インターネット字書きマンの落書き帳
【お前が好きな景色を、俺も愛したいと思う。(手芝・みゆしば)】
平和な世界線で幸せなカップルとして過ごす手塚×芝浦という概念です。
(今日も1行で説明する強めの幻覚)
そろそろクリスマスなので、クリスマスっぽい話を……書いておこうねッ。
そう思ってクリスマスのイルミネーションを楽しむみゆみゆとしばじゅんちゃんを……書きましたッ!
冬だから暖かい話を書こうね!
そうだねッ!
……という幻覚を、見たんだ……!
(今日も1行で説明する強めの幻覚)
そろそろクリスマスなので、クリスマスっぽい話を……書いておこうねッ。
そう思ってクリスマスのイルミネーションを楽しむみゆみゆとしばじゅんちゃんを……書きましたッ!
冬だから暖かい話を書こうね!
そうだねッ!
……という幻覚を、見たんだ……!
「同じものを、好きでいたい」
久しぶりの外食を終え外に出れば、辺りはすっかり暗くなっていた。
(最近は日が落ちるのが早くなってきたからな……)
風は身を切るように冷たく、手塚はコートの襟元を寄せる。
その隣では芝浦もポケットに手を突っ込みながら小さく身体を震わせた。
「うわっ、外寒っ。12月にもなると、冬って感じするよね」
「あぁ、そうだな……」
空を見上げれば、都会でも星がやけに近く見える。夜とはいえネオンの輝きやビルの窓からもれる光が明るいこの街でも星が近くに見えるという事は、それだけ空気が澄んでいるという事だろう。
同時にそれはより寒く、風が冷たいという事にもなる。
(今日はバイクで来ている……移動は尚更に寒いだろうな。風を引かないように早めに帰るか……)
そう思う手塚より先に芝浦は走り出すと、何処に行くのか聞く前に先にある道を指さした。
「せっかくここまで来たんだからちょっと寄り道していこうぜ。あっちにさ、いーい場所があるんだ」
芝浦は手塚が止めるより先にそのまま走って進んで行く。
「おい……、待て芝浦。まったく……」
手塚はしぶしぶながら、そんな芝浦の後を追った。
まさか一人で放っておくワケにもいかないし、夜の街に芝浦を一人で置いておくと何故かよからぬ輩が寄ってくるというジンクスのようなものもあったからだ。
とはいえまだ目に入る距離にいるから大丈夫だろう。そう思い特に急ぐ事もなく芝浦の後を追いかければ。
「ほら、ここからでもいい景色だろッ」
そう言いながら階下を覗く芝浦の視線へと目を向ければ、そこは一面青と白のイルミネーションに彩られていた。
「あぁ、そうか……もうすぐクリスマスだったんだな」
1年の殆どを占いのため外で過ごしている手塚ではあったが、周囲の変化というのには驚く程無頓着だった。
人間だから当然、暑い・寒いといった季節感はあるが他の事にそこまで関心を抱かなかったから、流れてくる音楽がクリスマスソングに変わっているのも、夜だというのにやけにカップルが多く公園を歩いている事さえも気付いていなかった。
「毎年、このショッピングモールでは結構大がかりなイルミネーションをやるんだよね。最近は、青いLEDができたから、以前みたいに緑と赤のイルミネーションより、青と白がメインの色合いが増えたんだよね。俺は前のもクリスマスっぽくて好きだったけど……」
芝浦は饒舌に語りながら、イルミネーションへと向って歩き出す。
子供扱いされたくないとよく拗ねながら言うが、明らかにはしゃいで見せる姿はまだまだあどけなさが残る。
「そうか、この景色が好きなんだな……」
手塚は芝浦と並び、イルミネーションへと目を向ける。
冬空の下、青と白との彩りは少し寒々しく思えた。
「これがお前にとって美しい景色で……お前にとって、楽しいと思える風景か」
「な、何だよ……どうせガキっぽいって思ったんだろ」
「はは、お前はすぐそうやって拗ねるんだな。別にそんな事を思う……いや、全く思ってないと言われれば嘘になるだろうが……」
「やっぱり。どうせ俺はガキっぽいですよー」
「それでも、お前が素直に綺麗なものを綺麗だと喜び、楽しいと思う事を楽しいと思えるのは、お前の良い所だと思う」
手塚は僅かに目を閉じ、過去を振り返る。
思えば自分は楽しい時、嬉しい時、辛い時、泣きたい程に悲しい時、どうしていただろうか。
感情を表に出さず、ただじっと自分の思いに蓋をして堪え忍んでいたのは、どうしてだったろうか。
そうしている間にいつの間にか、何が楽しくて何が悲しいのかさえも酷く曖昧になってしまった気がするが。
「手塚は楽しくないのかよ?」
彼はそう聞きながら、手塚の顔をのぞき込む。
この光景が綺麗といえるのか自分では良くわからなかったが、今芝浦と共にある時間が楽しく暖かいというのは嘘偽りない気持ちだったから。
「……楽しい。そうだな、俺はお前が楽しそうにしている姿を見ると楽しいのだから……お前が綺麗だと思うものを、綺麗だと思う事にしよう。お前が好きな景色を、俺も好きになりたい」
「何だよその心を無くしたアンドロイドみたいな台詞……手塚は別にロボットじゃないだろ? 好きなものを好きになればいいじゃん。最も、俺が好きなものを好きになってくれる、ってのは結構嬉しいけどさ。何ていうのかな。手塚の世界の全部を俺が握ってるみたいで楽しいし」
自分の世界全てを、芝浦に握られている。
そう思うとくすぐったい気持ちにはなったが、悪い気はしなかった。
そもそも手塚は今、芝浦の運命殆どを自分が左右し、握っているような立場なのだ。
普段から束縛し、自分の手中になければ落ち着かない相手が何を見て、何を好んでいるのか。それを共有するのは悪くない。
「そうだな、俺も……悪くないと思う」
手塚は微かに笑うと、イルミネーションを再び見る。
どこか寒々しく見えた青と白との彩りも、今は明るく輝いて見える。
そう思うとどうだろう。
とたんに周囲が開けたように思えた。
賑やかなクリスマスソングが鳴り響き、自分たちと同じようイルミネーションを眺めて寄り添うカップルも多い。
「はは、やっぱいっぱいカップルがいるねぇ。クリスマスも近いから」
芝浦もそれに気付いたのだろう。笑いながら周囲を見る彼に手を伸ばすと。
「俺たちもつなぐか?」
そう、問いかける。
芝浦はしばらくその手を見つめていたが、すぐに照れたように笑って見せた。
「手塚ってそういうの嫌がると思ってたけど、結構積極的なんだ。もっと、恥ずかしがるかと思ってた」
「どうしてお前みたいな可愛い恋人を前にして、恥ずかしいと思わなければいけないんだ? ……だがお前が恥ずかしいというのなら止めておくが、どうする?」
「まってまって! 恥ずかしいワケないだろ。ホント、手塚ってさぁ……涼しい顔してカッコイイ事言えるんだもん。ズルイって……」
芝浦はそう言いながら、慌てて手塚と手を握る。
寄り添い歩きながら二人で見るイルミネーションは美しく、強く握った手は温もりに包まれていた。
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