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インターネット字書きマンの落書き帳

   
おかいもの一人でできるもん。(みゆしば)
平和な世界線で、普通に付き合っている手塚と芝浦の話です。
(挨拶を兼ねた幻覚の説明)
(何度も言う事でこの世界が存在したと思わせる作戦)

今回は、いつも泊まってる年上彼氏の家に行く前に必用なものを買っておこう。
そう思ったしばじゅんちゃんが、みゆみゆに電話したら思わぬものを要求され狼狽える話ですよ。

俺の気持ちとして2002年くらいの設定で話をしているから、携帯電話はスマホじゃないし、コンビニも当然のようにビニール袋を渡してくれます。
記憶の中にある2002年は美しい。(?)




『足りないから買い足して』

 それは何でもないようなある日のことだった。

 大学の授業を終えた芝浦の足は、自然と手塚の家へと向う。
 いつも同じ授業をとっているので暇になる時間というのは自然と決まっており、最近は水曜日の午後はフリーなので水曜は必ずといっていい程手塚の家に泊まっていた。

 手塚が占いの店を出す公園に寄ってからにしようか。それとも直接家に行こうか。
 そんなコトを考えながら携帯電話を取り出す。
 あらかじめ手塚に行く日の事は伝えてあるから突然行っても別段驚かれる事などはなかったが、それでも行く前に電話をするようにしていた。
 これは手塚が今どこにいるのか確認するという意味もあるが、手塚の声が聞きたいという理由の方が大きかっただろう。

「どうした、芝浦。これから来るかの?」

 二度目のコールですぐに手塚へと電話が繋がる。
 彼のいつも涼しい声を聞けるのは嬉しかったが、やけに早く電話に出たのは気になった。
 今日は平日だが、普段の手塚なら外に出て占いの店を出している事が多い。客の相手をしていて電話に出られない事もしょっちゅうだというのに今回はすぐに出てくれたからだ。

「あ、うん。今そっち向ってるんだけどさ……手塚、電話出るの早かったね。もしかして、家?」
「そうだ……今日は朝、雨が酷かったからな。お前も来る日だし、休みにした。幸いここ最近は実入りがいい仕事が多くて余裕もあるしな」

 話を聞けば、日は外に出なかったようだ。
 今朝は父の使う運転手つきの車で大学まで来たから雨が降っているのは知っていたがそこまで大降りだったとは知らなかった。
 こういう所が箱入りとか世間知らずと呼ばれる理由なのだが、芝浦当人はそれにはまだ気付いていない。

「そっか……じゃ買い物とかしてない感じ? 何か必用なものあったらコンビニ寄っていくけど、何かある?」
「必用なものか……」

 電話越しに、部屋を見渡す音がする。冷蔵庫を開ける音、ソファーの裏にある備蓄のティッシュを探す音……。
 何度も行き何度も一緒に過している部屋の様子が芝浦の脳裏に浮ぶ。
 多分部屋にないものを探しながら話しているのだろう。

「そうだな……冷蔵庫にもうろくなものが入ってないから、お前が飲み食いしたいものは自分で買っておいてくれるか?」
「いいよー。何なら手塚の分もかっておくけど、何がいい? トマトソース系のパスタ?」
「いいのか? それなら、頼む。お前なら俺の好みはもう大体分ってるだろうからな……あぁ、それとビールを2,3本頼めるか? 後で代金は払う」
「別にいいって、泊まり賃だと思っていいからさぁ……」

 今日の夕食、明日の朝食用の食パン、綿棒、ゴミ袋、ボディソープ……。
 手塚は一通りの日用品を告げる。そのうちの一部は、芝浦もそろそろ買わなければいけないと思っていたものだった。

「オッケー、わかった。それだけ?」
「あぁ……いや、ちょっとまて」

 コンビニまであと僅かで到着する所でドアを開ける音がする。
 手塚の家でドアがある部屋はユニットバスと寝室だけだから、きっと寝室に入ったのだろう。  寝室に何か用事でもあるのだろうかと考える暇もなく。

「やっぱり、もうゴムが無いな。悪いが買って来てもらえるか?」

 と、事も無げにそう告げるのだった。

「はぁッ!? ……何いってんの? えっ、それ俺に? 手塚が使うヤツじゃん」
「確かにそうだが、お前も世話になってるだろう? ……そこまで拘りはないからコンビニに置いてあるヤツでいい」
「いや、ちょっ……待って。えっ? ……いや、俺なくても大丈夫だし」
「何言ってるんだ……最近、生でしたら腹の調子が悪くなったとか文句言っていたのはお前だろう? それならあった方がいい……とりあえずでいいから頼んだぞ」
「いやいやいや……ちょ、まっ……いや、俺大丈夫だから……」
「何が大丈夫なんだ? とりあえず、今日の分があればいい……それとも、今日はべつにしなくてもいいか? それならまぁ……」
「えっ? する……したい、けど……俺こういうの普段自分で買わないし……」
「そうか、それなら頼んだぞ。よろしくな」
「ちょっ、手塚ぁ!?」

 そこで電話はぷつりと途切れる。言い合いをするのが面倒になったのだろう。
 芝浦は赤くなる頬を抑えながら。

「何だよっ、俺にそういうの買わせる? フツー……えっ、いつも使ってるヤツって……あの箱のでいいんだよなっ。何だよもう手塚、あいつっ……」

 そんな独り言を呟き、コンビニに入るのだった。

 ・
 ・
 ・

 手塚の家につくなり、芝浦はコンビニのビニール袋からコンドームの箱を取り出すとそれを手塚へと投げつけた。

「ほらッ、買って来てやったけど」

 それを受け取り、というよりの半ばぶつけられながら手塚は頷く。

「悪いな。立ってるついでに、寝室に置いておいてくれ」

 そして手塚はそう言いながら、投げつけられた箱をすぐに芝浦へと投げ返した。
 芝浦はその箱を受け取ると、ふと何か思いついたような顔になって荷物をおくと箱をあけ、そこからゴムを一枚取り出して口にくわえる。

「……折角だから、もう使っちゃう? なーんて」

 そうやって茶化してみたつもりだったのだが。

「……淳、おまえは本当に無防備すぎるな。時々その無防備さが心配になる」
「えっ? なに、どういうことか全然わかんないんですけど」
「わざわざお前に頼む程だった……その時点で俺があまり我慢できない事くらい気付いたらどうだ? ……そんな事を言われたら」

 手塚は芝浦の腰を抱くと、彼が口にくわえたゴムを取り上げる。
 そして優しく口づけすると。

「すぐに、欲しくなる」

 耐えきれないといった表情で、甘く囁くものだから。

「えっ。あっ、俺……べ、別に。いいよ、すぐ、でも……えっちしてからでも……何なら、今日はずっとしてもいいからさ……」

 その色香にあてられて、ついそんな事を口走っていた。

「それなら……そうする、か?」

 手塚は再度確かめるようにキスをする。そのキスは熱く、甘く、とけるようなキスだったから。

「そう……してくれると、嬉しい……」

 芝浦はもう完全に、その空気に抱かれる。
 それはいかにも恥じらいなく、がっついて求めてしまうような気もしたが。

「……あぁ、俺も嬉しい。淳……愛してる」

 額を重ね優しく告げる手塚の全てが自分のものであるのだと思えば、それは悪くない気がした。

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