の手塚らしいし」

 撮れた写真を確認しながら笑う芝浦の横から同じ画面を確認し、手塚は不服そうな顔をする。

「ブレてるじゃないか……そんなデータ消してくれ」
「嫌だよ、こうでもしないと一緒の写真とってくれないじゃん……二人で写真とって、それが綺麗にできたらこのデータと入れ替えてもいいけど?」

 挑発するように芝浦が言えば、手塚はやや考えた顔になると芝浦の肩を抱き寄せた。

「……ブレてる写真を残されても困るからな」

 不服そうな顔は相変わらずだし、レンズを見ればどうしても表情がぎこちなくなる。
 やはりカメラは苦手なのだろう。占い師という職業柄オカルトめいた事をしばしば口にする手塚だから、写真を撮られたら魂が抜かれる等とも本気で思っているかもしれない。

「えへへー、ありがと手塚ッ。あ、無理にレンズ見なくてもいいよ。手塚ってカメラ意識するとダメみたいだから、俺の方見てくれればオッケーだから」

 そう言いながら写真を撮れば、今撮った手ぶれの酷い写真より幾分かマシに見える。
 だがやはり手塚はカメラを意識してしまうのだろう。その表情ぎこちなく元々無表情な手塚がより人形めいて見えた。

「んー、さっきよりマシだけど、やっぱり手塚の表情固いんだよね」
「俺は元々こういう顔だ……」
「それは分ってるけど、そんな緊張しなくてもいいからさ。じゃ、もう一枚撮ろっか?」

 芝浦がカメラを向ければ、手塚はまた困ったような顔をしながらフレームから外れようとするので芝浦は少し強引に手塚の肩を抱くと自分の方へと引き寄せた。

「だから逃げるなって、レンズの方無理して見なくてもいいし無理して笑わなくてもいいからさ。はい、撮るよー」

 そう言いながらシャッターを押そうとする芝浦の顔を少し強引に引き寄せると、手塚は突然キスをした。

「ちょ、手塚っ……!?」
「黙ってろ」

 重ねた唇は温かく、舌が芝浦の身体を慈しむように慰める。何度もキスはしてるのにそれでも唇を重ねるたび心地よく、幸せと歓喜とで頭の中は一杯になってしまうからもっていたカメラは自然と床に転がっていた。

「……写真を撮る気は無くなったか?」

 すっかり呆ける芝浦を前に、手塚はやや満足げな顔をする。

「うっ……手塚、ズルいってそういうのさぁ……俺、アンタにそうされると……何も考えられなくなっちゃうって言ってるのに……」
「お前が余計な事をするからだ……まだ写真を撮るというなら撮れないようにするだけだ」

 芝浦の手を床に押さえつけるよう握ると、手塚はさらに唇を重ねる。
 執拗に舌を舐られ意識が融けそうになる中、芝浦は取り落としたデジカメに触れる。

(あぁ、キスする瞬間シャッター押してたかもな……後で確認して……もし撮れてたら、手塚には黙っておこ……この瞬間、記憶だけにしておくの、やっぱ勿体ないし……何度も見て、何度も思い出したいって思うの、俺が欲張りだからかな……)

 そんな事を考えながら、繰り返されるキスの海に溺れていくのだった。

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