インターネット字書きマンの落書き帳
【クリスマスに予定が入ったはなし(手芝・みゆしば)】
平和な世界線で恋人同士として平穏に暮す手塚×芝浦という概念です。
(今日も元気に1行で幻覚を説明)
クリスマス・イブなのでちったぁイブらしい話を書こうなッ!
と思って、イブらしい話を書きました。
クリスマスに二人で過ごしたかったのに、家の予定が入ってしまってガッカリするしばじゅんちゃんとそれを慰めるみゆみゆの話です。
はい、めりくりめりくり。(投げやり)
(今日も元気に1行で幻覚を説明)
クリスマス・イブなのでちったぁイブらしい話を書こうなッ!
と思って、イブらしい話を書きました。
クリスマスに二人で過ごしたかったのに、家の予定が入ってしまってガッカリするしばじゅんちゃんとそれを慰めるみゆみゆの話です。
はい、めりくりめりくり。(投げやり)
「今だけは家族思いで」
芝浦はソファーに身体を投げ出すと、全てが嫌になったといった風にぼやき始めた。
「あー、もう本当信じられないって。いつも俺に対して無関心なツラしてるくせにさぁ。クリスマスは家で過ごすから、久しぶりに家族で団らんしようとか言うんだよ? いまさらオヤジと話す事なんてないし。オヤジの前で良い子ぶりながら上品に飯を食うとか拷問なんですけど」
そしてクッションに顔を埋める。
その一部始終を眺めながら、手塚は芝浦の前に淹れ立てのハーブティを置いた。
「仕方ないだろう? お前の父親も久しぶりに家に戻るのだと言うし、ホームパーティをするために親しい家族を招待して、わざわざ料理人まで呼んでるというんなら主催の息子がいないワケにもいくまい」
ホームパーティやら料理人の話は、事前に芝浦からのメールで報された事である。
芝浦の家にいる使用人の話では、今月の初めにはもう手配が済んでいたらしいが芝浦が聞かされたのはパーティの直前……今日の朝食時だったという。
「事前に決まってた癖に直前に言うとか、完全にだまし討ちでしょ……クリスマスは手塚と一緒に過ごすつもりだったのにさ……」
クッションに顔を埋めたまま、芝浦はまだ文句を言う。
クリスマスは大学の友人たちとパーティをする予定だと事前に伝えておいたらしいが、芝浦の知り合いで『芝浦家で行うホームパーティ』が意味するものが『お偉方の交流会』だと受け取らないものはいないだろう。
当然、そのホームパーティを止めてクリスマスパーティに誘うような友人も、芝浦家のホームパーティに参加したがる輩もまずいない。
唯一、参加する可能性があるとしたら芝浦とは同い年で幼馴染みの佐野くらいだろうが。
「佐野は恋人とクリスマス過ごすってのにさぁ……」
どうやら今回、佐野はそのパーティに呼ばれていないらしい。
気心知れた佐野がいれば芝浦もきっとここまで文句は言ってなかったのだろう。その佐野が恋人と聖夜を過ごすというのだから余計に腹が立つのかもしれない。
「気にするな。遅れてパーティするのも悪くないだろう。ケーキでもチキンでも並ばずに買えるだろうしな」
「そうだろうけどさ、クリスマスが終ると世間って一気にお正月ムードになっちゃうだろ。クリスマスミュージックも一気にお正月っぽくなるし、イルミネーションの雰囲気も変わるしさぁ。恋人たちの夜って感じじゃなくなる気がするんだよね」
世間の風景が変わる様子にあまり頓着しない手塚はクリスマスの後の変化などそこまで気にした事はなかったが、芝浦がそう言うならきっとそうなのだろう。
「あ、そうだ。プレゼント先に渡しておくね。クリスマス当日は会えないと思うからさ」
芝浦はそう言うと起き上がり、バッグの中から紙袋に入ったままのプレゼントを手渡した。流行に疎い手塚でも名前を聞いた事のあるブランドの紙袋だ。
「あぁ、悪いな……高価なものじゃないのか?」
「別に? ほら、前に財布を新しいのにしたいって言ってただろ。その時カタログ見て、欲しいって言ってた奴だからハズレてはいないと思うよ。俺さ、他人を驚かせるのは嫌いじゃないけど、プレゼントにサプライズしない主義だから。今までサプライズでもらったプレゼントって大体趣味じゃなくて使わない事が多いからさ。冒険するより堅実主義なんだよ、これでもね」
そういえば、財布が古くなってきたと話した後に芝浦からカタログを幾つか見せられたのは覚えているが、あれは今日のための布石だったのか。
「お前は本当に気が回るな……開けてもいいか」
「あれ、今気付いた? 俺って結構お気遣いの紳士だけど? ……どうぞ、普段使いしてくれれば嬉しいんだけど」
開けてみれば、以前カタログを見た時に確かに欲しいと言った財布が入っている。
ブランドの品など縁が無いものだと思っていたがまさか本当に貰えるとは思っていなかったし、実際に手にとっても使い勝手がよさそうな良いものだ。
「……悪いな、ありがとう。使わせてもらう」
「いいのいいの。そうやってさー、誕生日とか、バレンタインとか。色々な記念日に手塚の身の回りの品物をプレゼントして、気付いたら手塚の使うもの全部俺のプレゼントしたものにするの、俺の野望だから」
さらりと恐ろしい事を宣言された気がするが、手塚はそれもいいかと思っていた。
芝浦の好みで身の回りを揃えるのも悪くないし、その対価として芝浦の身体を自分好みに育てられるのならむしろ安いくらいだ。
「それだったら、俺からもプレゼントを渡しておくか……お前と違ってセンスのある品でもなければ俺の趣味で選んだものだが……」
「あ、今はいいや。だってそれ、今受け取っちゃったらもうクリスマスが終っちゃったかんじするじゃん。ホームパーティを乗り切って、手塚と二人でゆっくり過ごせるようになった時に受け取りたいんだけど、ダメ? ……俺のご褒美って事で」
よほど家での集まりが嫌なのか。あるいはそれだけクリスマスに期待をしていたのだろう。
「お前がそう言うなら、渡すのは後にしておこう。だがそう、家の事を邪険にするな」
「そう言うけどさ、やっぱり面倒くさいって。放任主義かと思ったら利用したい時だけ急に過保護になるし……」
とはいえ、家に対してハッキリと断る事もできないのが今の芝浦が置かれている立場でもある。少なくとも大学を卒業するまでは波風立てず過ごしたいというのが本音なのだろう。
あるいは「恋人がいる」と告げていればクリスマスにスケジュールをねじ込むなんて野暮な事を芝浦の家でもしなかったのだろうが、それを知られれば『相手は誰なのか』『家柄はどうなのか』と、色々なしがらみが一気に押し寄せてくるのだ。
しかも手塚は性別を置いたとしても、自分の立場や環境があまりにも芝浦と違う事を自覚していたる。
色々と詮索された時に苦しい思いをするのが目に見えていたのだから、それをなるべく遅らせたいという気持ちは少なからず存在していた。
「だが、家族と過ごせるクリスマスは今だけだからな」
「えっ? ……何いってんだよ手塚」
「ん? ……お前だっていつまでも家にいるつもりはないだろう? ゆくゆくは俺と生活するんだ。そうなったらクリスマスを過ごすのは当然、俺になるだろう。俺が、お前の家族なんだからな」
だが、それでも手塚はいつか「そうなる」と信じていた。
いかなるしがらみがあっても、苦労があったとしても芝浦は必ず自分を選んで傍にいると思っていたし、自分もまた芝浦を誰かにくれてやるつもりもなかったからだ。
「えっ? えっ、今そういう事いう?」
「お前にそのつもりはなかったのか? ……俺はずっとそのつもりだが」
「いや、待って。俺もそのつもりだけど……待って今その話? えっ?」
「家族と過ごせるのはあと何年もないと思えば、大事な時間に思えるだろう」
芝浦は目に見えて分る程に顔を赤くすると、俯きながら頷いた。
「そうかもね。うん……そうだと思うと、ちょっとは頑張れるかな」
「あぁ、頑張ってこい。終ったら、俺の所に帰ってくるんだぞ」
「また、そういう事いう……わかってる、わかってるって……」
顔を赤くしたままハーブティに手を伸ばす芝浦の隣に座ると、手塚はその肩を静かに抱き寄せる。クリスマス・イブには二人でいられなかったとしても、今こうして二人で過ごせる事に喜びを静かに噛みしめながら。
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