インターネット字書きマンの落書き帳
公園で二人ご飯を食べるみゆしば(BL)
平和な世界線で普通につきあっている手塚×芝浦の日常を書く人です。(挨拶)
以前書いたネタで、他のSNSに載せてたりしたものを再掲しているキャンペーン中!
今回の話は、二人で公園で飯を食う。
ただそれだけでイチャイチャする話ですよ。
二人が平和な世界で出会っている設定なので、年代はだいたい2002~2003年頃の文化にしてありますが、時々認識がバグって時を超越します、許してニャン。
手塚×芝浦のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
以前書いたネタで、他のSNSに載せてたりしたものを再掲しているキャンペーン中!
今回の話は、二人で公園で飯を食う。
ただそれだけでイチャイチャする話ですよ。
二人が平和な世界で出会っている設定なので、年代はだいたい2002~2003年頃の文化にしてありますが、時々認識がバグって時を超越します、許してニャン。
手塚×芝浦のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
『遅くなった昼食』
手塚はいつもの公園で占いの看板を上げていた。
抜けるような空の青が眩しい心地よい日だったが、普段と比べて立ち止まる人は少ない。占いが必用とされないという事はそれだけ悩み苦しむ人がいないという事でそれはきっと喜ばしい事なのだろうが、商売をしている人間としては深刻だ。
「今日は思ったより人が入らなかったな……」
人の流れが耐えぬ都会の街でも、ある程度の流れは存在しその時々によってまるで潮が引くように人の姿が消える時間帯というのがある。ちょうど、今がその時だった。
『手塚、占いで喰っていけてんの? もし喰っていけないんだったら、将来は俺が養ってやろうか? 俺、大学卒業したら一人暮らしするから、その部屋で一緒に暮せばいいじゃん。そしたら占いで稼げなくても、俺が稼いでくるから。そのかわり、ぜーったいお前の事逃がさないからなー』
以前、芝浦がご機嫌な顔でそんな事を言われた事がある。元より芝浦から逃げるつもりもなければ芝浦に養ってもらうつもりもないのだが、将来的には芝浦に稼ぎが追い抜かれるのは覚悟しなければいけないだろう。せめて、ヒモ扱いされないようしっかり客をつかまえておかなくては。
掲げた占いの看板を畳むと手塚はゆっくり立ち上がる。人との対話を商売とする手塚にとって、会社員の休憩時間は稼ぎ時であり、人の流れが引くのは休憩時間が終る事だったのでいつも昼食は遅めにとるのだ。
さて、今開いてるのは喫茶店くらいだがどこかの店に入って軽めの昼食をとるか。それともコンビニにでも行ってサンドウィッチでも買おうか。あれこれ思案する手塚を、よく聞く声が呼び止めた。
「よぉ、手塚っ。これから昼食? やけにしょっぱい顔してるけど、今日はいつもより客入りが少なかったってことかなー?」
声の方を向けば、紙袋を片手に芝浦が立っている。
派手さのないシャツにチノパンというラフな姿から、大学帰りなのだろう。御曹司である芝浦は社会的なお披露目の場に立つ時はオーダーで仕立てた背広などを着るのだが、大学に通っている時は専ら量販店で扱うあまり値の張らない服を着ている。これは大学生という身分である芝浦があまりブランドものを身につけると周囲から浮いてしまうだろうという配慮だったのだが、財布や時計といった普段使いの小物はしっかりしたブランド品でそろえているため、わかる人間が見れば資産家である事は隠しきれないだろう。
芝浦にはそういう脇が甘い所がしばしば見受けられ、気を揉む事も多かった。最も手塚の場合は芝浦のそういった少し抜けた性格こそが可愛いところだと思ってしまうのだから仕方ないだろう。すべて惚れた欲目というものだ。
「何だ、冷やかしにきたのか? 今日はいったん店終いだ。昼を食べに行こうと思っていた所だからな……芝浦、お前も来るか?」
簡素な看板とテーブルを片付けながら、手塚はそう問いかける。昼飯には遅い時間だから芝浦はもう何か食べて来ているだろうが、喫茶店ならコーヒーでも飲みながら少し話しも出来るだろう。
「いやいや、別に冷やかしに来た訳じゃないって……ほら、いつもおまえ、昼飯遅いって言ってただろ。俺も今日はまだ食べてないから、一緒に何か食べようと思ってお昼ご飯もってきたんだよね。ほらこれ、良かったら食べて」
芝浦はそう言いながら手にした紙袋を手塚に押しつけた。中身はチェーン店だが美味しいと評判なパン屋のサンドウィッチだった。しかもその店に行く時は必ず注文する海老とアボガドをたっぷり入れたサンドウィッチが入っている。これを渡されたのなら、わざわざ断る理由もない。
「わかった、有り難く頂こう。そうだな、珈琲くらいおごろうか。持ち帰りのコーヒー屋がまだ開いてるだろうからな」
「マジで? 悪いねー。じゃ、コーヒーにミルクとガムシロ二つで! 俺、そこのベンチで待ってるから。あんまり待たせると先に食べちゃうからなー」
芝浦の言葉を背に受け、持ち帰りのコーヒーを買うとベンチにこしかけぼんやりと空を見て待つ芝浦の隣に座った。手塚はレモングラスのハーブティーをとり、ガムシロとミルクを入れたコーヒーを芝浦へと手渡す。
「さんきゅ! ……コーヒー嫌いじゃないけど、やっぱりガムシロとミルクがいっぱい入っていた方が美味しいと思うんだよね」
ブラックコーヒーを飲めないのを気にしているのか、コーヒーを飲む時芝浦はいつもそんな事を言ってガムシロとミルクを入れる言い訳をする。わざわざ言い訳などしなくとも、別にブラックコーヒーが苦手なことくらいで嫌いになる事もなればそれを茶化す真似をするつもりもないのだが、大人っぽくみられたい芝浦にとっては大事なことなんだろう。
「いいじゃないか、好きなものは好きなように楽しめば。俺はカフェインレスじゃないとコーヒーなんて飲まない」
「でも手塚はブラックでいけるんだろ」
「ただ好みの問題だろう。それに、俺は甘いコーヒーを飲むお前が好きだしな」
ハーブティを啜りながら何気なくそう言う手塚の言葉に、芝浦は少し俯いて見せる。
「手塚ってさぁ、普段あんまりそういう恥ずかしい事言わないのに、時々そんな事言うの何でも無いみたいにサラッと言うよね。そういうの何っての? ずるいっていうか……」
「どうした? 食べないのか」
「食べる、食べるって。食べますよー」
芝浦は慌てて紙袋に手を伸ばすと、サンドウィッチを取り出し食べ始めた。
この店はサンドウィッチに入れるトッピングを自由に選べるのだが、芝浦のトッピングはチーズとハム。それに卵だけで野菜は一切入ってない。
「相変わらず偏食がひどいなお前は。少しくらい野菜を入れたらどうだ」
「何いってんだよ、この店は野菜入れなくてもいいから行ってるようなもんなんだけど。それに、手塚が作ってくれた料理なら野菜も食べれるから問題ないんじゃない? 何ていうの、一日の栄養トータルバランスはオッケーって奴?」
「それにしても偏りすぎだろう、大体ハムとチーズかタマゴサンドだもんな」
「別にいいじゃんそんなのさぁ、俺の自由だろ。だいたい手塚だってうるさく言う割りに、ここの店で頼むメニューのトッピングいつもそれだよね。いつも同じモノ食べてるのも、栄養偏るんじゃないのかなー?」
芝浦は頬を膨らませながら手塚の食べるサンドウィッチを指さす。確か手塚はこの店にいくといつも同じトッピング……海老とアボガドにサニーレタスとオニオン、ドレッシングはサウザンアイランドと決まっていた。単純に味が好みだからついそのメニューばかり注文してしまうが、確かにこれも偏食だろう。
「そうだな、確かに俺も人のこと言えないか……それにしても、芝浦。お前、案外俺の事を見ているんだな。俺が頼んでるトッピング、一つも間違えず覚えているとは思わなかった」
「えっ? それは、その。まぁ……何いうの? えっと……ご、ごちそーさまっと」
芝浦は何かを言いかけたが最後まで語る事もなく、サンドウィッチを一気に頬張る。 そして、まだ食事中の手塚を横に携帯電話を取りだした。
「芝浦、何だそれは」
「あ、これ? 最近ハマってるゲームがあって、ちょこちょこ進めてるんだよね~。課金するだけじゃ強くなれないし、戦闘では毎回ちょっとした戦略が必用で結構面白いんだ。手塚もやってみる? レトロゲー好きな奴なら結構ハマると思うけど」
明るく笑い携帯電話を見せる芝浦の手を引くと、手塚はその身体を抱き寄せてぐっと顔を近づける。
「……俺と一緒の時は、俺を見ていろ」
そして自然と、そんな言葉が零れていた。
芝浦がゲームを好きなのは知っていたが。いや、知っていたからこそ、二人でいる時によそ見をされるとつい嫉妬してしまうのだ。
だがそんな風に迫られるのは、奔放な芝浦にとって面倒だったかもしれない。重たい男だと、束縛する奴だと思われるのは本意ではなかったから。
「すまん、へんな事を言ったな。俺を見ていてほしいが……好きにしろ」
慌ててそう取り繕うが、芝浦は暫く呆けた顔を向ける。やはり呆れられたかと内心不安になっていたが、すぐさま芝浦の耳は赤くなっていた。
「て、手塚さっきから何? 何なの? 普段あんまり俺の事気にしてないような顔してるくせに、時々ドキッとするようなこと、平気でするよね? そーいうの、ずるいから! ずるいやつだからそれ!」
慌てて鞄にスマホをしまうと、芝浦はじっと手塚を見る。俺を見ろなどと言ったから、言われた通りこちらを見ているのだろう。だが改まって見つめられると何だか照れくさい。それにあの言葉自体、自分の独占欲を露わにしたような気恥ずかしさもあり、手塚はつい視線をそらす。
「何だよ、お前が見ろっていった癖に」
「いや……その。今日はいい天気だからな」
そしてそんな当たり障りのない言葉で場を誤魔化そうとするのだった。
「それより、芝浦。大学の授業はいいのか?」
時刻は14時を回っている。昼には遅い時間帯だが、大学生がフラフラ歩いている時間帯でもないだろう。だが芝浦は甘いコーヒーを飲み余裕の笑みを浮かべた。
「それなんだけどさ、今の俺って授業の時間を間隔開けてとっちゃったから、ちょうどあと1時間くらい暇なんだよね。まぁ、1年の頃に主要な授業大体受けちゃったから少しだけ余裕が出来たってのもあるんだけどさ」
「そうなのか……つまり、この時間は暇を持て余しているという訳だな」
「学生はそんなに暇じゃありませんけどー……ま、でも時間を持て余してるのは事実なんだよねー。つまり、雨が降ってない時なら毎週こうして公園で手塚と一緒に飯が食えるって訳だ」
と、そこまで告げてから芝浦はとたんに慌てて見せる。
「あ、でも手塚が面倒だっていうなら俺だって普通に学食で飯にするけどさ。良かったらどうかなーって位の話しだし……どうかな?」
いつも生意気で身勝手で、気付いたら勝手にアレコレ決めて押しかけてくるくせに妙な所で恥ずかしがる事が芝浦にはある。だがその芝浦が時折見せる羞恥の表情がやけに初々しく、そんな一面を見せる彼の事が手塚は誰より愛おしいと思っていた。
「……わかった。店を出してる時はいつでも待っているから、気が向いたら来てくれ。くれぐれも無理はするなよ?」
「マジで? やったぁ!」
芝浦はうれしさからか、手塚の身体に抱きついてくる。食べかけのサンドウィッチを落としそうになりながら抱きついた芝浦の頭を撫でると。
「……お前だって酷くこっちをドキッとさせる天才だな」
微かに笑いながら芝浦の肩を抱き寄せる。
風が心地よく吹き付け、二人の遅い昼食は穏やかに過ぎていった。
手塚はいつもの公園で占いの看板を上げていた。
抜けるような空の青が眩しい心地よい日だったが、普段と比べて立ち止まる人は少ない。占いが必用とされないという事はそれだけ悩み苦しむ人がいないという事でそれはきっと喜ばしい事なのだろうが、商売をしている人間としては深刻だ。
「今日は思ったより人が入らなかったな……」
人の流れが耐えぬ都会の街でも、ある程度の流れは存在しその時々によってまるで潮が引くように人の姿が消える時間帯というのがある。ちょうど、今がその時だった。
『手塚、占いで喰っていけてんの? もし喰っていけないんだったら、将来は俺が養ってやろうか? 俺、大学卒業したら一人暮らしするから、その部屋で一緒に暮せばいいじゃん。そしたら占いで稼げなくても、俺が稼いでくるから。そのかわり、ぜーったいお前の事逃がさないからなー』
以前、芝浦がご機嫌な顔でそんな事を言われた事がある。元より芝浦から逃げるつもりもなければ芝浦に養ってもらうつもりもないのだが、将来的には芝浦に稼ぎが追い抜かれるのは覚悟しなければいけないだろう。せめて、ヒモ扱いされないようしっかり客をつかまえておかなくては。
掲げた占いの看板を畳むと手塚はゆっくり立ち上がる。人との対話を商売とする手塚にとって、会社員の休憩時間は稼ぎ時であり、人の流れが引くのは休憩時間が終る事だったのでいつも昼食は遅めにとるのだ。
さて、今開いてるのは喫茶店くらいだがどこかの店に入って軽めの昼食をとるか。それともコンビニにでも行ってサンドウィッチでも買おうか。あれこれ思案する手塚を、よく聞く声が呼び止めた。
「よぉ、手塚っ。これから昼食? やけにしょっぱい顔してるけど、今日はいつもより客入りが少なかったってことかなー?」
声の方を向けば、紙袋を片手に芝浦が立っている。
派手さのないシャツにチノパンというラフな姿から、大学帰りなのだろう。御曹司である芝浦は社会的なお披露目の場に立つ時はオーダーで仕立てた背広などを着るのだが、大学に通っている時は専ら量販店で扱うあまり値の張らない服を着ている。これは大学生という身分である芝浦があまりブランドものを身につけると周囲から浮いてしまうだろうという配慮だったのだが、財布や時計といった普段使いの小物はしっかりしたブランド品でそろえているため、わかる人間が見れば資産家である事は隠しきれないだろう。
芝浦にはそういう脇が甘い所がしばしば見受けられ、気を揉む事も多かった。最も手塚の場合は芝浦のそういった少し抜けた性格こそが可愛いところだと思ってしまうのだから仕方ないだろう。すべて惚れた欲目というものだ。
「何だ、冷やかしにきたのか? 今日はいったん店終いだ。昼を食べに行こうと思っていた所だからな……芝浦、お前も来るか?」
簡素な看板とテーブルを片付けながら、手塚はそう問いかける。昼飯には遅い時間だから芝浦はもう何か食べて来ているだろうが、喫茶店ならコーヒーでも飲みながら少し話しも出来るだろう。
「いやいや、別に冷やかしに来た訳じゃないって……ほら、いつもおまえ、昼飯遅いって言ってただろ。俺も今日はまだ食べてないから、一緒に何か食べようと思ってお昼ご飯もってきたんだよね。ほらこれ、良かったら食べて」
芝浦はそう言いながら手にした紙袋を手塚に押しつけた。中身はチェーン店だが美味しいと評判なパン屋のサンドウィッチだった。しかもその店に行く時は必ず注文する海老とアボガドをたっぷり入れたサンドウィッチが入っている。これを渡されたのなら、わざわざ断る理由もない。
「わかった、有り難く頂こう。そうだな、珈琲くらいおごろうか。持ち帰りのコーヒー屋がまだ開いてるだろうからな」
「マジで? 悪いねー。じゃ、コーヒーにミルクとガムシロ二つで! 俺、そこのベンチで待ってるから。あんまり待たせると先に食べちゃうからなー」
芝浦の言葉を背に受け、持ち帰りのコーヒーを買うとベンチにこしかけぼんやりと空を見て待つ芝浦の隣に座った。手塚はレモングラスのハーブティーをとり、ガムシロとミルクを入れたコーヒーを芝浦へと手渡す。
「さんきゅ! ……コーヒー嫌いじゃないけど、やっぱりガムシロとミルクがいっぱい入っていた方が美味しいと思うんだよね」
ブラックコーヒーを飲めないのを気にしているのか、コーヒーを飲む時芝浦はいつもそんな事を言ってガムシロとミルクを入れる言い訳をする。わざわざ言い訳などしなくとも、別にブラックコーヒーが苦手なことくらいで嫌いになる事もなればそれを茶化す真似をするつもりもないのだが、大人っぽくみられたい芝浦にとっては大事なことなんだろう。
「いいじゃないか、好きなものは好きなように楽しめば。俺はカフェインレスじゃないとコーヒーなんて飲まない」
「でも手塚はブラックでいけるんだろ」
「ただ好みの問題だろう。それに、俺は甘いコーヒーを飲むお前が好きだしな」
ハーブティを啜りながら何気なくそう言う手塚の言葉に、芝浦は少し俯いて見せる。
「手塚ってさぁ、普段あんまりそういう恥ずかしい事言わないのに、時々そんな事言うの何でも無いみたいにサラッと言うよね。そういうの何っての? ずるいっていうか……」
「どうした? 食べないのか」
「食べる、食べるって。食べますよー」
芝浦は慌てて紙袋に手を伸ばすと、サンドウィッチを取り出し食べ始めた。
この店はサンドウィッチに入れるトッピングを自由に選べるのだが、芝浦のトッピングはチーズとハム。それに卵だけで野菜は一切入ってない。
「相変わらず偏食がひどいなお前は。少しくらい野菜を入れたらどうだ」
「何いってんだよ、この店は野菜入れなくてもいいから行ってるようなもんなんだけど。それに、手塚が作ってくれた料理なら野菜も食べれるから問題ないんじゃない? 何ていうの、一日の栄養トータルバランスはオッケーって奴?」
「それにしても偏りすぎだろう、大体ハムとチーズかタマゴサンドだもんな」
「別にいいじゃんそんなのさぁ、俺の自由だろ。だいたい手塚だってうるさく言う割りに、ここの店で頼むメニューのトッピングいつもそれだよね。いつも同じモノ食べてるのも、栄養偏るんじゃないのかなー?」
芝浦は頬を膨らませながら手塚の食べるサンドウィッチを指さす。確か手塚はこの店にいくといつも同じトッピング……海老とアボガドにサニーレタスとオニオン、ドレッシングはサウザンアイランドと決まっていた。単純に味が好みだからついそのメニューばかり注文してしまうが、確かにこれも偏食だろう。
「そうだな、確かに俺も人のこと言えないか……それにしても、芝浦。お前、案外俺の事を見ているんだな。俺が頼んでるトッピング、一つも間違えず覚えているとは思わなかった」
「えっ? それは、その。まぁ……何いうの? えっと……ご、ごちそーさまっと」
芝浦は何かを言いかけたが最後まで語る事もなく、サンドウィッチを一気に頬張る。 そして、まだ食事中の手塚を横に携帯電話を取りだした。
「芝浦、何だそれは」
「あ、これ? 最近ハマってるゲームがあって、ちょこちょこ進めてるんだよね~。課金するだけじゃ強くなれないし、戦闘では毎回ちょっとした戦略が必用で結構面白いんだ。手塚もやってみる? レトロゲー好きな奴なら結構ハマると思うけど」
明るく笑い携帯電話を見せる芝浦の手を引くと、手塚はその身体を抱き寄せてぐっと顔を近づける。
「……俺と一緒の時は、俺を見ていろ」
そして自然と、そんな言葉が零れていた。
芝浦がゲームを好きなのは知っていたが。いや、知っていたからこそ、二人でいる時によそ見をされるとつい嫉妬してしまうのだ。
だがそんな風に迫られるのは、奔放な芝浦にとって面倒だったかもしれない。重たい男だと、束縛する奴だと思われるのは本意ではなかったから。
「すまん、へんな事を言ったな。俺を見ていてほしいが……好きにしろ」
慌ててそう取り繕うが、芝浦は暫く呆けた顔を向ける。やはり呆れられたかと内心不安になっていたが、すぐさま芝浦の耳は赤くなっていた。
「て、手塚さっきから何? 何なの? 普段あんまり俺の事気にしてないような顔してるくせに、時々ドキッとするようなこと、平気でするよね? そーいうの、ずるいから! ずるいやつだからそれ!」
慌てて鞄にスマホをしまうと、芝浦はじっと手塚を見る。俺を見ろなどと言ったから、言われた通りこちらを見ているのだろう。だが改まって見つめられると何だか照れくさい。それにあの言葉自体、自分の独占欲を露わにしたような気恥ずかしさもあり、手塚はつい視線をそらす。
「何だよ、お前が見ろっていった癖に」
「いや……その。今日はいい天気だからな」
そしてそんな当たり障りのない言葉で場を誤魔化そうとするのだった。
「それより、芝浦。大学の授業はいいのか?」
時刻は14時を回っている。昼には遅い時間帯だが、大学生がフラフラ歩いている時間帯でもないだろう。だが芝浦は甘いコーヒーを飲み余裕の笑みを浮かべた。
「それなんだけどさ、今の俺って授業の時間を間隔開けてとっちゃったから、ちょうどあと1時間くらい暇なんだよね。まぁ、1年の頃に主要な授業大体受けちゃったから少しだけ余裕が出来たってのもあるんだけどさ」
「そうなのか……つまり、この時間は暇を持て余しているという訳だな」
「学生はそんなに暇じゃありませんけどー……ま、でも時間を持て余してるのは事実なんだよねー。つまり、雨が降ってない時なら毎週こうして公園で手塚と一緒に飯が食えるって訳だ」
と、そこまで告げてから芝浦はとたんに慌てて見せる。
「あ、でも手塚が面倒だっていうなら俺だって普通に学食で飯にするけどさ。良かったらどうかなーって位の話しだし……どうかな?」
いつも生意気で身勝手で、気付いたら勝手にアレコレ決めて押しかけてくるくせに妙な所で恥ずかしがる事が芝浦にはある。だがその芝浦が時折見せる羞恥の表情がやけに初々しく、そんな一面を見せる彼の事が手塚は誰より愛おしいと思っていた。
「……わかった。店を出してる時はいつでも待っているから、気が向いたら来てくれ。くれぐれも無理はするなよ?」
「マジで? やったぁ!」
芝浦はうれしさからか、手塚の身体に抱きついてくる。食べかけのサンドウィッチを落としそうになりながら抱きついた芝浦の頭を撫でると。
「……お前だって酷くこっちをドキッとさせる天才だな」
微かに笑いながら芝浦の肩を抱き寄せる。
風が心地よく吹き付け、二人の遅い昼食は穏やかに過ぎていった。
PR
COMMENT