インターネット字書きマンの落書き帳
理想の死(漆黒後日談)(ヒカセンはひろしです)
漆黒、5.5全部終わってるぞーーーーーーー!
ウェルリトも何もかんもやってるぞーーーーーーー!
という人向けの話です。
誰の話か、という時点でネタバレになっちまうので一応、文字色反転で書きますが。
ガイウス閣下が苦渋を抱きながらそれでも無様に生き続ける。
そんな話です。
ヒカセンはひろしをイメージしてます。
ガイウス閣下……辛い男だ…。
ウェルリトも何もかんもやってるぞーーーーーーー!
という人向けの話です。
誰の話か、という時点でネタバレになっちまうので一応、文字色反転で書きますが。
ガイウス閣下が苦渋を抱きながらそれでも無様に生き続ける。
そんな話です。
ヒカセンはひろしをイメージしてます。
ガイウス閣下……辛い男だ…。
「いずれ野末の石の下」
戦争というのは、国と国との外交が失敗した時におこるものだ。
つまるところ、人民規模の喧嘩を大きくしたものである。
ガレマール帝国がエオルゼア諸国に戦争を仕掛けてきたのは、エオルゼアの操る「蛮神」という異形の神々や魔法技術といった存在への憎悪・恐れ・偏見からだろう。
もちろん、それは表面になっている建前の一つであり事実としてガレマール帝国は北方の貧しい土地であるということ。国民全てを飢えさせず生活するには豊かな実りある土地が必要であるということ。魔法を扱えないガレマールの民……ガレアン人は魔法に変わる技術として、古代アラグ文明で扱われていた「魔導技術」を主たる兵器として扱っている。
その魔導技術で扱う燃料も今のガレマールではほとんど枯渇しており、魔法を扱えるが故に魔導技術の発展が二の次になりがちなエオルゼアを支配しエネルギーの安定を担いたいという目的もあっただろう。
エオルゼア諸国とガレマール帝国。
二つはお互い譲る事もなく、ついにガレマール帝国はエオルゼア諸国へ侵攻するに至る……。
国と国との都合というのはいつでもそう、お互いの思想がかみ合わないという事と、相手が責めるに利のある土地をもっているというのが主たる理由である場合が多い。
だがそれはあくまで国の都合だ。
実際に戦争で戦い戦場に立つのは常に「人」であり、無理矢理徴兵されたにせよ自ら出願したにせよ戦場に立つ「人」には何かしら「人」を殺す大義名分が必要なものだ。
中には「人を殺してみたい」なんて理由で志願するモノもいるだろうが、そういう輩は功績をあげる事はない。
法治国家の市中で安寧と暮らしているならまだしも、戦場では「人を殺してみたい」なんて願いは軽率に叶ってしまうのだから。
目的を早々に失ってしまった兵士が立ち続けるには、戦場はあまりに過酷であり残酷であった。
では、ガレマール帝国でエオルゼアの侵攻を指揮していたガイウスという男はどうだろう。
彼は「強きもの」が正しい指針をもち「弱く惑うものたち」を正しく指揮し、庇護すれば世の中の辛さや苦しさは少しでも失われると、そう信じていた。
彼にその思想を与えたのがガレマール帝国なのか。あるいは彼の出会った人々や恩師、恩人なのか。彼が学びを得るうちに自然についた考えなのかはわからない。
だがガイウスはその理想に邁進し、自分の思う通りの世界を実現するために戦った。
自らおこした戦争で生まれた孤児たちを率先して引き取り飢えや寒さから逃れさせたのも彼が自らを強き者と置き、弱きものを守ろうという理想からだろう。
ガイウスは、帝国の理念はそのようなものであると心の底から信じていた。
だからその身を帝国のために捧げ、弱くも清きものたちを救いたい一心でエオルゼアの侵攻を続けていたのである。
結果としてはかなわなかったが。
ガイウスの失態は、帝国の参謀として認識していた「アシエン」と名乗るものが元より「世界の破壊」をもくろむ、決して「弱き民のためにある存在ではなかった」という事すら知らされていなかったということ。
そして、エオルゼアに現れた「光の戦士」という存在がただひたすらに強かったという事だろう。
敗退した後、ガイウスは知る事となった。
アシエンは世界を破滅させるための存在であり、アシエンにとって人などすべて盤上の駒。それもいつ切って捨ててもいい「捨て駒」に過ぎないということ。
そして帝国も一枚岩ではなく、ガイウスのように弱きを助け属州のものであっても分け隔て無く実力で評価する、というのはほんの一部の指揮官だけが行っている政策であったということ。
実際の帝国幹部には属州のものを虐げ暴君のように振る舞う輩が少なからずおり、それはガイウスの掲げる理想と大きく異なっているという事……。
矮小な支配欲を満たすため属州の民を気まぐれに殺すような輩がこれだけはびこっている事にすら気づかなかったのは、ガイウスが「意図的に」同じような思想のもの……属州でも差別せず実力があれば登用し、弱いものを守れるような国作りを目指す者とばかり接していたからであろう。
皇帝であるヴァリスが失われる事で自らを「高貴な血統」と言い張るものたちが策謀を巡らせるのが露わになり、またガイウス自身が帝国から離れた位置で客観的にその侵略行為を見るようになった事で彼ははっきりと理解したのだ。
自分に与えられてた理想や大義名分は、全てまやかしであったのだということを。
それに気づいた時、すぐに自ら歩んできた道を振り返りそして絶望した。
あまりにも多くの民を。それも彼自身が「守りたい」と思っていた弱者の命を蹂躙し駆逐して
いったのは紛れもなく自分自身だったからだ。
死を渇望したのもまた、言うまでもないことだろう。
理想に敗れ絶望を突きつけられた時、それでも生きていようと思えるほど大抵の人間は強くないのだから。
それでもガイウスが死なずにいた理由はいくつかあるが、特に強くあったのは二つ。
自分が屠ってきた命はあまりにも大きく重く、自分一人が命を絶つ事ではとても償いにならないということが一つ。
そしてあの激戦でエオルゼアの英雄を前に生き残った事に、何ら意味がある気がしたという事がもう一つである。
考えた挙げ句、ガイウスは「アシエン」という存在を。現存しているこの世界のアシエンを屠るという事を決め活動を開始し、少なくない賛同者とともに帝国と袂を分かつ。
ガイウスの元に集まった者の多くは帝国の支配や侵略により故郷を、家族を、愛するものを失った者であり、今でも少なからずガイウスに対して憎しみを募らせる者や隙あらば寝首をかくつもりでいる者がいるのもわかっていた。
そんな中でアシエンを狩るのを続けていた。
それが贖罪になるとは思わなかったが、ガイウス自身が血反吐をまき散らすほど苦しみ、悩み抜く背中は少なからず彼の侵攻を受けた民からすれば幾分か溜飲が下がっただろう。
そうしているうちに、アシエン狩りを名目に帝国へ反旗を翻す反逆軍(レジスタンス)として彼らは認識されるようにもなり、帝国憎しといった者たちも傘下に加わるようになった。
エオルゼアの英雄、光の戦士と出会ったのもちょうどその位だったろう。
エオルゼアのために戦いガイウスとアルテマウエポンを破壊しつくした「力の権化」のような存在は、イシュガルドで竜詩戦争に決着をつけさらにアラミゴを解放したとも聞く。
光の戦士、その内にある「大義名分」はわからない。
だがエオルゼアの英雄が強くそして迷いなく歩み続ける存在である事。絶望を前にしても立ち止まる事がなく、苦しい時も諦める事なくただひたすらに進んでいたその姿は一直線に進む光の矢のように見えた。
光の戦士は怪物だろうが、だが化け物ではない。
刃を交えたガイウスはそれをよく知っていた。
以前よりずっと強くはなったが、まだ惑い、迷い、葛藤し、渇望し、無力さを前に泣き、救えなかった命を嘆く。そんな湿っぽさもある、実に人間臭い人間だ。
ウェルリトを越えた時、かの戦士は言った。
「死ぬ気じゃないよな、ガイウス」
あの時、ガイウスは己の至らなさに苦しみ、声にもならぬ思いが身体の中を駆け巡り死んでしまえばどれだけ楽だったか。
あるいは、自分が死んで身代わりになってやれればどれだけ良かったか。若いものが命を散らし、老いぼれが生き残るなど自分がもっとも唾棄していた「力があるものの蹂躙」にすぎないのではないかと。
死にたい程の絶望を前に、光の戦士は言うのだ。
「今のあんたにとって、死はただの逃げだ。その双眸で現実を見据え、踏みにじられた尊厳を飲み下し、一人の力では何ら成す事もできない至らなさを呪い、前身が張り裂けそうな後悔に苛まれて生きる。それが、あんたの言う『力あるものの役目』だろう」
過去に自分の語った言葉が、鉛のようにのしかかる。
だがそうだ、その通りだ。
自分は老いぼれだが使える力はある。そしてその後ろにはまだ守れる命がある。そう思わなければやっていけなかったろうし、その言葉はガイウスに前えを向く力を取り戻させるには充分だった。
「死ぬものか。まだ、やるべき事が山ほど残っているからな」
「あぁ、そうだ。やるべき事は山ほどある」
秩序を失った帝国。世界の終わりを告げるように鳴り響く異形の塔。不気味に羽ばたくかりそめの竜。
戦火は未だ燻り、帝国の支配下にあった諸国の反乱軍が集い戦況を変えていく。
「俺たちは、子供が安心して街角を走り回り、道ばたで飢え死にや凍え死んだ骸をまたいで歩く事もなく、日々爆音を恐れ屋根に穴のあいたレンガ造りの家で小さくなっておびえくらす人々を何でもない、普通の生活に戻すのが仕事だ。それだけの力があり、それだけの役目がある。少なくとも、おまえはそう言っていただろう」
「あぁ、そうだ……」
今思えば何と青臭い願いだろうとは思う。
支配する立場であり奪われた事のないある種の高台から見た絵空事だったと、谷底に落ちた今はわかる。
だがそのかつての目標に今苦しめられながらも鼓舞されている。
「我はまだ死なん。そうだな……平和な世界で子供たちが遊び歩く姿を眺め、椅子に座って休んでいる所……我に愛するものを奪われた誰かが刺し殺しでもしてくれれば、それが理想の死に方だろうな」
ガイウスは少し自嘲気味に笑う。
その姿を見て、光の戦士もまた笑った。
「俺もそうやって死にてぇな。あぁ、俺はそういう死に方でいい」
彼もまた、正義を行使するために多くの罪を背負っているのだろう。
「ならばいずれその時まで」
「まだ死なないでおかなければな」
二人は並んで歩き出す。
歩む理想も未来もきっと彼らは違うのだろう。
だがいつか、同じような死に方をしたいと。
そんな事を思いながら。
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