インターネット字書きマンの落書き帳
何をいわれてもお前だけは愛さない(手芝・みゆしば)
平和な世界線で付き合っている手塚と芝浦です。
(1行でご理解頂きたい幻覚)
今回は、学生時代(といっても芝浦くんはまだ学生なんですが)に爛れた性生活をおくっていた中、とんでもないハズレ男を引っかけていたせいで酷い目にあってしまう芝浦くんのハナシですよ。
過去の男に酷い事をされる受け。
という概念が好きすぎるな……!
手芝を知らない人はもう『かつて男をつまみ食いしてた遊び人だけど、今つきあってるスパダリに夢中な可愛い男の子(大学生)が誘拐されるハナシ』というコンテンツでお楽しみ下さい!
ムチャクチャ言い出したよ!
(1行でご理解頂きたい幻覚)
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過去の男に酷い事をされる受け。
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ムチャクチャ言い出したよ!
「彼の瞳には一人しか映らない」
身体全体に疼くような痛みを感じ芝浦が目を覚ましたのは、知らない車の中だった。
起きようとすれば身体は鈍く痛み、同時に自由に動けないのに気付く。
手足がバンドのようなものできつく縛られているのだ。
(何だよこれ……どうして……? 最近は油断しないよう気をつけてたつもりなんだけどな……)
芝浦は親からも恋人である手塚からも「脇が甘い」とよく言われていた。
自分の容姿に自信がある割りに周囲から性的に見られているという自覚が足りないのだそうだ。
その結果、抵抗できない程に酒を飲まされたり薬を飲まされたりして無理矢理連れ込まれそうになった経験が何度かある。
怒られながらも手塚やおかしいと思った友人が助けてくれていたので大事には至らなかったが後で散々と注意されたのもあって気をつけていたつもりだった。
酒も食事も顔見知り程度の相手とするのは避けていたし、カラオケやゲーセンのような場所も最近は恋人か親しい友人としか行ってなかった。
一人で行動しないよう気をつけてはいたはずだが……。
「痛っぅ……」
身体全体が軋むように痛む感覚で、芝浦は意識を失う前の出来事をぼんやりと思い出していた。
夜道に一人で帰っている途中、やけにゆっくりと車が迫ってきているとは思っていた。自分が歩道を進んでいるから避けづらいのだろうかと思い道の端に寄ったが、車もこちらへと幅寄せしてくる。
危ないな、と思うのと同時に車は加速し芝浦をはね飛ばしたのだ。
事故だと思ったのはアスファルトに身体を打ち据えられた後だった。冷たい路上で痛みを覚えながら手探りで鞄を探したのはすぐに救急車を呼ばないといけないと思ったからだが、投げ出された荷物は思ったより遠くにあり手を伸ばしても届きそうにない。
自動車のドアが開き誰かが傍によってきた時、運転手が自分を轢いた事に気付いたのだろうと思った。きっとこれから救急車を呼び、事故だから警察も呼ぶんだろうと思いながらそのまま意識を失ったのだ。
だが今いる場所が車内であり病院でもなければ警察も来てないのを見ると、元々相手は意識して芝浦を轢いたのだろうと思う。
手足を縛っているのを見ると病院につれていく気もなさそうだ。
どうしたものかと考えるより先に運転席の男は振り返った。
「……やっと起きたか? 久しぶりだな。2年……いや、3年ぶりか」
見た事がある気がしたが、覚えのない男だった。
歳の頃ならもう30は過ぎているだろうか。それだけ芝浦と歳が離れている相手はおおむね父の取引相手が一番多いのだが父の関係者だったら顔も名前も憶えているし、何より芝浦をこんな犯罪めいた方法で誘拐するリスクは負わないはずだ。
だとすると芝浦が、過去に付き合った男の誰かだろう。
付き合ったといっても手塚と会う以前は芝浦は特定の相手と恋愛関係になる事はなかった。
顔と金払いのいい年上男を誑かして抱かれていた頃があるからそういった性処理相手の一人だろう。
2、3年前ならその頃とも合致する。
考えているうちに男はシートを倒すと芝浦へ顔を近づけた。
幾分かやつれて見えるが好みの顔と身体をしているな、と芝浦はぼんやり考えていた。
「覚えてるか芝浦? 最後に会ったのが3年前……お前が卒業する時に頼んだよな。俺と付き合って欲しいって。金とか関係なく、お前の事が好きだって……」
そう言われ、昔の記憶が蘇る。
学校が終った後、自分の家まで送ってくれる相手……という名目で会っていた男が何人かいたがそのうちの一人だろう。
抱かせる時に金を払わせていたのは小遣い稼ぎというよりあくまで「この関係はビジネスであり取引にすぎない」と相手に分らせるためであり殆どの男がそれを理解していたが、何人かは本気で芝浦に入れ込んで恋人関係になりたいと頼むヤツがいた。
(いや、フツーに考えて未成年に手ぇ出す男とか無理でしょ……俺より年上の癖にまだガキだった俺と金払ってでもセックスしたいってだけでも充分オカシイのに、その上で付き合いたいとか倫理観なさ過ぎるでしょ……)
その頃の芝浦は特定の誰かに縛られるのは嫌だったのと、まだ学生だった自分を金で買うような相手を信頼する事など到底出来ないという二つの理由からどんなに真面目な告白も相手にはしなかったのだが。
「俺は諦めてないぞ……あれからお前以上の相手なんていなかったからな。どうだ……俺と付き合う気はないか?」
切々と語る声は低く心地よいが、言ってる事は反吐が出る程おかしいと思いながら芝浦はその言葉を聞いていた。
「ははッ……それ本気で言ってんの? あのさぁ……手足縛って抵抗できない状態にして一方的に迫る男とか、普通に考えて無理だから」
渇いた笑いが漏れる。
「付き合えないのか? 自由でいたいから? 誰かに縛られるのが嫌だから……以前お前はそう言っていたな。誰かのものになるのは面倒くさいから誰のものにもなるつもりはない、と……だけどお前、いまは恋人がいるだろう? あんな事を言って俺を袖にしたくせに……どうしてだ? どうしてアイツが良くて、俺じゃダメだったんだ」
だが男はなおも食い下がってきた。
あの頃付き合っていた男なら自分より一回りは年上だろう。幾分かは更けて見えるが、顔と身体と声は相変わらず好きなタイプだと、芝浦はさして意味のない事を考えていた。
「何がダメかぁ……」
未成年だった自分と金を払ってでもセックスしたかった倫理観がゼロな所。
金を払うから繋がっていた関係だったのに本気で入れ込んでしまう愚かな所。
躊躇なく車ではね飛ばした相手に愛してると宣う所。
手足の自由もきかない状態、誘拐同然で車に連れ込んでるくせに告白できる厚顔無恥な所。
フられた癖にまだ諦めてなかった所。
今、恋人がいるのを知っている癖に付き合えと迫ってくる所。
ダメな所などあげたらキリがない。
顔と身体と声。この三つが好みであり、なおかつ金を払うのなら生活やセックスの上手い下手は関係なく相手をしていたが、こんなハズレを引っかけていたとは。まだ子供だったとはいえ見る目がないと内心密かに自嘲した。
「いっぱいあるけどさ、アンタが手塚じゃないからってのがやっぱ一番かな? 俺さ、手塚には何でもしてあげたいと思うし、何されてもいいんだけど……アンタに無理矢理縛られて、こんな酷い怪我までさせられて、それなのに口説かれてる今の状態。全ッ然面白くないから」
はっきりとそうこたえる芝浦を前に、男はどこか諦めたような顔をする。
この状態で口説いてくるような異常者だが流石に最初から受け入れられると思ってはいなかったのだろう。
その代りとでも言いたげに男の手が芝浦の肌に触れる。
「……だろうな。お前が元より俺を好きになるとは思ってないさ。こんな真似もしでかしてるしな。だが……最後くらいはいいだろう?」
綺麗な顔の男は静かに笑う。穏やかな笑顔はこの異常時では狂気に満ちていた。
殺すつもりでいるのだろうか。そう考えていてもおかしくはない状態だが。
「ははッ、最後か。いいかもね、それ……俺さ、毎日が最高に幸せなんだよね。愛されているって感じるし、俺も愛してるって思う。でもさ、俺の場合……結局好きになれるのって男だけだからってのもあるのかなー。いつか、その幸せが終るんじゃないか……お互いの気持ちが離れて……ってさ。そう思う日もあって、それ考えるのも辛いんだ。だからさぁ……幸せの絶頂で、手塚の事好きなまま死ねるんなら、ま、オッケーかな」
芝浦は饒舌に語ると、自ら上を向き首を晒した。
「で、どうする? 首締める? 刺し殺す? ……見ての通り抵抗できないし、するつもりもないから。なるべくひとおもいにやってほしいかなー。俺さ、痛いのも苦しいのもあんまり好きじゃないからね」
男は芝浦へ馬乗りにはなったが、首に触れるのは躊躇っていたようだった。
狂っていても実際その手で人を殺すとなると怯えたのか。あるいはあまりに芝浦がいつものまま笑っているから拍子抜けでもしたのかもしれない。
「いいのか、本当に? おまえは……」
「いいよ? ……最愛の男にあえて、その男に嫌われないまま死ねるのって、結構幸せな事じゃない? ……お前の名前は憶えてないけど、俺はずっと手塚の名前を憶えているままで死ねて、手塚といい思い出だけ残して死ねて……たぶん手塚も俺を忘れないでいてくれる。それって愛の理想って感じじゃん」
生への執着より遙かに手塚への執着が強い芝浦を見て、男は気が変わったのかその肌に指を滑らせた。
芝浦にとって死が恐れるものではない限り、その命を摘み取るより身体を犯した法がプライドが折れるとでも思ったか。元々殺す前に身体を試しておくつもりだったのかもしれない。
「んー……先にえっちするの? 別にいいけど……俺さ、気持ち良くなると手塚の名前呼んじゃうと思うけど、それに腹立てたりしないでくれる? ……俺、アンタの顔も名前も曖昧だけどその身体は結構好きだから、一応イけるとは思うんだよ。でも……呼ぶのは絶対手塚の名前になっちゃってるから」
そう言って笑う芝浦を見て、男は暫く黙っていた。
唇を噛みしめ、拳に血が滲むほど強く握りしめている。
そのまま暫く男は芝浦を見据えた後、車から投げ捨てるように芝浦を降ろした。
何処だかわからない山道だ。
手足を結んでいたバンドのようなものはとかれたが、長く縛られていた手足ではすぐ立って歩く事も出来ず傍にある木へともたれかかる。
「……本当に愛しいが、胸くそ悪い男だよ。お前は」
男は吐き捨てるように告げると、そのまま車で走り去った。
車が進む方向が、きっと街への道なのだろう。
生きている。いや、殺され損なったと言うべきだろうか。
投げ捨てられた荷物を確認すれば、携帯電話は画面が割れているが圏外ではないようだ。
山奥に見えるが思ったより都心に近いのかもしれない。実際、都内でも一見すると山深い所というのは結構あるものだ。
先に救急車か。事件に巻き込まれたのだから警察も呼ばなければいけない。
色々やるべき事はあっただろうし携帯電話の充電もどれだけ残っているかわからなかったが。
「……あぁ、手塚? 俺だけどさ」
最初に電話をしたのは、手塚の元だった。
助けて欲しい等と語るつもりはない。今の所命に別状はないが身体は酷く痛むから何処か怪我をしているかもしれないし、それが命に関わる可能性もある。
だからこそ、手塚の声を聞きたいと思ったからだ。
「んー、特に大事な用ってのじゃないんだけどさ。俺、やっぱアンタの事最高に好きだなって。改めてそう思って……へへー……海之、愛してるよ、なーんて言い方、俺らしくないかな」
電話越しに聞く手塚は表情こそ見えなかったが、その声はどこか恥ずかしそうに聞こえる。
手塚にはよく「好きだ」とは言ってるが「愛している」なんて言い方は滅多にしないから珍しいとも思ったのかもしれない。
だが滅多に伝えないからこそ、言っておきたいと思ったのだ。
土壇場になっても心の底から愛している。
その男に愛と感謝の言葉だけでも。
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